リーダーシップ/フォロワーシップの基本知識

ラグビー日本代表に見た”真に機能する組織”の条件(2ページ目)

2009年に私が説いたフォロワーシップ。2015年ラグビーワールドカップで日本が南アフリカを撃破した試合は、まさにこのフォロワーシップを体現した組織のベストプラクティスになり得ます。この偉業を元に、改めてフォロワーシップを整理してみます。

中竹 竜二

執筆者:中竹 竜二

ラグビーガイド

2015年ラグビーワールドカップ日本代表が発揮したフォロワーシップ

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勝利の鍵となった「現場の判断」と「選手への信頼」

ここでラグビー日本代表を例にとって説明してみましょう。初戦の南アフリカ戦の明暗を分けた、32-29と3点ビハインドの最後のプレイ。この場面では、同点を狙って3点のペナルティキックを蹴るという選択肢が最も現実的なように思えました。キッカーの五郎丸歩選手はここまで6本のキックを成功させていましたし、事実エディー・ジョーンズヘッドコーチはペナルティキックを指示したと言われています。

しかし実際に選手がチョイスしたプレイはスクラム。つまりトライの5点を狙い、あくまで勝利を目指したのです。これがピタリとハマったわけですが、ここで組織論として注目すべきポイントを挙げてみましょう。

・現場目線での的確な判断「フォロワーによるリーダーシップ」
最も大きなポイントは、もちろんラストプレイを選択した選手たちにあるでしょう。試合の中継をご覧になった方はお気づきになったと思いますが、ラグビーのヘッドコーチは観客席に座ることになっており、基本的に細かい指示を送ることはできません。最後は選手自身の選択に委ねられるのです。五郎丸選手は「同点は歴史を変えるには必要ない。勝つか、負けるか」と述べたと言います。相手選手が一人足りない状況であるという冷静な判断に加えて、組織として共通する目標を達成するために発揮された、フォロワーによるリーダーシップだったと言えます。

・選手への信頼という「リーダーによるフォロワーシップ」
もう一つのポイントが、選手がなぜ前述した判断をできたのかという点です。ラストプレイを英断したフランカーのリーチ・マイケル主将は、「思うようにやれ」と、決断する上で重要なリーダーからの支持を与えられていました。もし常々リーダーからの指示が絶対という環境に置かれていたら、今回の奇跡は生まれていたでしょうか。またジョーンズヘッドコーチは常々「日本代表としての誇り」「ポジティブな思考」を選手に伝えてきました。こうしてコーチと選手間の信頼とチームとしての実績を徐々に築き上げてきたことが、この度の成功の一因と言えるのです。

リーダーシップだけでは不十分。フォロワーシップを理解しよう

今回ラグビー日本代表の偉業を例にとり説明しましたが、組織にフォロワーシップが浸透することには大きな恩恵があります。今後この連載では、組織論におけるリーダーシップとフォロワーシップの役割を明らかにし、具体的な例をもってフォロワーシップの有用性をお伝えしていきたいと考えています。
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