「それやめて!」と何度叫んでも、やめてくれない1歳児
やんちゃな1歳児に付き合っていると、親はヘトヘトに!
手に持った物をそこら中に放り投げる、箱を空にするまでティッシュを引っ張り出す、少し高いところによじ登り、飛び降りる――こうした行動を見るたびにお母さんはハラハラ、イライラ……。「どうして同じような行動ばかり繰り返すんだろう」「危ない! やめなさい!って何度も言ってるのに」――こんなやりきれなさで、いっぱいになってしまうのではないでしょうか?
このように、1歳頃の子どもの行動は大人にとっては謎だらけなのですが、子どもがその行動をするには、もちろん理由があります。今回は、この1歳台の子どもの心理について、発達心理学に基づいてお伝えしましょう。
「同化」と「調節」を繰り返し、子どもは世界を理解する
発達心理学者のピアジェは、子どもは「同化」と「調節」を試みながら、外界を理解していくと説明しました。たとえば、子どもはボールで遊ぶうちに、「ボールは投げると跳ね返ってくる面白いおもちゃ」といった認知の枠組み(シェマ)をつくりあげます。そして、他の物もこのボールと同じように解釈し、色々な物を投げてみようとします。このように、物事を一つの認知の枠組み(シェマ)の中に取り入れ、そのシェマに沿って理解しようとすることを「同化」と言います。
そして、この同化の試みによって「すべての物がボールのように弾むわけではない」と、新しい知識を得てシェマを修正していきます。この作業を「調節」と言います。このように、幼い子どもたちは、同化と調節を繰り返しながら日々“実験”を試み、外界を理解しているのです。
しかし、それを見ているお母さんたちは、子どもがやたらと物を落としたり、ぶつけたりするので、気が気ではありません。既に「堅い物は落とせば割れる」というシェマを確立している大人には、子どものこうした心理を理解しにくいため、「うちの子、乱暴なのかしら?」と要らぬ心配をしてしまったりします。
こうした疑問や苛立ちに襲われた場合、「自分自身も、『堅い物は落とせば割れる』というシェマを獲得するまでには、子どもと同じように実験を試みてきたのだ」と考えてみましょう。すると、子どもの行動を少し冷静に、共感的に理解することができるかもしれません。次のページでは、1歳児の繰り返し行動についてお話します。