悲願がついに……。生命保険の受取人になれるようになりました
渋谷区・世田谷区のパートナーシップ証明のスタートに伴い、携帯電話各社が同性カップルに家族割を適用することを発表したり（詳しくはこちら）、ライフネット生命をはじめ大手生保各社も同性パートナーを死亡保険金の受取人に指定できるようにすると発表したり（詳しくはこちら）、企業も動きはじめました。生命保険の件は、相続が認めらていない以上、せめて生命保険だけでも遺したい…というゲイやレズビアンのカップルの悲願でしたので、これは本当にうれしく、喜ばしいニュースでした。2月の渋谷区のパートナーシップ条例案の発表以降、企業が同性カップルのために動いたというニュースが次々に届くようになりました。いよいよ渋谷区・世田谷区のパートナーシップ証明がスタートする頃には、メディアでも同性カップルの権利と企業の動きを関連づけた報道がいろいろ見られるようになりました。
なかでも、11月15日に放送されたNHKの『サキどり』という番組がとてもよかったです。ゲストにレスリーキーさんとブルボンヌさんを迎え（安定の絶妙なコメントでした）、「LGBTと切り拓く未来」というテーマで、たくさんの企業に取材していました。NHKなので企業名は出ませんでしたが、いずれも有名どころなので補足してお伝えすると、ゲイのデザイナーさんの感性で一般にも支持を広げているアンダーウェアのTOOT、いち早くLGBTインバウンドに乗り出し、同性結婚式も手がけているホテルグランヴィア京都、約7年前から社内でLGBT支援策を打ち出してきているゴールドマン・サックスの取り組みなどが紹介されていました。
特に印象的だったのは、ゴールドマン・サックスのたぶん40～50代の方が「LGBTの対応が始まって、最初は一過性のものかな？と思っていたが、7年くらいやっていただいて、これだったら言っても大丈夫かな、と思えた」と、半年前にカミングアウトしたというエピソードでした。上司の方は「彼がカミングアウトした後、驚くほどエネルギーを感じた。逆に、これまでどれだけ抑圧されていたかということ」と、同僚の方たちも「話しにくいことを言ってくれて、信頼されてると感じた」「誰もが多かれ少なかれマイノリティ。LGBTが受け入れられたら、自分も大丈夫と思える」とコメントしていて…感動しました（ちなみにこのエピソードで流れていたBGMはダイアナ・ロスの「I’m Coming Out」。素敵！）
このエピソードのあと、一般の方へのアンケート（電通ダイバーシティラボ調べ）で、「LGBTを受け入れている企業で働きたいか？」という質問に、64％もの方が「YES」と回答していた、さらに、そのうちの12.7％の人は「待遇や職種にかかわらずYES」だったというデータが紹介され、ちょっとビックリしました。LGBT施策（ダイバーシティ＆インクルージョン）を行っている会社は、当事者だけでなく、そこで働くすべての人にとってプラスになると考える人が、ストレートの方の間でもものすごく多いんですね。
企業がLGBTを取り込むとか言うと、コミュニティ内でも（長年、世間で差別を受けてきたがゆえの不信感もあり）「ただオイシイマーケットとして見てるだけなんじゃないか」とか「食い物にするつもりなんだろう」みたいな声も聞こえてくるのですが、この『サキどり』を見ていただけたら、「そういうことか」とストンと落ちるんじゃないかなと思いました。企業とか仕事とか経済というのは、生きていくうえでかかわらざるをえないものだけど、そのなかで（昔はイロモノとかヘンタイという見方をされていたけど）LGBTのポジティブなイメージを広げ、当事者が（非当事者も）働きやすくなったり、企業やビジネス自体も活性化していくわけで、ひいては社会もよりよくなるということが、とても具体的に、説得力をもって示されていたと思います。
