現地の方から直接「えんぶり」を教わったそうですね。
八戸でのえんぶり稽古
50年くらい前に録音された音源を聴かせてもらったとき、組の方が“コレ唄ってるの、僕の爺ちゃんの爺ちゃんなんですよ”と言う。昔の唄が残っていて、それを聴くと爺ちゃんを思い出す。そこには、まだ見ぬ孫たちへ豊かな土地を残したいという祈りが込められてる。この音源は、今回の作品の中でも使わせてもらっています。時空が留まっていて、想いが着実に受け継がれてる。それこそ伝統であり、土地に根ざしたものの素晴らしさなんだなって感じました。
「又」(2014 )
(C)山本尚明
組の方に烏帽子を被らせていただいたんですが、それもまず通常だったらありえないことらしいです。烏帽子自体が神様で、練習を始める前に“今から被らせていただきます”と烏帽子にお辞儀をして、終わったらまたお辞儀をするというように礼を尽くす。神様として扱っているものを、部外者の僕らに被らせてくださったんです。しかも普通女性は被らないそうなんですが、女性メンバーにも被らせてくださったり。実際に被ってみると、物理的な重量にも驚かされました。たくさんの人の思いがずっしりと伝わってくるようで、とてもありがたく貴重な体験でした。
「血」(2008) (C)松田純一