収穫祭で生まれるいい循環のかたち
収穫したばかりの小麦を製粉しパンにしたものを食べた人は、麦畑やつくり手に想いを馳せます。それは「小麦粉は農産物である」ということを、あらためて感じる機会となるかもしれません。
米や野菜と異なり、自分のつくる小麦がどんな味のパンになるのかを知らず、おいしいと言われることもなかった農家の人たちは、イベントをきっかけにして食べ手や作り手の声を聞くことができるようになります。
カタネベーカリーの片根さん
「生産者、製粉メーカー、パン職人、お客さんのみんなで小麦のことを話し合えたら楽しいだろうなと思います。その点と点をつなげたら」とカタネベーカリーの片根シェフは語ります。「ぼくたちの世代でどこまでできるのか分かりませんが、確実に次の世代につなげられるような活動をしていきたいと思います」。
「おいしい」とか、「こんな小麦をつくってほしい」と言われたら、農家も製粉所も、もっとおいしい小麦をつくろう、味と香りの残る挽き方をしようと努めることでしょう。「おいしい」は巡り巡って再び食べる人に返ってくるのです。
福岡県うきは市の石井好人さんら生産農家(みずほファーム)、製粉会社(大陽製粉)、杉窪さん(365日)。「チクゴイズミ」と「ミナミノカオリ」の畑。
生産者、製粉メーカー、パン屋さん、消費者。いままで分断されていた関係が収穫祭などのイベントによって繋がり、ひとつのチームとして「おいしい」のバトンを渡し合う循環を始めたなら、それは日本のパンの未来をおいしく楽しい方向へ、変えていくかもしれない。新麦コレクションにはそんな期待がかけられています。
日本のパン職人が日本の小麦を使って日本のパンを焼く時代
365日の杉窪さん
「これからは日本のパン職人が日本の小麦を使って日本のパンを焼く時代です。地域や品種ごとに特性の違う小麦を、その土地の食文化を生かしたパンにして地域の人を喜ばせたい」と語るのは杉窪さん。
ミナミノクロマメ
九州では既に今年の新麦の収穫が始まっており、会場では杉窪さんが焼いた2015年の新麦のパン、熊本産ミナミノカオリでつくられた、その名も「ミナミノクロマメ」が配られました。「粉を味見すると、たんぱくが弱めで若い感じ。きなこのような香りを感じました。これは折込み生地がおいしいのではと思い、黒豆でパン オ レザン風に仕上げてみました」。
当日の会場には新麦コレクションに賛同するパン屋さんからのお祝いのエールとして贈られた、国産小麦のパンが並んでいました。それを80名ほどの出席者で分け合って食べたのです。
パンはみんなでシェア