ストレス/家庭・育児・嫁姑・義理づきあいのストレス

「やりたい放題」の1歳児の心って、どうなってるの?

手当たり次第に物をほうり投げたり、何十回も同じことを繰り返したり……。1~2歳児の子どもの心って、いったいどうなっているのでしょう?発達心理学を元に、1歳児の心の謎を紐解いてみましょう。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

「それやめて!」と何度叫んでも、やめてくれない1歳児

水飲み場で遊ぶ子ども

やんちゃな1歳児に付き合っていると、親はヘトヘトに!

子どもが1歳台の頃は、子育て期のお母さん方が最もストレスを抱えやすい時期の代表です。この時期の子は、何十回も同じ行動を繰り返したり、危ないことにも気がつかず、平気で思いがけない行動をしたりします。

手に持った物をそこら中に放り投げる、箱を空にするまでティッシュを引っ張り出す、少し高いところによじ登り、飛び降りる――こうした行動を見るたびにお母さんはハラハラ、イライラ……。「どうして同じような行動ばかり繰り返すんだろう」「危ない! やめなさい!って何度も言ってるのに」――こんなやりきれなさで、いっぱいになってしまうのではないでしょうか?

このように、1歳頃の子どもの行動は大人にとっては謎だらけなのですが、子どもがその行動をするには、もちろん理由があります。今回は、この1歳台の子どもの心理について、発達心理学に基づいてお伝えしましょう。

「同化」と「調節」を繰り返し、子どもは世界を理解する

発達心理学者のピアジェは、子どもは「同化」と「調節」を試みながら、外界を理解していくと説明しました。

たとえば、子どもはボールで遊ぶうちに、「ボールは投げると跳ね返ってくる面白いおもちゃ」といった認知の枠組み(シェマ)をつくりあげます。そして、他の物もこのボールと同じように解釈し、色々な物を投げてみようとします。このように、物事を一つの認知の枠組み(シェマ)の中に取り入れ、そのシェマに沿って理解しようとすることを「同化」と言います。

そして、この同化の試みによって「すべての物がボールのように弾むわけではない」と、新しい知識を得てシェマを修正していきます。この作業を「調節」と言います。このように、幼い子どもたちは、同化と調節を繰り返しながら日々“実験”を試み、外界を理解しているのです。

しかし、それを見ているお母さんたちは、子どもがやたらと物を落としたり、ぶつけたりするので、気が気ではありません。既に「堅い物は落とせば割れる」というシェマを確立している大人には、子どものこうした心理を理解しにくいため、「うちの子、乱暴なのかしら?」と要らぬ心配をしてしまったりします。

こうした疑問や苛立ちに襲われた場合、「自分自身も、『堅い物は落とせば割れる』というシェマを獲得するまでには、子どもと同じように実験を試みてきたのだ」と考えてみましょう。すると、子どもの行動を少し冷静に、共感的に理解することができるかもしれません。次のページでは、1歳児の繰り返し行動についてお話します。

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