楽曲にはやはりひばりさんの歌が使用されるのでしょうか?
リン>ニューヨークの作曲家にお願いして、ひばりさんの曲と曲の間をオリジナルの曲でつないでもらっています。ひばりさんの曲が次々と流れるのではなく、最終的に全てがつながって大きなひとつの曲になる形です。また舞台上には上下左右に稼働するスクリーンを設置し、そこにひばりさんの映像を映したり、ときには全面に投影したりと、とてもエキサイティングなステージになっています。
久保>ひばりさんの曲を編集したり、つなぎ合わせたりと、今まで誰もやったことのない挑戦をしています。ひばりさんの人生をバレエ化するのはこの作品が初めてですが、おそらく日本人が振付けていたら上手くいかなかったのではないでしょうか。やっぱり日本人はひばりさんに対する固定概念がありますからね。だから、今回僕はあくまでプロデューサー役。リンさんをサポートする立場に徹するようにしています。
NBAバレエ団のダンサーに加え、元宝塚歌劇団宙組トップスターの和央ようかさんがナレーター役で出演します。
久保>もともとリンさんの義理の弟さんが、和央さんのご主人であり音楽家のフランク・ワイルドホーンさんと知り合いという縁がありました。彼はワイルドホーンと仕事仲間で、最近ではミュージカル『デスノート』を一緒に手掛けています。
リン>和央さんに“こういう作品をやるけれど、誰か興味がありそうな役者を知らない?”と尋ねたところから、最終的に和央さんが引き受けてくれることになったのです。彼女はガイド役で、語りもするし、いくつかのセクションではひばりさんの映像とデュエットしながら歌も歌います。彼女が歌うのは『愛燦燦』。以前何かのステージで歌ったことがあるらしく、一度カラオケで歌ってくれました(笑)。
彼女が語るテキストには、ところどころひばりさんが生前語った言葉を使います。例えばお父さんが亡くなったとき、“あなたの奥さんを取ってしまって申し訳なかった”と、とても美しいスピーチをしている。彼女が実際語った言葉を用いることで、より物語に深みが加わればと考えています。
和央さんも多少動きはありますが、彼女はあくまでも語り部の役。ひばりさんの人生はダンサーたちが表現します。具体的なひばりさんの役はふたつのシーンで描いていて、ひとつは9歳のときにオーディションを受けたときのシーンと、もうひとつは塩酸をかけられたときのシーンです。それは子役とダンサーが演じます。