今回作品監修される石井漠振付作『機械は生きている』(1948年初演)には、かつて石井さんも出演してらしたそうですね。
石井>私が漠先生のところへ入門したのはちょうど『機械は生きている』が初演された年で、先生もこの作品がお好きだったので、地方公演があると何度も上演していました。私はずっとセンターを踊らせてもらった記憶があります。劇的な展開や物語性はなく、人間の身体でみせるフォーメーションの面白さがある作品で、ごくごく表現的になっています。表現派風というのはまさにそういうことで、観ていてとてもわかりやすいし、地方に行ってもとても喜ばれました。今回再演するにあたり、映像をもとにまずベーシックな動きを起こし、そこからメカニックに変えていくという作業をしています。アレンジはしますが、基本的な部分は変えません。漠先生がつくられた世界を今のダンサーでやる、その面白さを出したい。演奏は加藤訓子さんにお願いして、微妙な音のアレンジだとか、彼女にもいろいろと考えていただいています。たぶん先生が生きてらしたら、当時とはまた違って今のスピーディーな社会に適応した作品にされるのではないかと思うんです。できれば私もそうしたいし、最後ははちゃめちゃに破壊してしまうようなところまで持っていきたいですね。
『機械は生きている』
ダンサーはどのように選んだのでしょう?
石井>一般から公募をして、応募してくださった方たちのなかからオーディションで選びました。ぐっと反ってからシンコペーションで下がっていく動きがあり、またこれが何分間か続きます。そういった動きが得意な方でないとできないので、身体的な適性を見て決めました。何も考えずにひたすら動くことって、最近あまりありませんよね。さらに同じことを繰り返すのではなく、どんどん変わってくので、ダンサーは大変かもしれません。「食欲をそそる」 Photo by Takashi Shikama