高級マンション/高級マンショントレンド

マンションの坪単価「上がるところ」「下がるところ」

激しく環境が変化した2013年から2014年の2年を振り返り、今後の展開を占ってみた。

坂根 康裕

執筆者:坂根 康裕

高級マンションガイド


目まぐるしく変化した2013年-2014年 

レインズ(東日本不動産流通機構)データをもとにMH3作成

レインズ(東日本不動産流通機構)データをもとにMH3作成

2013年から2014年。この2年で都心のマンション市場は大きく様変わりした。起点は2012年11月の「第二次安倍政権発足」である(グラフ上の赤線)。 景気浮揚策を期待して株式市場が先行して上昇。その後、黒田日銀総裁の金融緩和で為替は円安に向かう。

不動産市場に及ぼした影響の第一は、高額物件の売れ行きである。株で得た利益を不動産に替える「ポートフォリオの組み換え」がみられた。第二に、外国人による「都心マンション投資」が挙げられる。アジアの他都市に比べ、比較的割安だとされた東京の不動産は、円安によって魅力が増した。戸建てより区分(マンション)は「換金性が優位」ゆえ同じカテゴリーに資金が集まったといえる。

さらに、東京五輪2020開催決定にはじまり、JR山手線新駅やリニア中央新幹線、羽田東京間新線などインフラの期待がこれほど高まったことはなかった。都心の不動産所有意欲が俄然高まる一方で、新築分譲マンションの戸数減少、中古在庫の慢性的不足が続く。相場の上昇は至って自然な動向といえよう(グラフ参照)。都心3区(千代田区、中央区、港区)における中古マンションの成約単価(黄緑の折れ線グラフ)は3割前後も値上がりしてしまった。

2015年は調整局面に!?

都心再開発プロジェクト「パークシティ大崎」は好調に推移(画像提供:三井不動産レジデンシャル)

都心再開発プロジェクト「パークシティ大崎」は好調に推移(画像提供:三井不動産レジデンシャル)

では、このまま一本調子で上がり続けるのか。答えはイエスであり、同時にノーである。どういうことかというと、場所によってさらに「上がるところ」と逆に「下がるところ」が出るだろうということ。

例えば、新築マンションの売れ行きひとつを見てもかなり差が出ている。一般的にマンションの販売は、金利、税制などの環境変化と価格動向が好不調の要因になるが、最も影響を与える価格が相当上がったために売れ行きが全体的には鈍化。ところが、値上がりしても即日完売している現場もある。両極端な成績の並存が現況の特徴だ。「2015年、複雑化するマンション市場」参照

では、なぜそのようなことが起きるかというと「価値観の変化」という他ない。マイホームとして「住む」対象だった都市型分譲マンションは、いまや「資産形成」の手段としてとらえられている。つまり「資産価値」を認められた物件はさらなる値上がりの余地を残しているが、その逆は下がる可能性もあるということだ。マンション相場はこの新たな機軸をもって今後調整局面に入っていくだろう。

キーワードは「需要の高まり」と「希少性」

イメージフォト

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不動産価格は「有効需要の総量」と「希少性」で決まる。様々な経済環境要因によって変動はするものの、基本的な決定指標はこの2点である。注意すべきことは、時代の流れによって需要の集まりが異なる点。

わかりやすい例でいえば湾岸エリアなどが好例だろう。かつては倉庫や工場などが多く、住宅街としての印象は薄かったが鉄道や道路といった交通インフラが新設され、街の景観も一新。いまや子育てさえふさわしい候補地になった。

しかし話題性で注目される時期はやがて終わるだろう。「都心に近い」ことが人気の前提。それは変わらない事実だが、実際に住みやすい街として定着するかどうかはこれから。急激な人口増加に行政が対応しきれるか、魅力的な利便施設があるか。長期的な観点を忘れてはならない。

希少性の高い物件は相当な高値が付いている。為替の影響を受けている分野だが、やがて円高に戻るようなことがあれば、海外の富裕層は一斉に売りに出すのではないかとの推測も成り立つ。資産価値を重視して買う場合は、買った後も市場にアンテナを張り続けなければならないことを肝に銘じよう。

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