フィンランド/フィンランドの観光

フィンランドの名画と名景が堪能できる街、マンッタ(2ページ目)

決してまだ知名度は高くないけれど、アートの好きな旅行者たちに昨今絶大な評価を受けている注目の街、マンッタ。フィンランドの原風景と呼べる美しい森と湖に囲まれた小さな街には、かつて製材工場を誘致して莫大な富を築いた富豪一族が熱心にコレクションし続けた、国内の名だたる芸術家たちの作品を収蔵する巨大な私設美術館や博物館があります。タンペレなどから一足伸ばして、屈指の名画と美しい自然に酔いしれませんか?

こばやし あやな

執筆者:こばやし あやな

フィンランドガイド


湖畔にたたずむ新旧それぞれの贅沢美術館で、
フィンランド屈指の名画を心ゆくまで観賞しよう!

美術館群

向かって右に見えるのが、旧邸宅の内部を改装して展示会場としているイェスタ美術館、左側の木造のモダンな建物が、2014年夏にオープンした美術館新館のイェスタ・パヴィリオン

イェスタ・セーラキウス美術財団がマンッタ地区内に所有する展示施設は、全部で3箇所。工場創立者の名を冠した歴史博物館グスタフと、もともとセーラキウス一族の生活空間であったレンガ造りの邸宅の内部を改装して美術展示会場に作り変えてあるイェスタ美術館、そして後付の廊下によってイェスタ美術館とつながっており、いわば美術館の新館にあたる、2014年夏にオープンしたイェスタ・パヴィリオンです。
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アクセリ・ガッレン=カッレラの人気作のひとつ『風の中の少女』もここで見られる【画像提供:イェスタ・セーラキウス美術財団】


このうち、財団の長年のコレクションの賜である美術品がこれでもかと贅沢に見られるのが、イェスタ美術館とパヴィリオン。巨匠アクセリ・ガッレン=カッレラの代表作の数々を始め、ヒューゴ・ジンベリ(Hugo Simberg)、エーロ・ヤルネフェルト(Eero Erik Nikolai Järnefelt)、ヘレン・シャルフベック(Helene Schjerfbeck)、ワルター・ルーネベリ(Walter Runeberg)などなど、フィンランド美術界の巨匠として名を連ねる芸術家たちの名作が収められており、時期によって随時配置換えされながら公開されます。また、美術財団のコレクションは財団最盛期(19~20世紀)の国内芸術家たちの作品だけにとどまらず、国外の中世以降の作品や、近年では現代美術の収集や展示にも力を入れています。

イェスタ美術館のほうは、展示作品だけでなくセーラキウス一族のアートに囲まれた豊かな暮らしぶりがうかがえるのも魅力。当時のまま保存されている外観の見事な木彫の扉や、旧図書室の細やかな天井画、部屋いっぱいに心躍る絵が描かれた地下のワインセラーなども、展示作品と合わせて必見です。また、セーラキウス一族の肖像画や胸像、さらに一族が富を築くきっかけとなった地元の木材工場の建物や労働者たちの様子を描いた作品なども多く残されているので、こうした作品から街の歴史や営みを垣間見ることもできます。

2014年にオープンしたパヴィリオンは、一日中でもくつろげる心地良い空間

外観

木材をふんだんに使った外観は、大きな窓に緑の美しい中庭やイェスタ美術館の旧邸宅が映り込むようになっている

イェスタ美術館のそばにあって、時代錯綜してしまいそうなくらいスタイリッシュな外観に目を奪われる新館のパヴィリオンは、2010年に開催された設計競技で、なんと579通もの世界各国からの応募のなかから選ばれたスペインの設計チームによるデザインが実現し、2014年に竣工してオープンしました。製材業で街興しをしてくれた一族に敬意を払って木材をふんだんに使ってあり、館内の大きなスリット窓からは中庭の古い木々や湖畔の風景を眺めて和むこともできるとても居心地の良い建物です。

展示室

天井の高い展示室では、絵画だけでなく立体作品もダイナミックに展示される

敷地はなんと5700平方メートルにも及び、高さ17メートルもの巨大空間がある広々ゆったりとした展示室だけでなく、財団の事務所や料理が大変美味しいと評判のカフェレストラン、そして講義やコンサートにも使える多目的空間なども兼ね備えています。パヴィリオンのほうでは現代美術を中心とした企画展がメインとなり、イェスタ美術館と合わせて鑑賞すると、建物のコントラストと同様、まさにさまざまな時代を象徴する美術を一日のうちに贅沢に味わうことができるのです。

 

〈DATA〉
イェスタ美術館/イェスタ・パヴィリオン(Serlachius-museo Gustaf/Gösta Paviljonki)
住所:Joenniementie 47, Mänttä
TEL:+358 (0)3 488 6800
開館時間:9月1日~5月31日は火~日曜11:00~18:00、6月1日~8月1日は毎日10:00~18:00
休館日:祝日および9月1日~5月31日の月曜日
入館料:8ユーロ、学生5ユーロ、18歳未満は無料(イェスタ美術館、パヴィリオン、グスタフ博物館の3館共通)

工場の見える湖畔にたたずむグスタフ博物館は、
家族連れで楽しめる仕掛けいっぱいの郷土史博物館

エントランス

グスタフ博物館のエントランス・ロビーでは、当時の壁画とモダンな家具がマッチ

イェスタ博物館から少し離れた別の小さな湖のほとりにあるのは、木材工場の創業者の名前を冠したグスタフ博物館。建物自体は1934年に作られた、工場のかつての事務所でした。一族の後代が、この建物をなにか有益な文化事業に活用できればと考えた末にオープンしたのが、マンッタや、マンッタ同様木材産業で発展を遂げていった周辺地域の歴史や生活文化を紹介する郷土史博物館でした。

グスタフ展示

リアルなつくりのジオラマの数々も見もの

館内では、工場創立時からの企業や街の歴史をたくさんのジオラマや写真で紹介したり、実際に前世紀に地域の工場で作られていたトイレットペーパーや紙ナプキンなどの製品を並べていたりと、ビジュアル重視のユニークな展示が目白押し。子供でも飽きずに楽しめる雰囲気になっています。もちろん、一族が所有していた、当時のさまざまな調度品やコレクションも並んでいます。入場券も美術館との共通チケットになっているので、アートだけでなくぜひローカルな郷土文化の世界も堪能してください!

 

外観

工場の目と鼻の先に位置する白い近代建築

〈DATA〉
グスタフ博物館(Serlachius-museo Gustaf)
住所:R. Erik Serlachiuksen katu 2, Mänttä
TEL:+358 (0)3 488 6800
開館時間:9月1日~5月31日は火~日曜11:00~18:00、6月1日~8月1日は毎日10:00~18:00
休館日:祝日および9月1日~5月31日の月曜日
入館料:8ユーロ、学生5ユーロ、18歳未満は無料(イェスタ美術館、パヴィリオン、グスタフ博物館の3館共通)

最終ページでは、マンッタ地区内の移動手段やマンッタへのアクセスについてチェック!

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