本当にこれが「あれ」なのか?!
一見何か想像できないと思いますが、これはT・MBHが新たに発売した携帯用靴べらで、その名は「蹴菱」。クロコダイルを使用しているにもかかわらず、嫌味なギラツキが皆無なのは流石です。色:黒・ボルドー・ネイビー・オーク・赤・濃紺、税込価格:4万1040円 (T・MBH TEL03-5829-4135)
「蔵前」とか「浅草橋」なんていう地名を聞くと、つい数年前までのイメージは例えば「問屋さん」とか「昔、国技館があった場所」ではなかったでしょうか。ところがところが、ここ数年でそれがジワジワと化学変化を起こしています。下町の雰囲気が色濃く残る古い街並みの中に、若い人たちの鋭い感性が冴え渡るお店がポツポツ増えているからです。
今回ご紹介するT・MBHのアトリエもこの蔵前エリアにあって、実はそんな動きの先頭バッター的役割を担ったのかもしれません。T・MBHは革小物司・岡本拓也氏が率いる、縫いは勿論のこと全工程が手作業で作られる小物を中心とするレザーブランドで、つまりその名は”Takuya Made By Hand”の略。紳士靴以外にも革製品全般がお好きな方なら正に知らなくてはモグリの存在で、特に万年筆など筆記具に関心が高い読者の方なら、私が申し上げなくても”IBUSUKI”と言う名のハードペンケースは、いつかはオーダーしたい憧れの存在のはずです。そんなT・MBHの岡本氏から先日の朝、電話が掛かって来ました。
「お待たせしました飯野さん、遂に靴好きの方のためのアイテム、完成しました!」
一見普遍的な表情ながら、革新的なアイデアや技法がぎっしり詰まったアイテムばかりの彼の作品ですから、ええ、気になって気になって仕方なくなってすぐに蔵前に向かいましたよ。そしてその製品を見るなり、私、絶句しました。
「ああまた、やられた……」
だって、この一枚の小さな板が「靴べら」だって言うのですから!
こちらはエキゾチックレザー入門には最適なリザードを用いたもの。革の材質や色がどうであれ縫い糸の色には高貴な紫を使用し、日本の美意識をさりげなく主張します。色:青・深緑・ピンク・黄色・焦げ茶・黄緑・赤・グレー、税込価格:2万7000円(T・MBH TEL03-5829-4135)
ということで、次のページではなぜこの形なのかから、まず迫ってみます!