階層表を作ると、自分の行動傾向が分かる
100点の課題にトライするより、まずは10点の課題から始めてみる
対人関係の不安を感じる人は、「ランキング上位のようなコミュニケーションができたら」と感じながらも、実際の生活では、ほとんどの時間を0点の行為に費やしています。「100点ができないので0点に留まる」という二分割的な行動に陥っているのです。
大切なのは、100点の行為ができるまでには、いくつかのステップがあり、「いまの自分でも、楽に実行できるステップがある」ということを知ることです。
あせりは禁物! 一つのステップにじっくり取り組む
まずは10点の課題のように、いちばん身近にいる「家族」と食卓で流れるニュースなどの話しやすい話題をネタにし、たわいのない会話を繰り返してみることから始めてみましょう。この「10点」の課題にだいぶ慣れてきたら、次は20点の課題、30点の課題、というように段階的に挑戦していきます。ただし、成果をあせってはいけません。無理して外向的な自分を装うと、ストレスから気持ちにリバウンドが生じてしまいます。一つのステップを気負いすぎずにじっくり挑戦し、慣れていくことが大切です。たとえば、20点の「あいさつ」では、最初は「会釈」からスタートし、「小さな声であいさつ」「目を見てあいさつ」というように、ステップ内でも段階的に取り組んでいくといいでしょう。
ステップをいつも確認し、日常の中で意識して実践する
また、同級生や同僚との会話を非常に大きなハードルに感じるなら、次に日常とはかかわりのない場所で、同じ悩みを持つ人と交流する機会を持つといいでしょう。前ページの不安階層表の例では30点、40点の課題に、自助グループやコミュニケーション・セミナーの参加・交流を設定しましたが、自分に合う会に参加し、お互いの話をじっくり語り合う体験をすると、対人交流への自信と会話力がついてきます。この「不安階層表」は、行動療法という心理療法のカウンセリングでよく用いられるツールです。カウンセラーは毎回、宿題として取り組んでいるステップの内容を確認し、達成できたことや困難な場面を振り返りながら、上のステップに段階的に挑戦していけるように、かかわっていきます。このカウンセリングは不安の克服にとても効果的ですが、自分でできそうな人は、この表を見やすいところに掲示して、実践してみてもいいでしょう。