この夏、オススメの本
『職場のLGBT読本』のほかにも何冊か、LGBT関連の本が出版されていますので、ここでご紹介いたします。今のこのLGBTシーンの盛り上がり(渋谷区で同性パートナーシップを認める条例が制定されたり、メディアで好意的に取り上げられたり、パレードなどに企業がたくさん協賛するようになったり、企業の内部でLGBTを包摂する取り組みが目立ってきたり…etc.)の立役者であり、最重要人物の一人である松中権さんが、満を持して自著『LGBT初級講座 まずは、ゲイの友だちをつくりなさい』(講談社+α新書)を発表しました。タイトルがコミュニティ内でちょっと物議を醸したりはしましたが、読んでみると、ちゃんといいことを言っているし、素直に、面白く読めます。個人的には、昔(ゴトウがいる時代に)電通の内定が決まっていたにもかかわらず『バディ』編集部に面接に来て(たぶんマツコさんに)「あなたのような人は来てはダメ」と諭されたというエピソードが、いちばんインパクトがありました。本当に電通行ってよかったね…という気持ちと、超がつくエリートである松中さんが『バディ』編集部を受けるくらいゲイのことを熱く思っていたのか!という新鮮な驚き。松中さんっていつもニコニコしてて、全然えらぶってなくて、チャーミングで、とても感じのいい方です。ゴトウは応援してます。
それから、大阪のゲイの弁護士カップルとして話題になった南和行さんが『同性婚−−私たち弁護士夫夫です』(祥伝社新書)を発表しました。ゴトウはまだお話したことはないのですが、「弁護士“夫夫”」というドキュメンタリーを観たときから、なんて素敵なカップルだろうと思っていました。今回の本で、吉田さんが早くに親御さんを亡くして苦労したお話とか、事情があって親元から離れている未成年の方の後見人になっていた(半年くらい家で面倒を見ていた)お話などを知って、ちょっともう、涙が…。そんな吉田さんを見守り、寄り添い、共に弱者の味方として闘う正義派の弁護士になって活躍している南さんも、本当に素晴らしいと思います。そして、本の後半は、法律の専門家として、そもそも憲法24条の「両性の合意」とはどういう意味なのか?とか、なぜ同性婚が認められるべきなのか?とか、これまで代替的な制度としてゲイカップルに用いられてきた養子縁組とはどういうものなのか?といったことについて実に的確にわかりやすく、解説してくれています。同性パートナーの権利保障について考えるとき、この本がこれからの基礎的文献となることでしょう。ぜひお手元に!
最後に、全然LGBTとか関係ないのですが、お盆なので、たまには仏の教えに触れてみませんか?ということで、最近ゴトウが読んで最も感銘を受けた本、精神科医の名越康文さんが書いた『どうせ死ぬのになぜ生きるのか』(PHP新書)をご紹介します。仏教の哲学をベースに書かれている本で、ゴトウが長年…中高生の頃から自問自答し、懊悩し、考え続けてきたことへの答えが書かれていて、目からウロコとはこのこと!と興奮と感動を味わいました。なぜ手塚治虫の『火の鳥』にあんなに惹かれるのか、わかった気がしました。名越さんは、心を無にして(心頭滅却すれば火もまた涼し)、誰もがもっている「仏性」を開眼させ、明るく爽やかな心持ちで日々を過ごし、「方便」の喜びを知る(ちなみに「方便」は、流行のアドラーと同じことを言ってると思います。コミュニティへの貢献です)といったことを説きます。ゴトウはずっと、心は自分のものだし(心の動きこそが自分だし)、欲望とか自己愛がなくなってしまったら生きていられないと思っていました。しかし、根本が違っていたのです。雷に打たれたような衝撃でした。興味のある方、ぜひ読んでみてください。憑き物が落ちるかもしれません。