節税対策/税制改正最新情報

年内が期限!中小企業経営者に影響がある金融税制

平成28年より金融所得課税の一体化が開始され、一定の公社債等を上場株式等と同様の取扱いとするなど、改正されます。その中から中小企業経営者にとって、特に影響がある内容を2つお送りします。

今村 仁

執筆者:今村 仁

中小企業・個人事業主の節税対策ガイド

公社債等に係る税制改正の主な内容

金融所得課税の一体化

金融所得課税の一体化

平成28年1月1日以後、特定公社債、公募公社債投資信託等(「特定公社債等」)の利子や売却などによる所得が申告分離課税(20%※)の対象とされ、これらの所得間、上場株式等の配当所得(申告分離課税を選択したものに限る)及び譲渡所得等との損益通算並びに特定公社債等の譲渡損失の金額についての繰越控除ができることとなります。

※別途、復興特別所得税が課税されます。以下同じ。

なお、「特定公社債」とは、国債、地方債、外国国債、公募社債、上場公社債、平成27年12月31日以前に発行された公社債(同族会社が発行した社債を除く)など一定のものです。

中小企業経営者にとって、最後列挙されている「平成27年12月31日以前に発行された公社債(同族会社が発行した社債を除く)」が重要なキーワードとなります。

同族会社が発行する少人数私募債の利子等は総合課税へ

同族会社等の中小企業が、資金調達する手段として、少人数私募債を利用することがあります。

少人数私募債とは、少人数の縁故者や取引先を対象として発行する社債のことで、通常の社債に比べて、手続の簡素化・無担保で発行可能などのメリットがあります。なお、少人数私募債を発行するためには、社債権者が50名未満、社債権者に適格機関投資家(プロの投資家)がいない、社債総額を最低券面額で除した数が50未満(例えば、最低券面額が100万円の場合には社債総額が5,000万円未満)、などの発行条件を満たすことが必要です。

少人数私募債については、企業が直接資金調達できるメリットもありますが、他方では、私募債を引き受けたその役員に支払われる利子等について、源泉分離課税20%で完了するというメリットもあります。どちらかというと、後者がクローズアップされ、過度な節税対策として利用されているとの指摘がありました。

そこで、平成28年からは、同族会社が発行する少人数私募債のカテゴリーについては「特定公社債」から除外され、総合課税の対象とされます。さらに、平成27年12月31日以前に発行した少人数私募債についても、平成28年1月1日以後に支払を受ける利子等に係る税法上の取扱いについては、総合課税に変更されます。

現行制度では、同族会社の経営者が会社にお金を貸す場合に受け取る利息は総合課税となり、超過累進税率(15~55%)で課税されます。しかし、これを私募債で調達する場合、経営者が受け取る利息は源泉徴収20%だけで済み、税率の差額を利用した節税対策を講じることができるのです。

しかしながら、平成28年以降に受け取る私募債に係る利息については、過去に発行したものも含めて全て総合課税となり、中小企業経営者にとっては増税となることと思われます。

非上場株式等に係る税制改正の内容

平成28年1月1日以後は、株式等に係る譲渡所得等について、上場株式等に係る譲渡所得等と非上場会社株式等(一般株式等)に係る譲渡所得等に区分し、別々の分離課税制度となります。

つまり、上場株式等に係る譲渡損益と非上場株式等に係る譲渡損益については、平成28年以降は損益通算することができなくなります。

非上場株式等と上場株式等との損益通算は廃止へ

中小企業経営者が、事業承継や相続対策として所有する自社株式等を後継者や持株会社に譲渡することがあります。

業績のいい会社や業歴が長く土地等の含み益が多い会社においては、自社株評価が高額となり、多額の譲渡益が発生するケースがあります。この場合、現行においては含み損のある上場株式等を譲渡することにより、非上場株式等の譲渡益と上場株式等の譲渡損とを損益通算でき、税金を抑えることができます。

しかし、平成28年以降については、非上場株式等である自社株譲渡益と上場株式等譲渡損とは、損益通算できなくなります(逆の場合も同様)。

年末まで4か月余りですが、ご自身のポートフォリオを確認し、年内に実行した方が有利かどうかのシミュレーションを行ってみてはいかがでしょうか。

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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