2015年ラグビーワールドカップ日本代表が発揮したフォロワーシップ
勝利の鍵となった「現場の判断」と「選手への信頼」
しかし実際に選手がチョイスしたプレイはスクラム。つまりトライの5点を狙い、あくまで勝利を目指したのです。これがピタリとハマったわけですが、ここで組織論として注目すべきポイントを挙げてみましょう。
・現場目線での的確な判断「フォロワーによるリーダーシップ」
最も大きなポイントは、もちろんラストプレイを選択した選手たちにあるでしょう。試合の中継をご覧になった方はお気づきになったと思いますが、ラグビーのヘッドコーチは観客席に座ることになっており、基本的に細かい指示を送ることはできません。最後は選手自身の選択に委ねられるのです。五郎丸選手は「同点は歴史を変えるには必要ない。勝つか、負けるか」と述べたと言います。相手選手が一人足りない状況であるという冷静な判断に加えて、組織として共通する目標を達成するために発揮された、フォロワーによるリーダーシップだったと言えます。
・選手への信頼という「リーダーによるフォロワーシップ」
もう一つのポイントが、選手がなぜ前述した判断をできたのかという点です。ラストプレイを英断したフランカーのリーチ・マイケル主将は、「思うようにやれ」と、決断する上で重要なリーダーからの支持を与えられていました。もし常々リーダーからの指示が絶対という環境に置かれていたら、今回の奇跡は生まれていたでしょうか。またジョーンズヘッドコーチは常々「日本代表としての誇り」「ポジティブな思考」を選手に伝えてきました。こうしてコーチと選手間の信頼とチームとしての実績を徐々に築き上げてきたことが、この度の成功の一因と言えるのです。