世界遺産/アジアの世界遺産

福建の土楼/中国(3ページ目)

森と畑が広がる深い渓谷に突如姿を現す直径70m、6階建ての巨大な建造物、客家土楼。個々の土楼が驚異的であるうえに、自然には不似合いな円形・楕円形・正方形・長方形・六角形といった幾何学図形が連なる様は感動的なほどに神秘的だ。近年中国では万里の長城や紫禁城に匹敵する人工建造物として人気は急上昇中! 今回はそんな中国の世界遺産「福建の土楼」を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

世界遺産の土楼群 2. 初渓(しょけい)土楼群

土楼が連なる初渓土楼群

川沿いに土楼が連なる初渓土楼群。左3つが円楼で右が方楼となっている

集慶楼の屋根屋根

集慶楼の屋根屋根

永定土楼民俗文化村の南西約15km(以下、すべて直線距離)、龍岩市永定区にある土楼群で、10棟が世界遺産に登録されている。村の北に展望台があり、ここからの眺めが格別だ。

ランドマークである集慶楼(しゅうけいろう)は1403~1424年の永楽年間に建設された最古級の土楼で、中心に祖廟を配した二重の同心円からなる。内円1階建て、外円4階建てで、外円の直径は66mに及び、初渓最大を誇る。外円の各階には56の部屋が設置されているが、現在人は住んでいない。

 

善慶楼

初渓土楼群でもっとも新しい善慶楼

これに対して白漆喰で覆われた真っ白い外壁が特徴の善慶楼(ぜんけいろう)は1978~1979年の建設で、竣工からまだ40年弱しか経っていない最新の土楼。こうして古い土楼と新しい土楼が共存しているのがまたおもしろい。

この他に方楼の縄慶楼、錫慶楼、藩慶楼、円楼の餘慶楼、善慶楼などがある。

 

世界遺産の土楼群 3. 高北(こうほく)土楼群

4階建ての方楼・世澤楼

生活感あふれる4階建ての方楼・世澤楼。隣の承啓楼、五雲楼とあわせ、タバコで財を成した江氏の土楼だ

承啓楼、最内部の回廊

承啓楼、最内部の回廊

永定土楼民俗文化村の東約3km、龍岩市永定区にある土楼群で、4棟が世界遺産に登録されている。

「土楼王」と呼ばれる承啓楼は江氏が1709年に建設した巨大な土楼で、祖廟を中心とした四重の同心円からなり、外円は直径63mに及ぶ。迷路のような土楼内には約400の部屋があり、学校まで備わっている。最盛期には約800人、現在でも約300人がここで暮らしている。上階から眺めるバームクーヘンの断面のような景観は見る者を圧倒する。

他に世澤楼、五雲楼などがあり、深遠楼は直径70mで高北土楼群最大を誇り、五角楼は五角形のユニークな構造を見せる。

 

世界遺産の土楼群 4. 南渓(なんけい)土楼群

苔むした祖廟が美しい衍香楼

苔むした祖廟が美しい南渓土楼群の衍香楼。この円楼には140近い部屋があり、いまだ約100人が暮らしている

南渓の川沿いに建つ振福楼

南渓の川沿いに建つ振福楼。振成楼と似ていることから姉妹楼とも呼ばれる (C) Zhangzhugang

永定土楼民俗文化村の南約5km、龍岩市永定区にある土楼群で、南渓と呼ばれる川沿いの渓谷に数多くの土楼群が連なっている。世界遺産に登録されているのは蘇氏が建てた衍香楼(えんこうろう)と振福楼(しんぷくろう)のふたつ。

1842年に完成した衍香楼は直径40mの円楼で、内部の祖廟が方形をしており、円と四角形のコントラストがおもしろい。直径42mの振福楼は1913年の竣工で、花崗岩の列柱をはじめ西洋建築との融合が見られる。

南渓土楼群には他に環極楼などの土楼があるほか、近郊の実佳村には南渓一帯が見下ろせる展望台がある。

 

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