「モラトリアム」とは…自分らしい生き方に悩む青年期
青年期の若者は、「自分は何のために生きているんだろう?」「私らしい生き方って何だろう?」と自問し、自分らしい生き方を模索します。
この青年期に、若者は揺れ惑います。親や教師から勧められるがままに進路を歩んできた子も、「これが本当に正しい道だったのだろうか……」などと迷い始めます。そして、「本当に自分が歩みたい道っていったいなんだろう?」となどとぐるぐる考え、選び直そうとしたりします。
このように若者たちが生きる20歳前後の年齢は、自己を確立するための重要な時期であり、責任ある大人になるために心の準備をする期間でもあるため、「モラトリアム」の時期(猶予期間)と呼ばれています。
若者はモラトリアムの時期に、自分自身について深く考えます。こうして社会の中での自分らしさ=「アイデンティティ」を模索することで、自分自身を社会にどう生かしていくのかを考え、自分の存在意義を見出そうとします。
就職面接でもしばしば問われる自分らしさ=「アイデンティティ」
モラトリアムの時期に模索したことは、就職活動においてとても重要な問いになります。その証拠に、大学生の新卒採用面接で問われる多くの質問が、アイデンティティにかかわるものです。
「あなたの強みは何ですか?」「大学時代に打ち込んだことは何ですか?」「なぜわが社を選んだのですか?」「この仕事につきたいと思った理由は何ですか?」――これらはすべて、アイデンティティについて質問しているのです。
「サークルで部長をやっていました」と肩書だけを語ったり、「SとAが○つあります」などと実績を自慢しているだけでは、アイデンティティを説明したことにはなりません。大切なのは、学生時代に取り組んだ経験が、自分らしさ=「アイデンティティ」とどのように関連しているのかをいきいきと語れるかどうかなのです。
「モラトリアム」の時期に取り組みたい3つの課題
モラトリアムは苦しいものですが、建設的な人生を築いていくために必要なものです。この時期、アイデンティティをつかむために試行錯誤を重ねるほど、納得する生き方をつかむチャンスを得られます。
では、アイデンティティをつかむために、何をするとよいのでしょう。「正しい答え」はありませんが、次の3点を参考にしていただければと思います。
1. 人生について深く考察できる本を読む
哲学、心理学、文学、宗教、こうした分野の書物の中には、アイデンティティの確立のヒントとなる言葉や考え方が詰まっています。ぜひ図書館や書店で本をめくりながら、気になる本をじっくり読んでみましょう。
本をじっくり読みながら、人生について深く考察する時間を持てるのも、モラトリアムの時期を過ごす若者ならではの特権です。本の中に気になる言葉、考えさせられる一行を見つけたら、さらに考えを深めるためにも、可能であれば大学内などの関連の講座を履修して、学んでみるとよいでしょう。
2. 専攻している学問をしっかり学び、ピンとくるものを深く学ぶ
今、学んでいる分野は、自分らしさ=「アイデンティティ」につながっているはずです。消去法で選んだ分野であっても、たくさんの選択肢の中から最後にそれが残ったのですから、アイデンティティにつながる意味がどこかにあるはずなのです。
「なぜその分野を学ぼうと思ったのか」を自分自身に問いながら、その分野にしっかり取り組んでみてください。一つでも気になるものがあれば、ピンポイントで学びを深めてみましょう。アイデンティティの答えが見つかる可能性が大です。
3. 人と関わる課外活動の中で、気づきを得る
アイデンティティの模索には、「経験」から気づきを得ることが重要です。学問だけでなく、趣味やサークル活動、アルバイトなどの課外活動に一つは深くかかわり、気づきを得てみましょう。
課外活動では、学生同士、バイト仲間などの「他者とのかかわりによって得る気づき」が、アイデンティティを知る重要な手がかりになります。アンテナを高く張り、他者とかかわる活動の中で自分は何を学んでいるのか、深く見つめていきましょう。
このように、モラトリアムの時期には、自分らしさ=「アイデンティティ」を模索しながら探るのが青年期の課題です。ぜひ、自分自身とじっくり向き合いながら、見つけ出していきませんか?
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