教育資金につづいて結婚・子育て資金の非課税贈与もスタート
2015年4月から4年間の期限付きで始まった、「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」。20歳から50歳までの人が結婚や子育てにあてるための費用を、一定の契約にもとづいて、父母や祖父母から1000万円まで(うち結婚費用については300万円まで)非課税で贈与してもらえる制度です。これは教育資金の一括贈与制度と同様、祖父母など高齢世帯から若い人に資金をシフトして消費を刺激し、経済を活発にしようという狙いと、結婚・出産・育児を金銭面で後押しし、少子化を食い止める狙いがあります。
教育資金の一括贈与制度は2015年3月末時点、契約数が11万8554件(※)と人気を集めています。そのため、新たにスタートした結婚・子育て資金の一括贈与にも注目が集まっています。
(※)「教育資金贈与信託の受託状況(平成27年3月末現在)」一般社団法人信託協会HPより
結婚・子育て資金の一括贈与を利用するには「専用の口座」が必要
この制度を利用するためには、教育資金の一括贈与と同様、まず信託銀行などの金融機関に「結婚・子育て支援信託」といった名称の専用口座を開設する必要があります(教育資金の専用口座とは別に必要)。開設できる口座は1人につき1つだけなので、金融機関はしっかり吟味して選びたいところ。ちなみに外国にある金融機関(日本の金融機関の海外支店を含む)では取り扱っていないようです。
金融機関によって「結婚・子育て支援信託」のサービス内容は異なります。主には以下のとおりです。
1. 資金を引き出せるタイミング
2. 預けられる金額
3. 手数料
4. 独自サービス
それでは、1つ1つ見ていきましょう。
1. 資金を引き出せるタイミング
専用口座に入っている資金をどのように支払いにあてるか、そのタイミングは金融機関によって異なり、いくつかの方法から自由に選べるようになっている金融機関もあります。●請求書払い
結婚式場などの企業から発行された請求書を金融機関に提出し、金融機関から直接結婚式場などの業者に振り込んでもらう。
●領収書払い
結婚式場などの企業に支払ったあと、発行された領収書と、領収書以外の支払いの事実を証明する必要書類等を金融機関に提出して、振り込んでもらう。
●事前支払い
専用口座から事前に引き出し、結婚式場などの企業に支払ったあと、発行された領収書と、領収書以外の支払いの事実を証明する必要書類等を金融機関に提出する方法。
いずれの方法にしても、最終的には請求書や領収書の他にも用途に応じた書類の提出が求められますが、先に資金を窓口やATMで引き出せる事前支払い方式が、この方法の中では最も便利と言えるでしょう。
ただし、長期間にわたって利用する口座となるため、窓口やATMが近くにない場所に引っ越しをした場合でも資金を引き出す手続きが簡単に行えるか、という視点も重要です。
2. 預けられる金額
金融機関によって、いくらから預けられるかが異なります。大手信託銀行は5000円からとしているところが多いですが、1円から預けられるところもあれば、100万円からしか預けられないところもあります。実際には5000円のみ預けるケースは少ないかと思いますが、金融機関を選ぶ際には、最低預入金額は必ずチェックしましょう。
3. 手数料
金融機関への管理手数料や、資金の払い出し手数料などがかからないかも要チェック。現在、結婚・子育て資金支援信託を取り扱っている多くの金融機関で、こうした手数料はかからないようです。ただし、信託銀行などで預けたお金の運用益の一部は、運用報酬としてその利益から差し引かれます。4. サービス
金融機関によっては、各種の特典を用意しているところもあります。結婚・子育て資金の支払に関する企業への振込手数料や、同じ金融機関への振込手数料を無料にする特典を用意する金融機関も。これまで見てきた観点から、お住まいの地域や生活環境にもよりますが、以下の条件を多く満たしている金融機関がよいと考えられます。
●事前に自由に口座から資金を引き出せる
●資金引出しや、領収書や請求書などの書類提出を、窓口以外でも受け付ける
●預けたい金額が最低預け入れ金額を満たしている
●余計な手数料がかからず、振込手数料をタダにするなどの特典がある
使い切れず残った資金は相続税の課税対象になってしまう
結婚・子育て資金贈与制度は、教育資金贈与信託と異なり、贈与者が死亡すると、その時点で使い切れていない資金は相続税の対象に加算されてしまうという大きなデメリットがあります。そもそも、子(孫)の結婚費用や出産費用など必要になったときに都度贈与するのは、この制度を使わなくても非課税となります。教育資金の一括贈与と同様、この制度を使うメリットや意味、目的から検討してみるとよいでしょう。
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