『白い劇場』のトレーニングとは?
『白い劇場』稽古場にて
藤田>今回セゾン文化財団のスタジオを2ヶ月間近く貸していただいたので、最初の1ヶ月間はトレーニング期間にあてて。ただトレーニングもやりだすと1ヶ月なんてあっという間で、今は作品づくりが間に合うかなってあせりが出てきたところです(笑)。でも、その場限りではない、共通意識が確実に生まれていると感じています。
藤田さんは僕以上にサドですよ(笑)。“みんな結構へばってますけど?”と言っても、“はい、じゃあもう一回!”って容赦ない。僕は肉体訓練が嫌いで、コツだけ掴んでさっさとやりたいタイプ。でもたぶん藤田さんは不器用だから、数で腑に落としてきたことが彼女の中ではっきりとあるみたい。みんなを見てても、やっぱり器用なひとほど大変そうだなって感じます。器用なひとは頭でできたと思っちゃうけど、それで終わりではなくまだ続くから、自分を保持するために何か考える。不器用なひともやってく内に、ちょっとずつ慣れてきて。いつもワークショップで“動きは数だから!”なんて偉そうに言ってるけど、 数でこんなにひとって変わるんだなって、僕が一番勉強になってます。
数の先にあるものとは?
小野寺>そのときそのひとがどういうモチベーションで歩いているかによって、お客さんもイメージするし、佇まいで空気が変わる。ここが部屋の中だと思えるか、街中だと思えるか、身体と身体で空気をつくれるか、揺らせるのか……、というのが水と油の頃からやってきた面白さ。
それは演劇でいう役をつくる作業だし、ダンスでいう振りを確実に覚えるというタスクと同じ。ただ歩くだけの作業の中にやらなきゃいけない仕事が沢山あるはず。だけど“じゃあ歩いてください”って言うと出来ちゃうんです。それで“出来ました”って言われても、“出来ちゃったね”って言うしかない。 でも実はやるべきことがあるんじゃないかということを、僕も言語化できてなくて。その隙間にお客さんに渡せる物が沢山あるはずだし、自分のカンパニーというのなら、そこはしっかり抑えておきたい。隙間を埋めるという作業を、このカンパニーではもっとこだわりたいと思っています。