司法書士試験は2つの試験に合格して最終合格
司法書士の資格を得るには、「筆記試験」「口述試験」の2つの試験に合格する必要があります。一般的に司法書士試験の話は筆記試験を指して語られ、口述試験について言及されることはほとんどありません。口述試験はよほどのことがない限り不合格になることがない試験であるため、その詳細について語られる機会がほとんどないのです。しかし、司法書士の資格を得るには口述試験にも合格する必要があるわけですし、情報が少ないと不安になってしまいますので、この記事で口述試験について説明します。面接型の試験を文章で説明するのは少し難しいのですが、できる限りイメージが沸くように説明していきたいと思います。
筆記試験合格者のみが口述試験を受験できる
口述試験を受験できるのは、筆記試験に合格された方のみです。筆記試験の合格者にのみ、筆記試験の合格発表から数日以内に口述試験の受験票が郵送されます。具体的な日程ですが、筆記試験の合格発表が9月末または10月初旬で、口述試験は例年10月の第2火曜日または第2水曜日(1日限り)に行われます。参考として、2019年度(平成30年度)司法書士試験の日程(願書提出から最終合格発表まで)を示します。(参考)令和元年度(2019年度)司法書士試験の日程
※日程の詳細は、司法書士試験【2019】日程・試験科目・配点・出題数をご覧ください。
口述試験の流れ
■試験会場筆記試験は都道府県ごとに試験会場が設けられますが、口述試験は筆記試験の合格者のみが受験するため受験者数が少ないので、試験会場は少なくなります。以下の表の右欄に表示された都道府県で筆記試験を受験した方は、表の左欄の法務局(高等裁判所がある都道府県の法務局です。高等裁判所は全国8か所にあります)が指定した会場(通常は左欄の法務局がある都道府県)で受験する必要があります。
お住まいの場所によってはかなりの移動距離となりますので、前日に会場となる都道府県に入り宿泊される方もいます。
■試験時間
口述試験は、午前と午後に行われ、どちらかで受験するように指定されます。午前で受験するか午後で受験するかは、筆記試験の合格者にのみ郵送される受験票に記載されています。このような実施方式を採るため、午前と午後で問われる問題の内容は異なります。
■試験開始まで
試験当日、試験会場に行くと、まずは試験の順番を決めるくじを引かされます。会場によりますが、東京など受験者数の多い会場では、後ろのほうの番号を引いてしまうとかなり待たされることになります。
そして、受験者が1つの大教室に引いた番号ごとに待機させられます。待機している間は、ほとんどの方が、後述する予備校の口述模試で配付される口述試験対策レジュメを読んでいます。待機していると、番号順に口述試験が行われる部屋に呼ばれます。
※会場によって多少流れが異なります。
■口述試験
自分の番号になると、係の方に誘導され、口述試験が行われる部屋に向かいます。「ドアをノック→『どうぞ』と言われて入る→あいさつをする→『お座りください』と言われ座る」の流れになりますので、就職面接のような形式です。
試験官は2人います。基本的には、そのうちの一方の試験官が口頭で問題を出します。問われる科目は、「不動産登記法」「商業登記法」「司法書士法」です。内容は、基本的には筆記試験に向けて学習したものですが、いざ「口頭で答えろ」と言われると思った以上に答えられないものですので、事前に予備校が行う口述模試を受けて練習をしておいたほうがよいです。筆記試験の合格発表後に、各予備校が無料または格安で口述模試を実施します。
【2019年度(令和元年度)の各予備校の口述模試】
・学習経験者向け 口述試験対策(LEC)
※2,000円(LEC主要講座受講生は無料)/要予約
※対象者:2019年度司法書士筆記試験合格者。東京会場については「合格者の写真」を撮影。「合格者の写真」はLECの各種パンフレット、ポスター、ホームページに掲載。
・口述模試(TAC/Wセミナー)
※2019年・2018年目標の対象講座を受講した方は無料/要予約
※口述試験対策レジュメのみの購入(窓口渡し:1冊2,100円,郵送:1冊2,600円)
・口述模試(伊藤塾)
※無料/要予約
※対象者:2019年度司法書士試験筆記試験に合格し、伊藤塾の有料講座の受講経験があり、合格体験記の執筆やアンケートに協力する方
・2019年度 司法書士試験 口述模擬試験のご案内(辰已法律研究所)
※無料/要予約
※対象者:2019年度司法書士試験筆記試験合格者(講座の受講経験の有無は問わず、合格体験記・講座推薦文の執筆は任意)
口述試験で問われるのは「不動産登記法」「商業登記法」「司法書士法」ですが、正直、不動産登記法と商業登記法は範囲が広すぎて、口述試験までに完璧に勉強することはできません。よって、ほとんどの方が、「不動産登記法および商業登記法のテキストをサラっと見返す」という程度の対策になります。
それに対して、司法書士法は毎年ほとんど同じ問題が問われますので、予備校の口述模試で配付されるレジュメに記載された「過去の質問および模範回答」を記憶してください。たとえば、司法書士法2条(職責)は言わされることが多いので、暗唱できるようにしておく必要があります。
不動産登記法および商業登記法の対策を万全にすることは困難ですが、司法書士法は問われることが決まっており対策ができます。司法書士法だけでも万全な対策ができていると、確実に答えられる問題ができることになり気持ちが楽になりますので、司法書士法の対策を最優先に行ってください。
なお、すべての問題に答えられない方も実は多くいます(私もそうでした)。答えられないことがあっても焦る必要はありません。間違った答えであっても、試験官がヒントをくれ、正しい答えに誘導してくれます。また、どうしても答えられない場合には、問題を変えてくれることもあります。
※試験官によって多少対応が異なります。
このようなことから、「口述試験は落とすための試験ではない」と言われます。試験が終わると、試験を待っている受験者がいる大教室には戻らず、帰宅させられます。