イスラム+キリスト教美術の到達点、コルドバ歴史地区

メスキータの円柱の森

864本の柱と紅白ストライプの二重アーチが印象的なメスキータ、円柱の森。アーチには「奇跡の水道橋」といわれるミラグロス水道橋(世界遺産「メリダの遺跡群」構成資産)などのローマ水道橋の技術が転用されている

西アジアで生まれたイスラム美術は北アフリカを抜けて地中海を北上し、フランスやイタリアで洗練されたキリスト教美術はピレネー山脈を南下して、イベリア半島で融合する。そしてスペイン南部のアンダルシア地方で独自の芸術文化を育んだ。

その最高傑作といえるのがグラナダのアルハンブラ宮殿とコルドバのメスキータだ。今回はメスキータを中心に美しい街並みで知られるスペインの世界遺産「コルドバ歴史地区」を紹介する。

古今東西の文化が融合する花の都コルドバを歩こう!

メスキータ、中央礼拝堂の翼廊

メスキータ、中央礼拝堂の翼廊(十字架の短い軸の部分)を見上げる。メスキータは大聖堂として「コルドバの聖マリア大聖堂」の名を持っている

アルカサルのパティオ

アルカサルのパティオ

コルドバは町そのものが博物館だ。

歴史地区の南西にたたずむアルカサルの庭園を彩っているのは西アジアや北アフリカで見られるイスラム庭園。砂漠が多い中東の人々は水と緑に憧れて、水をふんだんに使って天を流れる聖なる泉を再現した。こうした庭園は「パイリダエーザ」と呼ばれ、天国を意味するパラダイスの語源となり、アンダルシア地方の家々を飾るパティオ(中庭)の起源となった。

アルカサルの脇を流れるグアダルキビール川に架かる重厚な橋は2000年以上前、ローマ時代に造られた石橋だ。その頃、日本は弥生時代。そんな時代の橋がいまなお現役でいることに驚愕する。

ローマ橋を北に歩くと見えてくるのがメスキータの城壁で、その門は繊細なイスラム紋様アラベスクで装飾されている。イスラム教では人や動物を描くことが禁じられているため、このような美しい幾何学紋様や植物紋様・装飾文字が発達した。

 

キューポラとミフラーブ

上がキューポラ(天蓋)、下の窪みがミフラーブ

門を入ってオレンジのパティオで身を清めたら、いざメスキータの内部へ! 静かでほの暗い空間を満たしているのは900本近い円柱の森。ただただ円柱が立ち並ぶミニマルな空間がたまらなく神々しい。西の一角にはイスラム教の聖地メッカの方角を示すミフラーブ。壁や柱は繊細華麗なアラベスクで飾られており、ここが聖なる場所であることを雄弁に物語っている。

メスキータの真ん中へ歩を進めると、アラブ的な空間が一気に消え去り、ゴシック・ルネサンス様式の中央礼拝堂が唐突に目に飛び込んでくる。天井は高く開放的で、ステンドグラスから採光される光のために、円柱の森の闇に慣れた目には光り輝いてさえ見える。闇から光へ、閉所から開放へ、何やら壮大な物語を見ているようなデザインの転回だ。

 
中央礼拝堂の天井

光あふれるメスキータ、中央礼拝堂の天井部分。円柱の森と比べると高さもまた突き抜けている (C) doblevece


メスキータを出てさらに北に行くと白壁のかわいらしい家々が立ち並んでいる。ユダヤ人街はまさしく中世の南欧といった雰囲気。小路や家々のパティオはゼラニウムやペチュニア、カーネーション、ブーゲンビリアといった色とりどりの花で飾られている。それぞれデザインが異なっているので道々を迷い歩くのがまた楽しい。

こうしたパティオの集大成が毎年5月に開催されるパティオ祭りで、コンクールを通して美を競っている。こちらは「コルドバのパティオ祭り」としてユネスコの無形文化遺産に登録されている。

このように、コルドバは古代・中世・現代、キリスト教・イスラム教、アジア・アフリカ・ヨーロッパの文化を受け継ぐ多文化融合都市なのだ。

 

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