チーズ/おすすめ白カビチーズ

スパイシーな個性派チーズ「ガプロン」

フランス、オーベルニュ地方発祥のガプロン。ちょっと他のチーズとは違う個性派で、伝統的な原料はバターミルク。そこにニンニクや黒胡椒を加えてスパイシーに仕上げます。ビールとの相性もぴったりです。

小笠原 由貴

執筆者:小笠原 由貴

チーズガイド

スパイシーなチーズ「ガプロン」

フランス、オーベルニュ地方で昔から家庭で作られてきたガプロン。黄色い紙テープが巻かれたドーム状の姿は、一度見ると忘れられない、強く印象に残るチーズです。
見た目も個性的ですが、味わいも個性的。脂肪分の少ない生地にニンニクや胡椒を混ぜ込んで作るため、とてもスパイシーな仕上がりです。

かつて、ガプロンの数は農家の豊かさのバロメーターでした。というのも、ガプロンはバターを作った残りの液体"バターミルク"から作られていたため、贅沢品のバターをどれだけ作る事が出来る家なのか、という事をその数から推測したそうです。故に男女が結婚する際、花婿の家族は花嫁の家のキッチンにどれだけガプロンが吊り下げられているのかをチェックしていたという逸話もあります。
パリのチーズショップに並ぶガプロン。

パリのチーズショップに並ぶガプロン。



基本データ

名称:ガプロン(Gaperon)
タイプ:白カビ(ソフトタイプ)
原産地:フランス、オーヴェルニュ地方、ピュイ・ド・ドーム県
※地図はコチラ→goo.gl/maps/PEVfJ
原料乳:牛乳
熟成期間:4~8週間のものが多い
固形分中脂肪分:30~45%
出荷時の形・大きさl・重さ:お椀をふせた様な半球のドーム形。重さは250~400gのものが多い。(AOCは取得していないので、特に規定はない)
旬:秋~春
AOC(原産地呼称統制)取得年:未取得


発祥・名前の由来

ガプロンが生まれたのは、フランスの中央山地、オーヴェルニュ地方。美しい自然に恵まれ、ミネラルウォーター、ボルヴィックでも有名なところですが、冬の寒さは厳しく、大きな産業も無いため、かつては決して豊かとは言えない場所でした。そんな昔のオーヴェルニュ地方では、バターを作った後に残る液体、バターミルクも貴重な栄養源。そのバターミルクを使ってチーズを作り、風味の乏しさをニンニクや胡椒で補う事で美味しく仕上げていたのがガプロンです。
そしてGaperonの"gapeまたはgap"は、この辺りの方言で"バターミルク"の意味。もともとバターミルクで作られていたチーズだったことから、gapeが変化して"gaperon"となりました。


テロワール(気候、自然)

一帯が山地となっているオーヴェルニュ地方。起伏があり、冬の厳しい寒さも長く続きます。そんなところなので、農耕よりも酪農が盛ん。牛たちは、高山植物や栄養豊かな草花を食べるので、ミルクは上質。その美味しいミルクを使って、昔から数々の銘チーズが作られてきたところです。


製法・熟成

AOCに認定されているチーズではないので製法が法律で決められているわけではありませんが、伝統的に各家庭で以下の様に作られていました。
  1. バターミルクに全乳を足して温め、レンネット(凝乳酵素。仔牛の胃袋を乾燥させて作る)を加えてミルクを固める。
  2. 固まったミルク(カード)をカットし、固形物を布で濾してある程度水分を切る。
  3. ニンニクのみじん切りと砕いた黒胡椒、塩を加え混ぜ、1個分ずつ布で茶巾状に包んで吊るし、水気を切る。(家庭で作る場合は、このまま茶巾絞り型に仕上げ、キッチンに吊るして乾燥・熟成させる事も多い)
  4. ドーム型に形を整え、紐をかけて吊るして熟成。熟成中に自然に白カビが付く。熟成期間はそれぞれ。フレッシュな時に食べても、2か月ほど熟成させて強い風味に仕上げてもそれぞれに美味。

※もともとバターミルクを使い、30%ほどの低脂肪に仕上がっていたガプロンですが、現在では全乳で作る事も多く、乳脂肪分40~45%のものが主流になっています。 また、現在流通しているものの中で吊るして熟成しているガプロンはまずありません。ライ麦の麦藁の上や棚の上に並べて熟成しています。


>>次のページでは、香りや味わい、食べ方についてご紹介します

 

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