アール・カーペンターundefined英国サウスハンプトン出身。地元の劇団で研鑽を積んだ後、ロンドンに進出。『オペラ座の怪人』怪人『レ・ミゼラブル』ジャベールをはじめ、『美女と野獣』『サンセット大通り』『ヨセフと不思議なテクニカラー・ドリームコート』『We Will Rock You』等の大作ミュージカルで主要な役を演じている。(C)Marino Matsushima

アール・カーペンター 英国サウスハンプトン出身。地元の劇団で研鑽を積んだ後、ロンドンに進出。『オペラ座の怪人』怪人『レ・ミゼラブル』ジャベールをはじめ、『美女と野獣』『サンセット大通り』『ヨセフと不思議なテクニカラー・ドリームコート』『We Will Rock You』等の大作ミュージカルで主要な役を演じている。(C)Marino Matsushima

アイルランド出身のコルム・ウィルキンソンと言えば(正確には現地発音では“コラム”ですが)、1972年に『ジーザス・クライスト・スーパースター』ユダ役で彗星のように現れ、以降『エビータ』『レ・ミゼラブル』『オペラ座の怪人』等で主演を重ねた、ミュージカル史上、最大のスターの一人。驚異的なその高音に加え、ロック魂とアイルランド音楽の「味わい」をブレンドしたそのユニークな歌唱は、演じる諸役に格別の深みを与え、観客を魅了してきました。ミュージカル初心者にとっては映画版『レ・ミゼラブル』で、バルジャンの人生を変えた司教を演じたあの人、と言えばピンとくるかも?!
映画版『レ・ミゼラブル』で司教役を演じたコルム・ウィルキンソン

映画版『レ・ミゼラブル』で司教役を演じたコルム・ウィルキンソン

その彼の、最初で最後となるかもしれない今回の来日コンサートでは、『レ・ミゼラブル』『オペラ座の怪人』等の持ち歌はもちろん、母国アイルランドの民謡も披露。さらに彼の指名により、“世界一のジャベール役者”と言われる英国人俳優、アール・カーペンターの参加が決定! 時を超え、初代にして至高のバルジャンVS当代きってのジャベールの共演が実現します。

人間味あふれるコルムに対して、アールはやや硬質の二枚目。キャラクターは異なるものの、ロイド=ウェバー作品、そして『レ・ミゼラブル』と、コルムと同じ系統の作品でスターとなったアールは、どんな方なのでしょう。現在、ロンドンで『オペラ座の怪人』タイトルロールを演じている彼をHer Majesty’s劇場楽屋に訪ね、“怪人”や“ジャベール”役、そしてこれまでの歩みやコルムとの共演について、たっぷりお話いただきました!

『オペラ座の怪人』ファントムは性的な愛ではなく、
才能への愛に突き動かされる人物

――現在、ここロンドンで『オペラ座の怪人』に主演されていますが、あなたの演じる“ファントム”はどんな人物ですか?

「うわ、最初から核心だね(笑)。演じる人の数だけ“ファントム”像があるけれど、僕は多くのファントム役者とは異なる意見を持っているかもしれない。僕にとってのファントムとは、誰かの才能……その声の美しさに、心から惚れている人物。そして純粋すぎて、その愛とその人自身への愛を混同してしまうんだ。告白の得意な人物ではないから(笑)、その愛をどう証明したらいいかもわからない。とても苦悩に満ち、哀しく、誤解されている人物だと思う」
『オペラ座の怪人』上演中のHer Majesty's劇場。現在の建物は1897年築。(C)Marino Matsushima

『オペラ座の怪人』上演中のHer Majesty's劇場。現在の建物は1897年築。(C)Marino Matsushima

――才能への愛が第一で、性的な愛はその次と言うことですか?

「ファントムの中に、クリスティーヌに対する性的な愛は無いと思う。作中、一か所だけそれらしき部分があるけれど、僕が思うに、ファントムは彼女を、類稀な声の持ち主であり、彼の書いた音楽を歌うことのできる唯一の存在だととらえているんだ」

――ロイド・ウェバーが書いた続編の『Love never dies』という作品では性的な愛が重要なモチーフとなっていますが……。

「友人のラミン(・カリムルー)が出ていた作品だからもちろん観て知っているけれど、僕にはあの作品はよくわからなかった。僕の理解では、ファントムとクリスティーヌの間には“例の出来事”のチャンスは一瞬たりとも無い筈なのだけど……。あの作品の中ではつじつまがあっているようだから、僕は続編というより“全く別の作品”としてとらえているよ」

――『オペラ座の怪人』英国版は2012年に演出が変わったのですね。

1幕開演前の劇場内。SNSでの露出を推奨しているらしく、案内係の男性が「開演前の今だけ、自己顕示欲の強いお客様はどうぞお写真をお撮りください」と触れて回っていた。

開演前の劇場内。観客によるSNSでの口コミが推奨(期待?)されているらしく、案内係の男性が「開演前の今だけ、自己顕示欲の強いお客様はどうぞこのセットをバックにお写真をお撮りください」と触れて回っていた。

「ツアー版のためにプロデューサーのキャメロン・マッキントッシュがかなり変えたけれど、“素晴らしい声に対する盲目的な愛”という骨子は変わっていないと思うよ。“Music of the Night”というナンバーは(ラブソングというより)“歌のレッスン”としての側面がより強調され、より興味深くなったと思う。クリスティーヌに、音楽に潜む奥深さを理解させるナンバーなんだ。あとはメークが少し変わったりしたけど、根本的な部分は変わっていない。思えば『オペラ座の怪人』は非常に『美女と野獣』的な物語だね。共通点がたくさんある、と僕は思う」

――『サンセット大通り』『エビータ』にも出演されていらっしゃるので、おそらくあなたはロイド=ウェバーのお気に入り役者のお一人なのだと思いますが(アールさん「ハハハ」と大笑い)、彼の音楽をどうとらえていますか?

「アンドリューの音楽は物語性が高く、比類ないものだと思う。演じ手にとって必要なものはすべて楽譜の中にあるんだ。まるで映画音楽のようだね。映画音楽って感情にしても何にしても、物語を語る手助けをするものでしょう? アンドリューはそれがとても巧い。だから演じる側は容易に物語が何を語ろうとしているかがわかるし、そこにどう自分が入って行けばいいかもわかるんだ。ただ、週に8回歌うとなるとタフな音楽であることも確かで、サバイバルしてゆくため、技術的な手段を見つけなくてはいけない。1週間のどの曜日に来てくれるお客様にも同じように届けるようにしなくてはいけないからね」

*次頁ではいよいよジャベールについて伺います!