自分らしい生き方に悩む青年期は「モラトリアム」の時期

本を読む大学生

青年期はアイデンティティを模索する時期。「自分らしい生き方って何だろう?」と考え始める


10代後半から20代前半頃は、心にモヤモヤを抱えやすい青年期。「自分は何のために生きているんだろう?」「私らしい生き方って何だろう?」と自問し、自分らしい生き方を模索する時期です。日本では、ちょうど大学生の時期にあたります。

心理学者のE.H.エリクソンは、自分らしさ、自分らしい生き方の自己イメージを「アイデンティティ」(自我同一性)と呼びました。そして、青年期の人生課題は「アイデンティティの確立」にあると説きました。

この青年期に、若者は揺れ惑います。周りから「この道を進めば間違いない」と言われた道を素直に歩んできた人も、「これが、本当に自分にとっての正しい道だったのだろうか……」と迷い始めます。そして、自分なりの価値観の中から、本当に自分が志したい道を選び直そうとします。そのため、それまでは順調に歩んできても青年期になると混乱し、悶々と考え始める人が続出するのです。

このように、この時期の若者は、アイデンティティの確立に取り組み、大人としての社会的責任を果たすことを猶予された期間であるため、「モラトリアム」(猶予期間)と呼ばれています。
 

就職面接で問われるアイデンティティ

企業での採用面接

面接で受ける質問は「アイデンティティ」の質問。しっかり答えるために必要なこととは?


若者はこのモラトリアムの間に、どっぷりと自分自身について考えます。こうして社会の中での自分らしさ、すなわちアイデンティティをつかむことによって、社会人として社会に貢献していきます。そのため、このモラトリアムの時期に模索した経験は、就職活動においてとても重要なものになります。

その証拠に、大学生の新卒採用面接で問われる多くの質問が、アイデンティティにかかわるものです。「あなたの強みは何ですか?」「大学時代に打ち込んだことは何ですか?」「なぜわが社を選んだのですか?」「この仕事につきたいと思った理由は何ですか?」――これらの質問はすべて、アイデンティティについて問うています。

これらの答えから、面接官は応募者のアイデンティティが仕事への思いとどのように関連しているのかを読み取ります。単に「部活で部長をやっていました」「成績はSが○つです」というように「実績」を答えているだけでは、自分のアイデンティティを十分に説明できていません。大切なのは、「自分が取り組んできたこと」と「アイデンティティ」との関連を、相手に伝わるように語れているかどうかなのです。

学生は、アイデンティティ形成のために、社会人になる期間を猶予されている存在です。その社会からいただいた猶予期間を無為に過ごしてしまうと、アイデンティティについての質問にうまく答えられなくなってしまいます。一方、華やかな履歴ではなくても、アイデンティティをつかむまでの紆余曲折が一つのドラマとしてまとまっていれば、面接官には好印象で受け止められます。
 

アイデンティティに悩まない人はいない

ところで、この青年期にアイデンティティの模索を経験せず、早々に自分の生きる道を決める人もいます。こうしたタイプを「早期完了」と言います。

たとえば、「親が開業医なので自分も医師になり、病院を継ぐのが自分の定め」「親の勧める縁談で結婚をして、家を継ぐことが決まっている」――このように、青年期のアイデンティティの模索を経験せず、自分の生き方を固めている方は、早期完了の好例です。

こうした方々は、はたからは「迷いがなくていいな」と思えるかもしれません。しかし、こうした人は、青年期より若い時期にアイデンティティの模索を経験し、若くして自分の運命を受け入れたのかもしれません。あるいは、後の人生でアイデンティティの揺らぎを感じていく可能性もあります。つまり、悩むことなく自分の職業、自分の生きる道を決め、歩んでいる人などいないということです。
 

「モラトリアム」期に取り組みたい3つの課題

カフェでパソコンに向かう男性

アイデンティティの模索には深く学ぶこと、そして人とのかかわりから得る気づきが重要になる


青年期のモラトリアムはとても苦しい時期ですが、建設的な人生を築いていくために必要なものです。この時期に、アイデンティティをつかむために、たくさんの試行錯誤を重ねるほど、自分が納得する生き方をつかむチャンスが広がります。

では、アイデンティティをつかむために必要なことは、どのような行動でしょう。正攻法はありませんが、次の3点にぜひトライしてみてください。

1. 人生について深く考えさせてくれる本を読む
哲学、心理学、文学、宗教、こうした分野の書物の中には、アイデンティティの確立のヒントとなる言葉や考え方が詰まっています。ぜひ、図書館で本をめくりながら、気になる本をじっくり読んでみましょう。

専門書をじっくり読めるのも、モラトリアム期間を過ごす人の特権です。気になる言葉や考え方を見つけたら、さらに深く知るためにも、大学の一般教養課程や課目履修等で学んでみるのもよいでしょう。

2. 専攻している学問をしっかり学び、ピンとくるものを深く学ぶ
現在専攻している学問にも、アイデンティティが関係しているはずです。なんとなく選んだ学科であっても、他の選択肢を捨ててその道を選んだのですから、アイデンティティにつながる意味があるはずです。

「なぜそれを学ぼうと思ったのか」を自分に問いながら、専攻している学問にしっかり取り組んでいきましょう。そして、一つでもピンときたものがあれば、それをぜひ深めてみてください。そこにアイデンティティの答えが見つかる可能性大です。

3. 人と関わる課外活動の中で、気づきを得る
アイデンティティを模索するためには、さまざまな経験から気づきを得ることが重要です。2.の中核となる学問のほかにも、趣味やサークル、アルバイトなどの課外活動に1~2つ程度は深くかかわり、そこから気づきを得てみましょう。

特に課外活動では、学生同士、仕事仲間などの他者とのかかわりによって得る気づきが、アイデンティティを知る重要な手がかりになります。ぜひアンテナを高く張って、自分が人と関わる活動の中で何を学んでいるのかを見つめていきましょう。

このように、モラトリアムの中でアイデンティティを模索し、自分らしい答えを探るのが青年期の課題です。ぜひ、自分の課題とじっくり向き合い、自分らしい答えを見つけていきましょう。
 
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