駄菓子屋さんの「きなこ棒」
子どもの頃に大好きだった駄菓子、きなこ棒。幼い頃は意識していなかったけれど、黒砂糖と水飴ときな粉だけで作るきなこ棒は甘さ控えめでヘルシー。お財布にも優しいとあって嬉しいこと尽くしです。錦糸町にその工場があると知り、早速訪ねてきました。「棒きなこ当(ぼうきなこあたり)」の「西島製菓」
錦糸町から歩いてすぐの場所にある「西島製菓」。お店の近くまでくると、きなこの甘い香りがふんわりと漂ってきます。昭和33年の創業以来、「棒きなこ」ひと筋。箱には「どりこ飴本舗」の「棒きなこ当」とあり、同店を「どりこさん」と呼ぶ人もいるそうですが、残念ながら名前の由来は伝わっていないのだそうです。
現在お店を守るのは、この道30年になる2代目の西島誠さん。1日に最大5万本のきなこ棒を作っています。
看板は「ただいま小売りできます」の目印
同店のきなこ棒は、円柱、もしくは四角い形の生地に楊枝を刺したもの。「きなこ棒」ではなく、「棒きなこ当」が商品名です。どちらも1箱50本入りで、うち10本は楊枝の先端を食紅で染めた「当り」です。
当りが出たらその場でもう1本もらえるのは、駄菓子屋さんのばら売りの場合のみ。箱買いの場合は、もちろんお店での交換はできませんので、家族やお友だちとお楽しみください。
西島さんによれば、「95%は卸」とのことですが、工場で作業をしているときは、1箱から小売りもしてくれます。外に看板が出ているときは、小売りをしている合図なので、扉を開いて声をかけてみてください。タイミングが合えば、出来立ての柔らかい「棒きなこ」の味見もさせてもらえます。
「棒きなこ当」ができるまで
漠然と「オートメーション化された工場で大量生産されているのでは」と思っていたのですが、工場を訪ねてビックリ。手作業によるところの大きい、工房のような場所で作られていました。
材料は「水飴・黒糖・きなこ」のみ。その他原材料に記載されている食用赤色102号とは、当りの楊枝の先端を染める食紅のこと。生地には混ぜてありません。
作り方もシンプルで、まずは水飴と黒糖で作った黒蜜を、きなこに混ぜて練り上げます。生地を成形機に移し、円柱、もしくは四角い形に押し出して、楊枝を刺してカットしたら、できあがりです。
鍋の前を離れられないのはもちろんのことながら、成形機にもつきっきりで作業をしている西島さんの姿に、「棒きなこ」は手作りなのだと確信。
成形機に少しずつ生地を移し、円柱、もしくは四角い型をはめ込みググッと押し出す。機械で楊枝を刺したら、長さが均一になるよう調整してカットする。「棒きなこ」を受けたばんじゅう(箱)がいっぱいになったら台に移す。この作業を繰り返します。
工程はシンプルですが「棒きなこ」を毎日同じ状態に仕上げるのは難しく、室温や湿度などに応じて黒蜜の加減や生地の水分量を毎日変え、成形機が生地を押し出すスピードなどを細かく調整しながらの作業です。
できたての「棒きなこ」を試食させていただくと、まだ柔らかさがありほど良い弾力。きなこの甘い香りと黒糖のコクがじんわりと口に広がります。思い出の「棒きなこ」よりもさらに甘さが控えられているように感じられ、何本でも食べられそうです。出来上がってから時間が経ったものでも、電子レンジで数十秒温めると出来立ての食感が楽しめるのだそう。ぜひお試しください。
身体に優しい「駄菓子」
「駄菓子」は「駄」という字が使われていて、何だか体に悪そうです。でも、そもそも駄菓子とは、かつては安価だった雑穀や黒糖、水飴などを使ったお菓子のことで、伝統的な駄菓子には、身体に優しいものがたくさんあるのです。
黒蜜できなこを練り上げる「棒きなこ」も身体に優しい駄菓子の1つ。美味しくてヘルシー。なおかつきなこの香ばしさや黒蜜のコクがコーヒーともよく合うので、西島製菓さんにお邪魔して以来、毎朝、家族の食後のコーヒーに数本添えています。当りが出るとその日1日良いことがありそうで、嬉しくもあるのです。
<店舗情報>
■ 「どりこ飴本舗 西島製菓」
所在地:東京都墨田区錦糸4-4-6
JR「錦糸町」、または東京メトロ半蔵門線「錦糸町」駅より徒歩数分
電話&FAX: 03-3623-5701
営業時間:7:30~15:30/18:00~21:00
定休日:不定休(看板が出ているときは小売りをしています。)
地図:どりこ飴本舗 西島製菓