マネジメント/マネジメント事例

ワクワクする飲食業界!俺の…、スタバに共通する戦略

消費税上げやスッキリしない景気動向を受け、飲食業界は長期低迷の厳しい戦いを強いられています。そんな中で今注目、店頭で行列が絶えることがないのが、「俺のフレンチ」に代表される俺の株式会社の各店。12年の創業以来衰えを知らない急成長。10業態約30店舗がすべて行列店という驚異の大躍進です。その裏にあるのは、ブルー・オーシャンと呼ばれる戦略。飲食業界を牽引するブルー・オーシャンたちの事例に焦点を当ててみます。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

低価格&高付加価値が生んだ大人気「俺の」シリーズ

今大人気「俺のフレンチ」に代表される「俺の」シリーズのレストラン。その特徴を一言で言えば、一流レストランの一流シェフの味をリーズナブルな価格で提供する、という全く新しいコンセプトの下に登場した飲食店です。

例えば、高級食材のフォアグラやトリュフをふんだんに使った高級レストランなら1万円以上はするというメニューを千円台で提供する、と言う驚異のサービスがウリ。グルメブームに乗り行列してでも食べたいというビジネスパーソンらで、連日大入り満席の大繁盛チェーンを生みだしたのです。

解説

低価格+高付加価値で連日行列の「俺のフレンチ」

では、経営上、この「俺の」シリーズの特筆すべき点とはいったいなんでしょうか。著名な経営学者マイケル・ポーター氏がによれば、競争に勝ち残るために選択すべき戦略は2つあります。価格戦略と高付加価値戦略(差別化戦略)がそれですが、「俺の」シリーズが採った戦略は「そのどちらか」ではなく、「そのどちらも」でした。低価格&高付加価値の同時実現はまさに荒業。この二正面戦略こそブルー・オーシャン戦略と呼ばれるものなのです。


ブルー・オーシャン戦略は2005年に、W・チャン・キムとレネ・モボルニュ両氏により提唱された全く新しい競争戦略の概念でした。彼らによれば、価格戦略や高付加価値戦略がそれ単体で行きつく先にあるものは、血で血を洗うレッド・オーシャンの市場。ふたつのオーソドクスな競争戦略を両立させることではじめて、レッド・オーシャンを抜け出しブルー・オーシャンに漕ぎ出すことができると定義づけしたのです。

「俺の」シリーズは通常は20%程度の原価率があたり前の飲食業において、平均60%以上の原価率になる高級食材を一流シェフの手で調理させるという無謀ともいえる戦略で業界を席巻します。立食を原則とした高回転率によって高売上を確保することにより、似た者同士で競争激化の飲食業界レッド・オーシャンに一石を投じたのです。

国内飲食ブルー・オーシャンの原点は回転寿司にあり

ブルー・オーシャン戦略という言葉こそここ10年で登場した新しい概念ではありますが、実はこの「俺の」シリーズの原点とも言える価格戦略と高付加価値戦略(差別化戦略)をミックスした戦略の芽は、身近なところに存在していました。その原点とも言えるのが、回転寿司です。

回転寿司は70年代に、高級飲食店の代表格とも言える寿司屋という業種においてコストを下げた大衆的な業態として登場。コンベアで回る寿司をセルフサービスで提供することで、高級飲食イメージが強かった寿司のコストダウンをはかるというイノベーションを起こしました。にぎり寿司の低価格戦略としてブルーオーシャン誕生かに見えた回転寿司業界は、80年代以降回転コンベアの量産化やすし握りマシンの開発によりチェーンが乱立し、業界はアッと言う間にレッド・オーシャン化します。

その後00年前後からのデフレ傾向も手伝って業界の消耗戦が長引く中、高級すし店並みのにぎり寿司を、回転寿司よりは高めの価格ながら旧来のお寿司屋さんよりも圧倒的な低価格で提供する新たな寿司屋が登場し人気を博します。その代表格が梅ヶ丘美登利寿司チェーン。「俺の」シリーズの原型とも言える寿司業界のブルー・オーシャンは、こうして誕生したのです。
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