マネジメント/マネジメント事例

東芝問題から学ぶマネジメント用語"ガバナンス"とは(2ページ目)

不適切会計に揺れる東芝問題は、経営トップの関与が取りざたされるに至り、遂に歴代3人の社長が辞任に追い込まれる事態になってしまいました。一連の報道で大きくクローズアップされたのが、ガバナンスというマネジメント用語。一般に企業統治と訳されるこの言葉ですが、あるべきその内容とは何なのか。東芝が“ガバナンス欠如”とされる理由と合わせて解説します。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

日本企業では取締役の上司であり続ける代表取締役

解説

東芝は委員会設置会社としてのガバナンスが機能しなかった

しかし現実は、なかなか原則どおりの行動をとることは難しいのです。それは、とりわけオーナー企業など古くからの日本の会社経営スタイルが、ガバナンスとは程遠い状況にあるからです。本来、取締役会の合議制で選定されるべき代表取締役ですが、ほとんどの日本企業の取締役会では、はじめに代表取締役ありきで、対等な取締役同士の議論で代表にふさわしい人間を選ぶことなどないように見受けられます。逆に取締役を指名するのも解任するのも上司である代表取締役の一存。仮に代表取締役に盾を突こうものなら、むしろ自分の立場を危うくすることにもなりかねない。これでは代表取締役の監視はおろか、そもそも取締役会のガバナンス機能が期待できないのが当然です。

オーナー企業の場合には、基本は代表取締役=筆頭株主という構図であり、代表取締役が他の取締役を任免する上司的存在として君臨しているのはまだ理にかなっています。しかし、非オーナー系の純然たるサラリーマン企業において同じ流れになるのは、実は本来全く理屈が通らないことなのです。しかも東芝に関して言うなら、同社は委員会設置会社であり、少なくとも形式上は一般的なオーナー企業よりもより高度なガバナンス体制が確立されていたはずなのに、です。

実際には、取締役の選任解任議案策定は社外取締役を含めた指名委員会で厳正におこなわれるべきところが、全く機能していませんでした。問題点経営をいち早く察知すべき監査委員会もまたしかりです。各委員会は法の定め通りにそれぞれ半数以上が社外取締役によって占められていながら、社長の問題ある指示命令や不適切会計に関しては実態把握すらされていなかったですから、ほとんど名ばかり委員会設置会社であったと言わざるを得ないでしょう。

ガバナンス強化の根本的解決策にはならないCGコード導入

今回の問題で明らかなように、トップ自身の不正加担は企業全体を不正に巻き込む最もリスクの高い最も慎重に監視すべき問題なのです。その意味では、取締役会こそその監視ができる唯一の監視機関であり、本来は社長の暴走を阻止できるガバナンス最後の砦であると言ってもいいのです。

金融庁はこの6月から、コーポレート・ガバナンスコード(CGコード)を制定し社外取締役の人数増加などを盛り込んだ上場企業ガバナンスの強化を指示しました。しかし時同じくして、先行して社外取締役を多く採用しながらもガバナンス欠如の運営実態により最悪の事態に突き進んでいったのが東芝問題です。日本企業の本当の意味でのガバナンス強化に向けては、様式整備とは別の対策が根本的に必要であることをかえって浮き彫りにしたように思います。
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