一発で合格できたと喜ぶ方、やっと合格できたと安堵する方、30点台前半の点数で合格できるかどうか不安でいっぱいな方、ケアレスミスに涙を飲んだ方、勉強しなかった自分を悔いている方、いろいろいらっしゃると思います。
合格圏内におられる方は、ぜひ次のステップに進む準備をはじめてください。今後ますます、宅建士に課せられる社会的・法的責務と役割は大きくなっております。不動産取引のプロの法律家としてご活躍されることを期待しております。
合格できなかった方も、ひとまず今回の試験は忘れるのではなく、自分が間違えた問題に向き合って、今年の自分に足りなかった知識は何だったのかを分析して、来年の試験に役立ててください。この記事がその一助になれば幸いです。
正答率50%超の問題はわずか6問
「主任者」から「士」に格上げされてはじめての試験。予想通り、難問化傾向がさらに進む内容となりました。昨年度から権利関係でも出題されるようになった個数問題も定着し、これまで以上に正確な知識が求められるようになっています。問1もここ数年で定着した「民法の条文に規定されているか」という形式の出題であり、制度の内容の理解だけでなく、それが条文を根拠にしたものか、判例または改正案を根拠にしたものかの知識も求められるようになっています。また、昨年度までは、最新の判例からの出題が1~2問見受けられましたが、今回の試験ではその出題はありませんでした。特徴的な問題をいくつか分析します。
問1は、2015年3月に国会に提出された民法改正案からの出題でした。まだ、成立していない段階の法案が、現行の民法の条文にない例として選択肢に登場しました。不動産取引において今回の民法改正は実務に多大なる影響を与えるため、成立前の段階でも出題したものと思われます。
問3は、使用貸借と賃貸借を比較させる問題でした。賃貸借に関しては問9と問11と問12にも出題されており、権利関係14問中4問が賃貸借に関連する問題でした。
問3では諾成契約と要物契約という法律用語が選択肢に使われました。大学法学部等で本格的に学んだ方にとってはよく耳にする言葉ですが、これまでの宅建試験用のテキストではあまり触れていないものなので、わからなかった方も多かったものと思われます。
問10では遺言と遺留分、問14では不動産登記法が出題されました。両方とも毎年出題される重要論点ですが、両方とも、私が経営するKenビジネススクールで独自に集計したデータ(以下、弊社データと言います)では、正答率が10%台と、出題として成り立っているのか微妙なくらいの難問でした。
ただ、誤解をおそれず言えば、両方とも、実務経験があれば多少正解しやすかった問題だったかもしれません。宅建業者に勤務する方に少しでも有利な問題を作ろうとしたものなのかどうかは分かりませんが、合否には影響しない問題であることは間違いありません。
しかし、毎年出題されるということで、直前期にそこに絞って学習した一夜漬け受験者にとっては過酷な結果となっていると思われます。今も昔も、きちんと基礎からしっかり学習した人だけが合格できるのが宅建試験であるということですね。
なお、合格者であれば正解する可能性の高い問題は、問2・4・6・8・9・11・12の7問でした(表では「合格者正解」と記し「〇」を付けております)。ただし、問2の正答率は37%だったので、ひっかかりやすかった問題だったのかもしれません。
都市計画法は難問、税法は直近の改正点が出題
法令上の制限は、主要法令である「都市計画法」「建築基準法」「国土利用計画法」「農地法」「宅地造成等規制法」「土地区画整理法」から出題されました。ここ2年間出題されていたその他法令上の制限からの出題はありませんでした。税法の問題は、久しぶりに直近の改正点が出題されました。オールアバウトの記事で私が予想した贈与税の改正点でした。
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特徴的な問題をいくつか分析します。
問15はいつも通り開発許可制度からの出題でしたが、正答率が弊社データでは17%とかなり低めでした。正解肢である4番は、おそらく一般的なテキストに書かれていますが、「市街化調整区域内で開発許可を受けた開発区域以外の区域内」であっても建築等が許可不要となる例外からの出題でした。しかし、今までは、その例外の中でも「農林漁業用建築物」と「公益上必要な建築物」の2つが出題されていました。今年は、それ以外の例外である「仮設建築物」から出題されたことで正答率がここまで下がってしまったのかと推測されます。
ここから言えることは、過去問で問われていることだけでなく、その周辺知識もテキストで補充しておかなければならないということです。
問19の宅地造成等規制法も、弊社データでは正答率が39%と少し低めです。ただ、この問題も、2番の選択肢が明らかに誤りと判断できます。規制区域指定の際にすでに宅地造成工事を行っている場合は指定日から21日以内に知事への届出をする旨は頻出分野でもあり、どのテキストにも記載されている重要論点です。
これもおそらく、同じく届出が必要な場面である、擁壁等に関する工事については工事着手の14日前までに知事に届出しなければならないという制度の方がよく出題されていることから、そこだけ暗記してその周辺知識を見過ごしていたものと推測されます。
問23は、贈与税から出題されました。非課税枠の拡充という改正点からの出題でした。税法は、直近の改正点はでないという巷の噂を覆しての出題でした。ただ、この贈与税の改正は、周知の通り、不動産取引実務では相続税の改正とともに注目されていたものであり、予想通りの出題とも言えます。
なお、合格者であれば正解する可能性の高い問題は、問15・17・19・20・21・22・25の7問でした。
次のページでは宅建業法の問題分析と予想合格ラインと今後の学習方針について解説します。