初リリースのCDは
支えてきてくれた人々への“感謝の気持ち”

福井晶一ファースト・ソロ・アルバム『Blessings-いつもそばに-』2017年3月1日キングレコードより発売

福井晶一ファースト・ソロ・アルバム『Blessings-いつもそばに-』2017年3月1日キングレコードより発売

――今回、福井さんにとっては初のCDが発売となりました。まずはコンセプトから教えていただけますか?

「劇団四季を退団したときから、“CDを作ってください”という声をいただいていましたが、今年の4月で俳優デビュー20周年となるのを機に、これまで応援していただいた方に感謝の気持ちを込めて、形に残るものをお届けしたいと思ったのです。選曲は、自分が好きな曲というよりはまずはお客様目線で、これまで演じてきた役のナンバー、ライブでリクエストが多かった曲を中心にしています。加えて、“福井さんだったらこういう曲もいかがですか?”とご提案いただいた“So in love”(『キス・ミー・ケイト』)を入れたりもしています」

――過去に演じた役のナンバーの場合、以前とは違う歌唱を意識されたりもしていますか?

「持ち役に関しては、それほど変化していないですね。歌い始めるとどうしても役が降ってくるというか。逆に、これまでにやってない作品のナンバーの方が大変でした。どう歌おう、と一から作りましたから。

もし聞いていただいて、以前と異なるものを感じていただいたとすれば、それは録音の環境によるのかもしれないですね。ライブの時には気心が知れていたり、ミュージカルに慣れていらっしゃって僕が歌いやすい方が演奏して下さるのだけど、今回はふだん、ミュージカルをやっていない方々ばかりで、ご一緒するのは全員、初めて。それも最近はなかなか無い”同時録音“が7~8割という贅沢な状況で、お互いにその場で感じて、響き合いながら作ることができました。とても気持ちよく歌わせていただけたので、その空気感がCDにもあらわれているのではないかな。もちろん何回も録りましたけど、結局1回目のテイクが新鮮で、緊張感もあっていいんじゃないという声もあったりして、そういうものなのか、と思いましたね」

――歌う中で、改めて発見したことなどありますか?

「濱ちゃん(濱田めぐみさん)と『アイーダ』の「迷いつつ」を録ったのですが、お互い、本番の頃は力んでたなと気づきましたね。物語の中の一曲だし、あのナンバーは動きも多くて、それが全部決まっているんです。今回は歌に集中すればよかったので、お互いに年齢を重ねて、当時とは違う感覚で新鮮に歌いました。改めて、こんなにいい曲だったんだなと頷き合いましたよ」

――『ジャージー・ボーイズ』の「君の瞳に恋してる」では、海宝直人さんとデュエットをされています。海宝さんとはお親しいのですか?

「直人だけでなく、ガウチ(中河内雅貴さん)含め、(『ジャージー・ボーイズ』の(wキャストのうち)ホワイト・チームは仲がいいんですよ。直人とは『レ・ミゼラブル』でも共演しましたが、そのころはそんなにつるんだりはしていなかったのが、『ジャージー』で自然と仲が良くなったんですね。……というのは、あの作品、ホワイト・チームは大変で(笑)。今だから言えるけど、wキャストで、稽古はまずレッド・チームである程度固めていこうといって始まったけれど、レッド・チームは荒くれ者が多くて(笑)。意見がまとまらなくて、レッド・チームで一日の稽古が終わってしまうことが多かったんですよ。ホワイトはそれを見ながら、稽古したくてしたくてたまらなくて、隅っこのほうで相談しながら“闇練”してました(笑)。一緒に苦しんで、弱音も共有しながら一致団結していたんです。

そんなことで今回、彼と何かデュエットしようということになったのだけど、何を歌おうかというところで、僕が年上だし響く声で、彼が若くて……となると、皆さん『エリザベート』の「闇が広がる」がすぐに浮かぶと思うけど、敢えてそこはやめよう、と(笑)。そのうえで、皆さんに喜んでいただける大きな作品ということで、せっかくだから共演した『ジャージー・ボーイズ』のこの曲にしないか、と言って、“いいですね”と彼ものってくれたんです。今回は少しアレンジを変えて、アップテンポで軽快に楽しく、デュエットとして歌いました。日常的に連絡を取り合っているわけではないけど、直人の存在は刺激的ですね。収録後に、彼が出ている『ノートルダムの鐘』を観に行ったのだけど、素晴らしかった。改めて直人とやってよかった、と思いましたね(笑)」

さらに上に行くために
学び続け、自分の幅を広げたい

2017年『レ・ミゼラブル』製作発表にて。(C)Marino Matsushima

2017年『レ・ミゼラブル』製作発表にて。(C)Marino Matsushima

――収録を通して改めて、ミュージカル俳優としてのビジョンが見えて来られましたか?

