前回、司法書士とのダブルライセンス(行政書士など)という記事を書きました。今回の記事では、前回の記事の中でご紹介した「司法書士と行政書士」のダブルライセンスについて、「司法書士と行政書士の2資格を取得したい場合に、どちらの資格から目指すべきなのか?」をご説明します。

なお、私は司法書士と行政書士の双方の資格を保有しています。それも、今回のテーマを取り上げた理由の1つです。


司法書士試験と行政書士試験の合格率

まず、司法書士試験と行政書士試験の合格率を確認しましょう。以下のデータは、平成17年度~平成26年度の合格率の推移です。


司法書士試験と行政書士試験の合格率の推移

司法書士試験と行政書士試験の合格率の推移


※数字は%です。小数点第3位以下を四捨五入しています。
※出願者数(願書を出した人の数)ではなく、受験者数(実際に試験を受けた人の数)を基準にした合格率です。
※司法書士試験の受験者数が公表されたのは平成18年度からなので、司法書士試験は平成17年度については記載していません。


合格率だけで試験の難易度を比べるのは適切ではありませんが、司法書士試験と行政書士試験はどちらも受験資格のない「誰でも受けられる試験」です。その条件が同じである中で、合格率が司法書士試験のほうが低いことは、司法書士試験のほうが行政書士試験よりも難しいと言える1つの要素にはなります。


司法書士資格と行政書士資格の取得順序はこれがお薦め

「司法書士と行政書士」の2資格を取得したいと考えた方がまず考えることは、「どちらの資格から取得するか?」でしょう。普通の考え方では、「一般的には司法書士試験よりも難易度が低いと言われている行政書士試験に先に合格し、司法書士試験の合格を目指す」という、いわゆる“ステップアップ”の発想になります。

しかし、私は「行政書士の資格を取得し、すぐに行政書士として開業し、行政書士業務をしながら司法書士試験の合格を目指したい」、つまり、行政書士の資格を先に取らなければならない必要性がある方を除いて、「司法書士試験を先に目指すこと」、つまり、“ステップダウン”資格取得法をお薦めしています。
このように申し上げる理由は、これです。

行政書士試験は、平成18年度以降難化し非常に対策が立てづらい試験になった

※この記事は、あくまで司法書士と行政書士の2資格を取得したいと考えており、まだどちらの資格も取得されていない方を対象としています。「司法書士と行政書士の片方の資格のみを取得したい」という方や「すでに片方の資格を取得している」という方は対象としていません。


行政書士試験の難化

試験ごとに試験科目や出題方法も異なるので、「資格試験同士の難易度を比べるのはナンセンスだ」という意見もあります。たしかに、資格ごとに試験は別物ですし(以下に比較として示す司法試験と予備試験は重複している問題があります)、人によって合う合わないもあります。たとえば、私の知り合いで、「司法書士試験に何年も合格できなかったが、目指す試験を司法試験に変更したら1回で合格できた」という方もいます。この方は、記憶重視の司法書士試験よりも、記憶量は少なくてもよいが法的思考力を論文の答案に示すことが要求される司法試験のほうが向いていたのでしょう。

しかし、そうはいっても、これから資格試験の勉強をしようとお考えの方は、試験の難易度は気になるでしょうし、それを知るには他の資格試験と比べるのが最もわかりやすいです。よって、私の考えにはなりますが、おそらくそこまで異論のないであろう試験ごとの難易度を示します。

現在の法律系資格試験の難易度を、私は以下のように捉えています。


法律系資格試験の難易度

法律系資格試験の難易度

 
※「旧司法試験」は現在は存在しませんが、比較のために記載しています。


行政書士試験が難化し、難易度が司法書士試験にかなり近づいてきています。現在の行政書士試験で出題される問題は、そのまま司法書士試験や司法試験で出題されてもおかしくないものがあります。
ですが、それだけでは、「まだ司法書士試験のほうが難しいんだから、行政書士試験から目指したほうがいいのでは?」と思われるでしょう。


行政書士試験の制度変更

たしかに、行政書士試験が徐々に難化し、司法書士試験に近づいてきたのであれば、「まずは行政書士試験」と申し上げます。しかし、平成18年度以降、行政書士試験は急激に難化しました。この“急激に”ということが、ポイントです。

平成17年度までの行政書士試験は、過去問中心の学習で合格できました。人によっては、過去問を解きその答えを記憶するだけで合格する方もいました。しかし、平成18年度に大幅な試験制度の変更があり、平成18年度以降の行政書士試験の問題は、司法書士試験や司法試験のように法的思考力を試す問題、簡単にいうと、単に知識を「暗記」するのではなく「理解」していないと解けない問題が数多く出題されるようになりました。

このようなことから、現在の行政書士試験は、「平成17年度以前の過去問レベルの学習では太刀打ちできない。しかし、平成18年度以降の問題では、過去問の量が少なすぎる」という状況になっています。
また、テキストの選択も難しくなっています。その証拠に、以前の行政書士試験では予備校本(予備校が作成したテキスト)で学習するのが当たり前でしたが、現在では、いわゆる学者本(法学部の教授が書いた本)をテキストとして講義をする予備校が存在するほどです。

試験の急激な難化により、行政書士試験プロパー(行政書士試験のみ)の対策では合格が容易ではなくなっているのが現状です。
実際に、現在の行政書士試験の合格者の多くを占めるのは、司法試験の受験生、司法書士試験の受験生、司法書士試験の合格者など、より深く法律を学習している人です。


ステップダウン資格取得法

そこで私がお薦めするのが、「ステップダウン資格取得法」です。まず難易度の高い司法書士試験の学習を先にするということです。司法書士試験に合格するために必要な学習をしていれば、前述した平成18年度以降の行政書士試験で要求されている「法的思考力」は身につきます。

また、仮に司法書士試験に短期で合格できなかったとしても、司法書士試験(試験日は7月の第1日曜日)受験後、行政書士試験(試験日は11月の第2日曜日)を受験すれば、行政書士試験プロパーで学習されている方よりもはるかに有利になります。前回の記事でご紹介しましたとおり、司法書士試験と行政書士試験は以下のように科目の重複が多いからです。以下のオレンジの部分が重なっている科目です。

司法書士試験と行政書士試験の試験科目

司法書士試験と行政書士試験の試験科目



※配点を基準とした円グラフです。
※司法書士試験の不動産登記(記述)は「不動産登記法」の、商業登記(記述)は「商業登記法」の配点としています。


なお、すでに行政書士試験プロパーの学習をしている方や行政書士試験を受験したが合格できなかった方で、司法書士の資格取得まで考えている方は、一旦行政書士試験の学習を中断し、司法書士試験の学習する選択肢を考えていただきたいです。
行政書士試験プロパーの学習で行政書士試験に合格することが容易ではないのが現状ですが、司法書士試験の学習をすれば、仮に司法書士試験に合格できなかったとしても、行政書士試験に合格できる確率は上がります。もちろん、「司法書士試験に合格したうえで、行政書士試験にも合格する」ということを目指していただきたいのですが。


急激に難化したために対策が難しい行政書士試験の現状を考えると、難易度の高い資格を先に目指す、「ステップダウン資格取得法」が最も賢明な選択であると言えます。


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。