人は“一つの印象”に振り回されやすい生き物
外見の印象だけで「この人はこういう人」と評価するのも「ハロー効果」
この現象を説明する理論に「ハロー効果」があります。「ハロー」とは、神仏像の背に差す“後光”のことを意味します。人はある一つの特徴から、後光のようにその印象にとらわれ、全体的な評価にまで拡げてしまう傾向があります。これを「ハロー効果」と呼びます。
たとえば、いつもきちんとヘアスタイルやメイクを整え、バッグの中や身だしなみも小ぎれいにしている女子を見て、「家でもきちんとしている子なんだろうな」「お嫁さんにしたいタイプだな」と淡い恋心を膨らませている男性は少なくありません。ところが、現実の彼女の生活は、部屋は“汚部屋”で、洗濯も炊事もすべて“親任せ”。自分の外見を整えることにばかり熱中していて、私生活はガサツそのもの……。残念ながら、現実にはこんな女子も少なくありません。
しかし、そんな現実など想像もできず、外見の「きちんと感」という“後光”だけに強く印象づけられ、彼女のすべてを「きちんとした子」と評価してしまうのが、ハロー効果なのです。
“悪い後光”に惑わされて評価をしていませんか?
ハロー効果による心理効果は、ネガティブな印象でも用いられます。冒頭にお伝えしたように、「あの子はダメな子」「あの部下はデキない奴」といった“悪い後光”に振り回されるのも、ハロー効果です。たとえば、何度注意をしても忘れ物をしてくる、おしゃべりばかりでちっとも授業に集中しない、赤点ばかりで学習が進まない――学校生活でこんな傾向が見られると、先生は「あの子は何をやってもダメな子」「家でもきちんとしつけられていないのだろう」などと、“悪い後光”でその生徒のすべてを判断してしまうことがあります。これがネガティブなハロー効果です。
またたとえば、営業成績はいつもビリ、気の利いた挨拶一つできない、いつもボーッとしていて行動が遅い――こうした部下を見て、「あいつは何をやらせてもデキない」「どこに行っても使えないだろう」などと、やはり“悪い後光”でその部下のすべてを判断してしまう上司もいます。これもネガティブなハロー効果です。
次のページでは、ネガティブなハロー効果に振り回されないために必要なことをお伝えします。