司法書士試験の基準点とは?

司法書士試験の試験制度の中で、最も怖いものが「基準点」というものです。「基準点」という名称ですが、要は「足切り点」のことです。司法書士試験の日程・試験時間・配点・科目・出題数の記事で、「試験時間は午前と午後に分かれているだけですが、1.午前択一、2.午後択一、3.記述と3つに分けて考えてください」とご説明しました。その理由が、この基準点です。3つそれぞれに基準点が設けられています。

1. 午前択一
2. 午後択一
3. 記述

これら3つのうち、どれか1つでも基準点に充たなければ、他の2つが満点であっても、不合格となります。よって、これら3つのすべてについて、基準点以上の点数を取るということは、合格の絶対条件となります。

では、具体的に基準点をみていきましょう。
過去5年間の基準点および合格点は、以下のとおりです。

【基準点および合格点】(平成28年度~平成24年度)
基準点および合格点(平成28年度~平成24年度)

基準点および合格点(平成28年度~平成24年度)


グラフにしたほうがどのように変化しているのかイメージしやすいので、1.午前択一、2.午後択一、3.記述の基準点の推移のグラフも示しておきます。

基準点の推移(平成28年度~平成24年度)

基準点の推移(平成28年度~平成24年度)



では、ここからは、「1.午前択一」「2.午後択一」「3.記述」の3つに分けて基準点をみていきます。

 

1. 午前択一

午前択一の基準点(平成28年度~平成24年度)

午前択一の基準点(平成28年度~平成24年度)

まずは、「1.午前択一」の列をご覧ください。午前択一の基準点は、以下の範囲で推移しています。

1. 午前択一(問題数35問):25問(71.4%)~30問(85.7%)

非常に点数が高いことがおわかりいただけるでしょうか。午前択一の問題数は35問ですが、80%前後の点数を取らなければ、午後択一および記述が満点であっても、それだけで不合格となります。平成27年度にいたっては、基準点が30問(85.7%)ですので、80%の点数を取った受験生の方も不合格となりました。 これは、他の試験では滅多にみられないハードルの高さです。

ただし、平成27年度の30問(85.7%)は、司法書士試験の中でも異常な高さの基準点です。ここまで高い基準点となったのは初めてでした。これは、平成27年度の問題がかなり易化したからでした。また、平成28年度の25問(71.4%)も、午前択一の基準点としては異常な低さです。午前択一は、大体「26問(74.3%)~28問(80.0%)」の間で基準点が推移するのが通常です。

それでも、74.3%や80.0%ですから、ハードルはかなり高いです。
択一に関していえば、司法試験や予備試験よりも司法書士試験のほうが難易度が高いと私は考えています。単に取らなければならない点数が高いだけでなく、問題自体の難易度も考慮しての考えです。これには反対意見もあり、また、試験科目や問題の性質も異なるため、比較をすること自体ナンセンスという意見もあるかもしれませんが、司法書士試験の択一が、司法試験や予備試験よりも明らかに簡単であると言い切れる人はいないでしょう。

2. 午後択一

午後択一の基準点(平成28年度~平成24年度)

午後択一の基準点(平成28年度~平成24年度)

次に、「2.午後択一」の列をご覧ください。午後択一の基準点は、以下の範囲で推移しています。

2. 午後択一(問題数35問):24問(68.6%)~27問(77.1%)


午前択一よりは基準点が低くなります。ただし、午後択一のほうが基準点が低くなるといっても、70%前後の点数が求められますので、他の試験では滅多にみられないハードルであることに変わりはありません。

午後択一のほうが基準点が低くなる理由は、問題の難易度が午後択一のほうが難しいからではありません。むしろ、過去問(過去に実際に司法書士試験において出題された問題)と同じ知識が出題される割合は午後択一のほうが高いことが多いので、問題自体の難易度は午後択一のほうが低いと言えます。午後択一のほうが午前択一よりも基準点が低くなる理由は、解答にかけられる時間にあります。解答にかけられる時間は、以下のようになっています。

1. 午前択一(問題数35問):120分
2. 午後択一(問題数35問):70分

同じ35問(分量も大差はありません)であるにもかかわらず、午後択一は半分近くの時間で解答しなければなりません。午後の180分の時間内に記述も解く必要があり、近年の記述の問題には最低110分程度はかけたいところなので、午後択一に使えるのはマックスで70分程度となります。午後択一は、午前択一よりも知識問題が多いため、解答時間は短くて済むものの、午前択一の半分近くの時間で解くのは、やはり十分な時間があるとは言えません。

3. 記述

記述の基準点(平成28年度~平成24年度)

記述の基準点(平成28年度~平成24年度)

続いて、「3.記述」の列をご覧ください。記述の基準点は、以下の範囲で推移しています。

3. 記述(70点):30.5点(43.6%)~39.0点(55.7%)

記述は、択一よりも基準点が低くなります。ここに表示されていない平成18年度までさかのぼると、60%台であったこともありますが、近年は60%の得点で基準点はクリアーできています。余裕を持って考えても、今後も、70%程度の得点を取っておけば、まず基準点に届かないことはないでしょう。

 

基準点を取るだけでは合格できない

基準点合計点および合格点(平成28年度~平成24年度)

基準点合計点および合格点(平成28年度~平成24年度)

基準点をみてきましたが、合格するには基準点を取るだけでよいわけではありません。表の「基準点合計」の列と「合格点」の列に開きがあるとおり、基準点から15.0点(平成24年度)~23.0点(平成28年度)上乗せしなければなりません。午前択一、午後択一または記述のどこで上乗せをしても構いませんが、 択一で上乗せをするならば、5~8問分必要となるのが近年の傾向です。


司法書士試験の難易度を上げているのは基準点

以上みてきたように、高得点が要求されるというのもありますが、司法書士試験の難易度を上げている最も大きな要因は、「1.午前択一」「2.午後択一」「3.記述」のそれぞれに基準点が設けられていることです。これら3つのうちのどれか1つが基準点に充たずに不合格になる方は、かなりの数に及びます。「午前択一で基準点に1問足りなかった」「記述で基準点に0.5点足りなかった」などという声は、よく聞きます。「総合点では合格点を超えているのに、記述で基準点に0.5点足りなかったために不合格となった」ということもあります。

よって、普段の学習も、本試験での時間配分も、とにかく“バランス”が重要となります。この3つを早い段階で揃えることができた人が、短期合格者となることができます。それには、計画と戦略が必要です。