北極圏では初日の出が拝めない!?白夜と極夜の不思議なメカニズム
元旦の日の出時刻は、フィンランドの南に位置するヘルシンキでは9時30分ごろと意外に早い。冬の寒い日の日の出の瞬間には、太陽をうっすらと虹が取り囲むハロ現象が見られることも
北半球の高緯度に位置する北欧フィンランドでは、年間を通して日の出、日の入の時間がとても極端に変動します。簡単にいえば、夏(夏至前後)には日が沈まない地域もあるほど日照時間が長くなり、冬(冬至前後)には同地域で太陽が水平線上にまったく顔を出さないほどに短くなるのです。
ロヴァニエミのサンタクロース村敷地内に示された北極圏の境界線
こうした、太陽がまったく沈まない/出ない日のことをそれぞれ白夜/極夜と呼びますが、フィンランド全土でこういった日が巡ってくるわけではありません。白夜や極夜は、地軸が地球の公転面の垂線に対して約23度傾いていることに起因する現象なので、北半球では北極圏、すなわち北緯66度33分以北の場所でのみ体験できます。フィンランドの国土で言えば、ラップランドの玄関口として知られるロヴァニエミの北部にある、
サンタクロース村の敷地内に北極圏の始まりを示す境界線が走っており、その線より北の地域では、少なくとも1日以上夏には白夜が、冬には極夜が訪れることになります。ちなみにフィンランド最北部の街ウツヨキ(Utsjoki)では、約2ヶ月間、白夜と極夜が続きます。
ヘルシンキでは冬至でも極夜は訪れない
ところで、夏と冬の日照時間がどんなに極端であっても、3月の春分の日、9月の秋分の日の頃には、全世界共通で昼と夜の長さはほぼ12時間ずつ。つまり、白夜・極夜のピークからたった3ヶ月のうちに日照時間が半日分ほど増減するのですから、1日ごとの日照時間の増減も、とても極端であることが分かると思います。いっぽう、同じフィンランドでもほぼ南端(北緯60度10分)に位置するヘルシンキでは、これほどまでに劇的な変化は起きません。夏至や冬至前後であっても、5時間あまりの日没または日照の時間が訪れますし、夏至でもわずかながら暗闇の時間がやって来ます。
極夜の時期には、野外アクティビティは不可能?
たとえ太陽が昇ってこなくとも、水平線付近をくすぶっている時間帯にはほの明るくなり、アクティビティも十分可能
太陽が水平線より下に沈んでしまっても、すぐに空が真っ暗になるわけではもちろんありません。白夜の厳密な定義は「太陽がまったく沈まない日」のことですが、日没後にしばらく薄明るい夕暮れの雰囲気が続くなか、再び日の出の時間を迎えることも、現地では広義に解釈して白夜と呼ぶことがあります。
太陽は出ずともこんなにドラマチックな朝焼けが見られる瞬間も
逆に、冬至前後の北極圏では一日中真っ暗なのかといえばそうではありません。太陽が水平線のすぐ下にある時間帯は、たとえ日光が当たらなくとも空がぼんやりと薄明るくなり、時間によっては幻想的な桃色の夕焼け(あるいは朝焼け?)が見られたりもします。また、極夜のシーズンは北極圏内であればすでに地表を純白の雪が覆っているので、思いのほか外の世界が明るく感じられるものです。
とはいえ、野外で安全にウィンターアクティビティを楽しむために充分な照度のある時間は、冬の北極圏ではやはり限られてしまいます。もし少しでも長く外の世界を楽しみたいのであれば、日に日に日照時間がのびてくる1月終わりから2月の旅行を検討すべきでしょう。もちろん、オーロラ観賞を目的に冬の北極圏に来る人にとっては、空が晴れている限りは闇の時間が長いほど遭遇確率が高まるとも言えますね。
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