世界遺産/ヨーロッパの世界遺産

コルドバ歴史地区/スペイン(4ページ目)

中世から伝わるかわいらしい小路やパティオ(中庭)を飾っているのはゼラニウムやカーネーションといった花々で、花の艶やかな色彩が純白の壁によく映えている。そんな美しい町並みの真ん中には、イスラム紋様やアラブ風の円柱に、ゴシックやルネサンス様式のキリスト教礼拝堂を備えた世にも不思議な建物メスキータ。今回は古今東西の文化が融合したスペインの世界遺産「コルドバ歴史地区」を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

メスキータだけじゃない! 「コルドバ歴史地区」の見所

アルカサルの塔から見下ろすパティオ

アルカサルの塔から見下ろすパティオ。アルカサルはカスティリャ女王イザベラ、アラゴン王子フェルナンド、コロンブスの三者会談が行われた場所でもあり、ここよりスペイン海洋帝国の歴史がはじまった

聖ラファエルのトリウンフォのモニュメント

聖ラファエルのトリウンフォのモニュメント

世界遺産「コルドバ歴史地区」はコルドバ駅の南西に広がる一帯を地域として登録しており、メスキータ以外にも見所は豊富だ。ここでは世界遺産エリアの主な見所を紹介しよう。

■ローマ橋
全長230m、16のアーチからなる石橋。紀元前1世紀、ローマ帝国によりこの川にローマ橋が架けられると、19世紀までコルドバ唯一の橋として人々の生活を支えた。中世、多数の水車が付近に設置され、水車の力を利用して水をアルカサルのパティオなどに引き込んだ。橋の東にある水車はそのひとつだ。

■プエンテ門、カラオーラの塔
ローマ橋とメスキータの間に建つのはプエンテ門で、かつては町を取り囲む城壁の門だった。1571年にルネサンス様式に改装されている。対岸のカラオーラの塔は橋を守るために12世紀末に建てられた砦で、この辺りから眺める町の景色がまた格別だ。

 

■ユダヤ人街
ユダヤ人街に残るユダヤ教会=シナゴーグ跡

ユダヤ人街に残るユダヤ教会=シナゴーグ跡

メスキータの北に広がるエリアで、キリスト教徒襲来前は主にユダヤ商人が住んでいた。夏の暑さに対処するために家の壁を白く塗り、パティオを造って風通しをよくしていた。道やパティオの壁のあちらこちらに植木鉢が吊るされていて、色とりどりの花が活けられている。花の小路やムデハル様式のシナゴーグ、闘牛博物館など見所が多い。

■アルカサル
正式名称は、キリスト教諸王のアルカサル。アルカサルはスペイン語で「城」を意味する。ここにはイスラム教が伝わる以前から城塞があり、それを利用して後ウマイヤ朝の王宮が建設された。14世紀にカスティリャ王国のアルフォンソ11世によって、イスラム教とキリスト教の美術が融合したムデハル様式の城塞庭園として改修された。

 

■ビアナ宮殿
ビアナ宮殿の円柱のパティオ

ビアナ宮殿の円柱のパティオ

14世紀に建てられたビアナ公爵の邸宅で、現在はパティオ博物館として公開されている。猫のパティオ、オレンジのパティオ、円柱のパティオ、プールのパティオ、庭師のパティオなど、12のパティオで構成されている。5月のパティオ祭り以外の時期にコルドバを訪れる人は、こちらでパティオを堪能しよう。

■ポトロ広場
ポトロは子馬のことで、15世紀に設置された子馬の像が建っている。セルバンテス著『ドンキホーテ』に登場することで知られ、ポサダ・デル・ポトロ(旅籠屋ポトロ)はセルバンテスが宿泊した宿として有名だ。現在は土産物屋になっている。

これら以外にも多くの博物館や美術館・庭園・パティオ・教会があるし、何気ない家並みがとんでもなく美しかったりする。そんな景色との出会いを求めて、ぜひ迷い歩いてみよう!

 
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