「ミュージカル俳優というより、歌い手として“どう歌いたいのか”ということを考えるようになりました。今回、一流のミュージシャンの方々とご一緒することができてすごく刺激になったし、もっともっと上に行きたい、勉強したいと思ったんです。皆さんの中で福井晶一というと、大きな劇場で思い切り腕を広げて大ナンバーを歌っているというイメージがあるかもしれないけれど、もっと幅を広げたい。今回、「So in love」ではいつもとは違う歌唱法を、ミュージシャンの方々に引き出していただけたので、もっとこういう挑戦をしていきたいですね。そういう意味では、ボーナス・トラックの「American Dream」(『ミス・サイゴン』)も同じですし、今回の『グーテンバーグ!』も、この思いの延長線上にあるもので、これまでの蓄積が出せる場としてすごく楽しんでいます」

――幅を広げる、という意味では昨年出演された『わたしのホストちゃん』もそうした挑戦だったのでしょうか。福井さんが出演されそうな作品ではないので(笑)、ちらしを見た時には驚きました。

「お話をいただいて、はじめは全然知らない世界だったので僕も迷いました。でも、まずは鈴木おさむさんが手掛けるコメディということで、鈴木さんの番組はTVでいろいろ見ていましたし、学べるものがいろいろあるんじゃないか、自分のためになることは絶対あるなと思って飛び込みました。出会いはたくさんありましたね。ホストの役は若い、2.5次元の俳優さんが多かったのだけど、大人の役は小劇場の役者さんが多くて、劇団四季では決められたことを毎回やっていたのが、彼らは舞台上で本当にいろんなことを試していて、それがすごく新鮮でした。こういうタイプの芝居もあるんだ、と思いましたね。

その時に僕が演じたキャラクターを演出家の村上さんが気に入ってくださって、アイデムという会社のCMへのオファーに繋がりました。舞台の時と同じような、“無駄にいい声で歌を歌う”というキャラクターです。そうした経験が今回の『グーテンバーグ』でも使える、と思っています。今43歳ですが、まだまだ自分を広げていきたいですね」

――最近はTVに進出するミュージカル俳優さんも増えてきましたが、ご興味はありますか?

「結果的にお話をいただければ有難いとは思いますが、基本的に僕は舞台と歌を中心にしていきたいので、TVで有名になりたいといった願望はそれほどないです」

――『グーテンバーグ!ザ・ミュージカル!』の後には『レ・ミゼラブル』ジャン・バルジャンが控えています。3度目のバルジャンに向けて、今はどんな思いでいらっしゃいますか?

「前の2回はいろんな意味で必死というか、怪我で全公演をこなせなかったり、(療養から)復帰第一作だったりで、とにかく最後まで走り抜けるというのが目標だったので、今回は初めて“いい状態”で臨めるかなぁと思っています。キャストも一新しますので、僕も新たにバルジャンを作り直せるかな」

――長く関わるうち、作品について改めて見えてきたものもあるのではないでしょうか。
『レ・ミゼラブル』(2017年5月25日開幕)製作発表では出演者一同で楽曲を披露。(C)Marino Matsushima

『レ・ミゼラブル』(2017年5月25日開幕)製作発表では出演者一同で楽曲を熱唱。(C)Marino Matsushima

「僕自身、つらいことも含めてこの数年、いろんな経験をしてくる中で感じることもありますが、この前、同じヴィクトル・ユゴー原作の『ノートルダムの鐘』を観て、ユゴーが伝えたいことって一つなんだな、と思いました。貧しかったり、苦しんでいる人々に焦点をあてて、世の中に伝えていきたいんだな、と。そういう人がいて、そういう時代があったからこそ今の平和、今の世の中はあるのだ、と。

バルジャンの人生は普通の人が歩まないような深い闇と苦しみに満ちているけど、司教様と出会うことで改心し、最後は自分の使命をやり遂げて天に召されていく、その姿が感動を呼ぶのだと思います。だからこそ、これだけの長い間、多くの人々に愛される、どの時代でも共感できる作品なのではないでしょうか。今は『グーテンバーグ!』に集中しているので、それが終わってから、作品をより深めていくためにいろいろと考えていきたいですね」

*次頁以降で過去のインタビュー(15年11月)と『歌会』 観劇レポートをお届けします!