※平成29年11月9日に、最新年度の平成29年度のデータを追加しました。

「司法書士試験の合格率は3%」と、どこかで聞いたことがあるかもしれません。私も、司法書士試験についてあまりご存じない方に「合格率はどれくらいなんですか?」と聞かれれば、「3%くらいです」とお答えします。現在でも「3%くらい」という答えに間違いはないのですが、近年、合格率に少し変化があります。これは、一見微々たる数字にみえますが、実はかなり大きな変化です。

それでは、司法書士試験の合格率を細かくみていきましょう。


出願者数・受験者数・最終合格者数は?

まず、合格率の計算の元となる「出願者数」「受験者数」「最終合格者数」からみていきます。過去10年分(平成20年度~平成29年度)のデータです。

【出願者数・受験者数・最終合格者数】(平成20年度~平成29年度)

※「出願者数」とは、実際に試験を受けたかにかかわらず、願書を出した人の数です。「受験者数」とは、実際に試験を受けた人の数です。どの試験も、願書は出したが試験は受けない人が一定数いますので、受験者数のほうが出願者数よりも少なくなります。
※「最終合格者数」とは、筆記試験の後の口述試験に合格した人の数です。司法書士試験は、筆記試験に合格した人だけが口述試験を受験することができ、口述試験にも合格して最終合格です。ただし、口述試験で不合格になる人は0に近いので(口述試験については司法書士の口述試験に不合格はない?日程・会場・対策をご覧ください)、「最終合格者数」と「筆記試験合格者数」はほとんど同じ数となります。

                       出願者数 受験者数 最終合格者数
(平成29年度) 18,831人  15,440人  629人
(平成28年度) 20,360人  16,725人  660人
(平成27年度) 21,754人  17,920人  707人
(平成26年度) 24,538人  20,130人  759人
(平成25年度) 27,400人  22,494人  796人
(平成24年度) 29,379人  24,048人  838人
(平成23年度) 31,228人  25,696人  879人
(平成22年度) 33,166人  26,958人  948人
(平成21年度) 32,558人  26,774人  921人
(平成20年度) 33,007人  27,102人  931人

以上をグラフにすると、以下のとおりです。


司法書士試験の出願者数・受験者数・最終合格者数(平成20年度~平成29年度)

司法書士試験の出願者数・受験者数・最終合格者数(平成20年度~平成29年度)



平成22年度をピーク(受験者数は平成20年度がピーク)に、出願者数・受験者数・最終合格者数のすべてが減少していることがわかります。
また、出願者数・受験者数・最終合格者数の折れ線が大体同じ形になっています(最終合格者数は人数が少ないので、折れ線グラフの形がわかりにくいですが)。

出願者数と受験者数の関係は、受験率(出願者数のうちどれだけの方が受験したか)ということになりますが、司法書士試験では、受験率はほとんど変化がありません。平成20年度~平成29年度で、受験率が最も低かったのが平成22年度の81.3%、最も高かったのが平成27年度の82.4%です。平成20年度~平成29年度の受験率の平均は、82.0%です。
よって、出願者数と受験者数の折れ線はほとんど同じ形になります。

最終合格者数も、出願者数と受験者数とほとんど同じ形になっているのですが、これは司法書士試験が相対評価の試験であり、合格率が大きくは上下しないからです。出願者数と受験者数に、最終合格者数が比例するのです。


合格率は?

それでは、上記のデータを元に「合格率」をみていきましょう。上記のデータ同様、過去10年分(平成20年度~平成29年度)のデータです。

【合格率】(平成20年度~平成29年度)
※合格率の項目を2つ設けています。「対出願者数ベースの合格率」と「対受験者数ベースの合格率」です。出願者数のほうが受験者数よりも多いので、「対出願者数ベースの合格率」のほうが、「対受験者数ベースの合格率」よりも低くなります。

                        対出願者数     対受験者数
(平成29年度)  3.34%     4.07%
(平成28年度)  3.24%     3.95%
(平成27年度)  3.25%     3.95%
(平成26年度)  3.09%     3.77%
(平成25年度)  2.91%     3.54%
(平成24年度)  2.85%     3.48%
(平成23年度)  2.81%     3.42%
(平成22年度)  2.86%     3.52%
(平成21年度)  2.83%     3.44%
(平成20年度)  2.82%     3.44%

