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湯川麻美子『こうもり』インタビュー!(2ページ目)

この春上演を迎える『こうもり』を最後に、ダンサーを引退される新国立劇場バレエ団プリンシパルの湯川麻美子さん。新国立劇場が開場した1997年よりバレエ団に在籍し、18年間に渡りカンパニーを率いてきました。ここでは、ラストステージを控えた湯川さんにインタビュー。作品への想いと決断の理由、今後の展望をお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

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ベラ役を演じる上で一番苦労された点は?

湯川>技術はもちろん、ベラの仕草をオシャレに演じるのが本当に難しかったです。ちょっと肩をすくめてみたり、ウィンクしたり、投げキッスをしたり。それって、日本人には文化的に一番遠い部分じゃないですか。オシャレに見せなきゃいけないけど、なかなか上手くいかなくて……。

二幕のパ・ド・ドゥも苦労しました。あのシーンはメイクラブを表現していて、オールヌードのようなベージュの衣裳を着て、ふたりきりの世界を演じてる。もちろん細かい振りの要求はあるし、そこをちゃんと通った上で、メイクラブだと見えなければいけない。それでいてどろどろの恋愛ではなく、最終的にオシャレに持って行く必要がある。

振りはあっても、細かい仕草はそのひとのセンスに任される部分も多くて、それだけに難しい。フェリさんを見ていると、リハーサルの度に違うことをされるんです。目線の送り方ひとつ、男性との絡み方ひとつ、毎回違う。だけどどれもベラだし、オシャレなんですよね。同じようにはできないけれど、そのなかで自分にはどれが一番しっくりくるのかなって、フェリさんを見ながら研究させてもらってました。

この前、20年ぶりにパリに行ったんです。20年前は若過ぎてわからなかったけど、パリって大人になってからの方が楽しめるんだって気付きましたね。パリでは、『こうもり』の舞台でもあるマキシムに行きました。プティさんがイメージを得たマキシムとはどんな場所なんだろう、せっかくだから最後にベラを踊る前に行こうと思って……。

アール・ヌーボーの装飾が施された空間に、踊るスペースがあって、生演奏が流れてる。お食事に来てるおじいちゃんとおばあちゃんが、そこですごく楽しそうに踊ってるんです。そうか、こういうことなんだと。大人が楽しむ社交場であり、そこで自然と踊り出すひとたちがいる。日本とは感覚が違うんだなっていうのを改めて感じましたね。

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2012年2月「こうもり」 (撮影:鹿摩隆司)


ベラ役を踊るのは今回で5度目ですね。
回を重ねることで変わった部分はありますか?

湯川>いろいろ苦労はあったけど、回を追うごとに年齢的にも実生活も経験が増えるし、ゲームって言われた意味もだんだんわかってきました。ベラのバックグラウンドに入りやすくなってきた気がします。

最初は自分がこの役を果たせるのかというプレッシャーの方が大きかったし、無我夢中で踊った記憶しかなくて。だけど二回、三回と同じ役を演じていると、回を追うごとに見えなかったものも見えてくるし、少し余裕ができるから自分のアイデアも加えていける。

ただ他の作品もそうですけど、やっぱり舞台ってそのときのそのダンサーの全てが出ちゃうんですよね。もちろん舞台の上では役を演じているけれど、そのときの自分が全て投影される。舞台って生ものだから、同じようにするというのはなかなか難しくて、その回その回自分がどういう状況であるかによっても左右されてしまう。気持ちの上でも技術的にも、どんどん上達していればいいなと思うんですけど……。

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2006年「こうもり」 (撮影:瀬戸秀美)



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