ネットワークオーディオとは
ネットワークオーディオとは、主に家庭内のネットワーク(LAN)を利用して、楽曲を楽しむスタイルのシステムだ。NAS(Network Attached Storage)というネットワーク上のハードディスクに数百曲、数千曲もの音楽データファイルを保存しておき、ネットワークプレーヤーに接続して再生する。ネットワークオーディオは、音質の良さ、操作のしやすさなど、これまでのオーディオシステムにはなかった数々の利点がある。たとえば、ハイレゾの再生だ。ハイレゾとは、従来にない高解像度の音源で、通常のCDを超えた高音質な音を再現できる。きめ細やかな音、CDでは再生できない空気感と臨場感を表現することができる。ハイレゾはネット上での配信がほとんどなので、ネットワークオーディオと相性がピッタリだ。
もう1つ高音質な形式としてDSD(Direct Streame Digital)がある。DSDとは、FlacやWavといったPCM系とは違った方式で、PCMより高品質な音場が再現できる。DSDもネットワークで配信されているので、ぜひネットワークオーディオで楽しもう。実際に聞いて見ると絹のような光沢が感じられる。
ネットワークオーディオに必要な機器
いまからネットワークオーディオを始めようと思っているユーザのために、最適な機器を紹介しよう。以下で紹介する機材は、筆者も実際に使ってみたものだ。■ネットワーク環境
インターネットで利用している有線/無線LANのネットワークがあれば、それをそのままネットワークオーディオに利用できる。
具体的な機材としては、有線または無線ルータ/スイッチングハブ/LANケーブル/コンピュータだ。スイッチングハブは、LANポートがふさがっている場合に必要となる。後述のNASに1ポート、ネットワークプレーヤーに、もう1ポート必要となる。また、ハイレゾやDSDといったソースファイルは、ネット配信が基本なのでインターネット回線も必須だ。
■NAS
NASとはネットワーク上のハードディスクだ。オフィスなどで使うビジネス用のNASではなく、音楽配信用サーバ(Twonky Server系やDiXiM Server系)を装備した音楽用のNASが必要だ。お勧めはコストパフォーマンスの高いIO DATAの「Soundgenic HDL-RA2HF」 だ。データの配信はLANのほかにUSBにも対応している。また、今後の主流となるOpenHomeに対応していることも見逃せない。
OpenHomeに対応していると聞く曲を選択するコントロールアプリに純正のfidata Music Appのほか、ESOTERICのSound Stream/LUMINのLUMINアプリ/TEACのHR Streamerなど名だたる操作性のよいコントロールアプリが利用できる。
最高級音楽用NASには、BuffaloのDELAシリーズ、IO DATAのfidataシリーズがある。共にかなり高価だが、耳のよい人にとっては欲しい一品ではある。
■iPad/iPhone/Androidなど
先に解説したコントロールアプリをインストールするためのタブレットやスマホが必要だ。できれば、タブレットのiPadがよい。iPhoneでは画面が小さすぎる。Androidは対応するアプリが限られてくる。アプリは、殆どが無料で利用できる。
■ネットワークプレーヤー
ネットワークプレーヤーは、ネットワークオーディオの中核をなす製品だ。NASからのデジタル信号をネットワーク経由やUSBで受け取り、アナログ信号に変換する。各社からいろいろな製品が発売されているが、ガイドのお勧めはズバリ以下のTEAC NT-505だ。
ガイドは、発売と同時に購入し現在でも利用している。USB入力にも対応しOpenHome対応なので先に紹介したSoundgenic HDL-RA2HFとの相性はバッチリだ。入門者用としては少々高価だが、50万以上の機種と比較しても引けはとらない。もちろん音質も抜群だ。ほかにも以下のような製品がある。店頭で比較視聴してみるとよいだろう。
■リッピングの環境
リッピングとは、手持ちのCDをコンピュータでデジタルファイルに変換することだ。規格は44.1KHz/16bitとハイレゾではないが、よい録音であれば、ハイレゾと同じように楽しめる。規格上は、ハイレゾより劣るが音の良さは規格だけで判断はできないからだ。ネットワークオーディオでCDを聴くには、一旦リッピングして、そのファイルをNASにコピーしてネットワークプレーヤーで再生する。一見面倒な感じがするが、CDと全く同じデータを取り込むことができるので、高音質だ。
また、なんといっても一旦取りこんでおけばCDを出したりしまったりする必要がなく指1本で色々な曲を次々に鑑賞できる。この環境に一度はまると後戻りできない。ガイドもその1人だ。リッピングのためのソフトはいろいろあるが、初心者の方にお勧めするのはおなじみの「iTunes」だ。iTunesを起動してCDをコンピュータのDVDドライブにセットすればリッピングができる。
その際、「編集」→「設定」→「一般」タブ→「インポート設定」ボタンで図のように設定しておこう。リッピングしたファイルは、既定の「ミュージック」フォルダの配下にあるフォルダに保存される。
変換形式には、他にもFlacc/Wavなどいろいろな種類がある。ガイドは、サイズは大きくなるが余韻の美しいAIFFが好みだ。慣れたらいろいろ調べて試聴してみると面白い。なお、NASによってはドライブをNASに接続して直接音楽データを取り込むことができるNASもある。上で紹介したSoundgenic HDL-RA2HFもその1つだ。
■アンプとスピーカー
当然と言えば当然だが、ネットワークプレーヤー系統とは別にアンプとスピーカーが必要だ。DSDやハイレゾといった高音質なソースを扱う場合は、できるだけ良いものを用意したい。家電店でよく販売されているコンポレベルだと高品位な音が充分に再生できない。
接続してみよう
機器がそろったら接続しよう。接続方法は機器のマニュアルに詳しく記載されているが、基本はルータにスイッチングハブを経由してNASとネットワークプレーヤーを有線で接続する。直接ルータに接続するのは、経験上音質が損なわれるように感じる。また、無線でも接続できる機種はあるが、データ量の多いハイレゾやDSDは、有線が基本だ。NASとネットワークプレーヤーをUSBで接続できる機種もあるが、ネットワークプレーヤーをLANケーブルでネットワークに接続しておかないとコントロールアプリが利用できない。LAN接続/USB接続、どちらが音がいいかは、試してみて好みの方を選択すればよいだろう。「USB接続の方が高音質。」と言う人もいる。この辺りオーディオの醍醐味だ。
実際にDSDの音を出してみよう
いまガイドの手元に上で紹介したNASのSoundgenic HDL-RA2HFとネットワークプレーヤーのNT-505があるので、実際にDSDの音を出してみよう。1.DSDのサンプルファイルを用意する
DSDは、サンプルファイルであれば自由にダウンロードできる。たとえばDSDデモトラック サポート OPPO Digital Japan株式会社にある「 DSF – 1bit/2.8MHz (DSD64) オリジナルPure DSD レコーディング&ミックス (206.6MB)」はどうだろうか。かなり高音質なDSDファイルだ。ダウンロードしてコンピュータに保存しておこう。
2.Soundgenic HDL-RA2HFのcontentsフォルダの下にsample musicというフォルダを作成し、ダウンロードした「01 - David Elias - The Window - Vision of Her (DSD64).dsf」をコピーしておく。
3.コントロールアプリでVersion of Herを選択する。ここでは、TEACのHR Streamerを利用した。
これで再生が始まる。NT-505の画面には、以下のようにDSD 2.8Mと表示される。
音質は、ミュージシャンが実際に眼前で演奏しているような感じだ。DSDを再生するとCDでは得られない絹やベルベットのような滑らかな音を聴くことができる。未体験の読者の方は、一度お聞きになることをお勧めする。