以上をグラフにすると、以下のとおりです。


司法書士試験の合格率(平成20年度~平成29年度)

司法書士試験の合格率(平成20年度~平成29年度)



あまり変わっていないように思われたかもしれませんが、「平成20年度~平成25年度」と「平成26年度~平成29年度」の間で変化があります。


司法書士試験の合格率(平成20年度~平成29年度)

司法書士試験の合格率(平成20年度~平成29年度)



平成26年度から合格率が上昇しています。

平成25年度までは、対出願者数ベースの合格率は「2.81%~2.91%」、対受験者数ベースの合格率は「3.42%~3.54%」で推移していました。平成20年度~平成25年度の平均合格率は、対出願者数ベース「2.85%」、対受験者数ベース「3.47%」です。つまり、司法書士試験を実施する法務省は、これくらいの合格率が適正だと当時は考えていたのだと思われます。

しかし、平成26年度から合格率を以下のとおり上昇させています。

                        対出願者数   対受験者数
(平成29年度)  3.34%     4.07%
(平成28年度)  3.24%     3.95%
(平成27年度)  3.25%     3.95%
(平成26年度)  3.09%     3.77%

「0.4%ほどのほんの少しの上昇」と思われるかもしれませんが、人数にするとかなりの数になります。

平成26年度~平成29年度の実際の最終合格者数は、以下のとおりでした。

          最終合格者数
(平成29年度)   629人
(平成28年度)   660人
(平成27年度)   707人
(平成26年度)   759人

これが仮に平成20年度~平成25年度の平均合格率である、対出願者数ベース「2.85%」、対受験者数ベース「3.47%」であったのならば、最終合格者数は以下の人数でした。

                       対出願者数2.85%       対受験者数3.47%
(平成29年度) 536人(実際との差93人)  535人(実際との差94人)
(平成28年度) 580人(実際との差80人)  580人(実際との差80人)
(平成27年度) 619人(実際との差88人)  621人(実際との差86人)
(平成26年度) 699人(実際との差60人)  698人(実際との差61人)

合格者数が600~700人の試験で、この差は、受験する方にとっては非常に大きなものです。私のクラスの合格者の方でも、これで救われた方が何人もいます。


合格率が上昇している要因は?

隣接資格である司法試験の合格率(合格者数)は、自民党や公明党が減少させることを提言するなど、政策的な影響が強いです。
それに対して司法書士試験は、(公になっているものでは)そのような政策的な影響は確認できません。また、司法書士試験は司法試験の法科大学院創設や予備試験の導入などのように、大きな制度変更があったわけではありません。よって、合格率が上昇している要因を断定することはできません。

ここからは私の推測になりますが、「一定数の司法書士を確保するため」に合格率を上昇させているのだと思います。この記事の冒頭で以下のグラフをみましたが、出願者数・受験者数ともに減少していますので、平成20年度~平成25年度の合格率では、合格者数がかなり少なくなってしまいます。


司法書士試験の出願者数・受験者数・最終合格者数(平成20年度~平成29年度)

司法書士試験の出願者数・受験者数・最終合格者数(平成20年度~平成29年度)



司法書士の数は、首都圏の事務所を中心に足りていません。東京の事務所だと、「求人を出しても採用者が決まらない」という話はよくあることです。よって、一定数の司法書士を確保するために合格率を上昇させているという要因が1つ考えられます。


今後も合格率の上昇は続く?

「一定数の司法書士を確保するため」という理由であれば、今後も出願者数・受験者数が減少すれば、合格率は上がることになります。

私の個人的な考えとしては、もう少し合格率を上げてもいいと思います。
たしかに、あまり合格率を上げると、「能力担保がされなくなるのでは」という問題があります。どこまで合格率を上げてよいかは、「どこまでの能力の人を合格させてよいのか」という問題でもあります。
ですが、受験指導をし、日々受験生の方と接している私としては、もう少し合格率を上げても、能力担保は問題ないと考えています。いま、ギリギリのところで不合格になっている人が司法書士になったとして、仕事ができないレベルかというと、決してそんなことはありません。

今後も出願者数・受験者数が減少するならば、「合格率5%程度」までなら上げてもよいというのが私の考えです。

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