宅建業法は改正点から2問出題
宅建業法は、個数問題が8問、組み合わせ問題が1問であり、ここ数年の出題形式の傾向を踏襲し、1つでも解らない選択肢があると正解が導けないという意味での難問化傾向が常態化しています。また、内容についても、単純な条文の知識問題は減り、国土交通省が発表している「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」という、いわゆるガイドラインに記載されている運用にあたっての具体例を題材とした問題が多くなっているように感じられます。さらに、過去問と条文の知識で2択まで絞れる問題も多く、制度趣旨の理解と考え方を身に付けていないと正解を導けない問題も増えています。特徴的な問題をいくつか分析します。
問26は、例年通り、宅地建物取引業法2条の用語の意味からの出題でした。しかし、弊社データでは正答率が60%と伸び悩んでいます。その理由は、おそらく、選択肢イが社会福祉法人による高齢者向け住宅の賃貸の媒介という直近の過去問にはない内容だったからだと思われます。
この問題も、他の問題と同じく、知っているだけでなく制度趣旨を理解しているかどうかにかかっていました。すなわち、知らない内容を見た瞬間に、「わからない」と判断すればこの問題は正答率50%になってしまいます。しかし、一歩踏み止まって、「そもそも宅地建物取引業をするにあたって、なぜ免許を要するのか?地方公共団体や住宅供給公社は免許が不要なのに、過去問でよく出てきた農業協同組合や建設業者は免許が必要なのはなぜか?本問の社会福祉法人はこの趣旨から考えて、どちらに位置付ければ、その趣旨である購入者等の保護を実現できるのだろうか?」と数秒間考えれば、正答率は70%以上になるはずです。
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問27と問35は、平成27年4月1日に施行された改正点から出題されました。問27は免許基準における暴力団排除からの出題でした。問35は宅地建物取引士に関する新設の規定と宅建業者における従業者への教育からの出題でした。これらの問題も、私がオールアバウトの記事で予想していた通りの出題でした。
宅建業法も年々難問化している中で、改正点の2点を確実に得点することはとても重要なことです。
問33は、報酬額の計算からの出題でした。弊社データの正答率が46%となっており、予想外に低いと感じています。おそらく、選択肢イの権利金の場合の計算を間違えたのではないかと思われます。私は、講義でもその際に提出させる宿題でも、同様の問題を解かせていたのですが…。権利金の授受がある場合は、それを売買代金とみて計算できる、すなわち、契約当事者双方から媒介の依頼を受ければ、両方から媒介契約の基本報酬額を受け取ることができます。
問41は、業務上の規制に関する問題でした。その形式が、従業者と買主との対話となっている点がこれまでにないものでした。また、選択肢エは、申込撤回の際に申込証拠金10万円から手数料5,000円を差し引くことができるかどうかという内容で、その根拠が「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(以下、ガイドラインと略す)にある実務的な内容でした。
私見ですが、民法が年々難しくなる中、宅建業法で確実に高得点するためには、こういった問題も1問でも落としたくないものです。重要なものについては、ガイドラインにも目を通しておくとよいでしょう。
問45は、今年も、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律からの出題でした。出題されるようになってからまだ6年程度ですが、毎回似たような問題なので絶対に落としてはならないところでした。ただ、弊社データでは正答率が54%と予想よりも低めでした。おそらく、選択肢3と4で悩んだのかと思います。
なお、合格者であれば正解すると思われる問題は、問31・38・40・41以外の計16問でした。
予想合格ラインは?
今年の宅建試験は、各社そろって難しめであり合格ラインは低くなると予想しています。大手予備校では、30~32点を示すところが多いです。弊社データは、私及び弊社スタッフが講師として講義する社員及び一般受講者、弊社が実施する登録講習(5問免除講習)を受講する受講者が対象となっております。ただ、私が教える会社では上は合格率80%を超えるところも多いので、データとしては一般的よりも少し高めになっていると思われます。
そのあたりを考慮して計算すれば、
上位15%で、31点
上位18%で、30点
という数字が出ました。
あとは、実施団体である不動産適正取引推進機構が合格者を何名程度にする予定なのかによりますね。一人でも多くの人を合格させてほしいという願いからは、ぜひとも、29点か30点くらいが合格ラインだと嬉しいのですが。
今後の学習方針
もう数年前からの傾向ですが、宅建試験は、知識ゼロから2~3カ月で簡単に合格できる国家試験ではなくなりました。10年以上前に合格した宅建業者社長及び人事担当者は、意識をあらため、本腰を入れて社内研修や従業者教育への配慮に取り組まないと、合格者が1人も出ないという事態を招き、事業展開に支障をきたすことになります。
反面、これから宅建業者に勤務しようとしている方が、宅地建物取引士の資格を有していれば、今まで以上に就職・転職に有利になるとも言えます。
今後の勉強は次の点に注意しましょう。
・過去問を解くときは、その解答だけでなく、必ず、テキストでその周辺知識も確認すること
・改正点は税法を含めてきちんと整理してまとめておくこと
・宅建業法は、国土交通省が発表しているガイドラインにある具体例とともに勉強すること
・民法は改正案を含めて、過去問とその周辺知識及び民法の基礎的概念にも触れておくこと
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