大人の勉強、受験勉強のやり方では通用しない

大人の勉強

資格や英語、昇格試験など、大人も集中して勉強する機会は多い

各種試験の本質である「その試験で求められている知識・考え方を習得し、その知識・考え方を問う「問題」に答えることができるように準備する」ということは、どんな試験でも同じです。

しかし、資格試験など大人になってから始める試験の勉強法は、高校受験や大学受験などと異なります。その違いは、試験の性質というよりは、受験生の年齢や環境から来るものが大きいのです。

大人の勉強は、以下の3点を意識する必要があります。

1.「記憶する」よりも「思い出せるようにする」
2.徹底的に時間を捻出する
3.体力に配慮する



1.「記憶する」よりも「思い出せるようにする」

勉強というと、「記憶する」ことをイメージすると思います。どんな試験でも、一定の知識を記憶していることが要求されます。そして、多くの試験では、一定の知識を記憶していることを証明できれば(具体的には「問題」に答えられれば)、合格できます。

では、「記憶しよう」「記憶しよう」という姿勢で勉強していけばいいのでしょうか。10代であれば、その姿勢でも構いません。しかし、大人は、その姿勢では無理がきます。

子どもの頃は、「意味なく駅名をすべて記憶する」といったことができます(私も横浜の市営地下鉄の駅名はすべて記憶しました)。しかし、大人になるとそれは難しくなります。

試験では、知識を思い出せるようになっていなければなりません。思い出せなくなる原因は、「他の知識と混同してしまっていること」です。これまで受けた試験を思い出してみてください。試験中に迷う問題は、「これは勉強した。ただ、これとあれ、どっちだったっけ?」と他の知識と混同してしまっているものではないでしょうか。大人のほうが、多くの知識が頭に入っているので、単純に記憶するのが難しいのです。

また、歳を重ねると頑固になり、行動するにあたって理屈を求めるようになるので、意味のない単純記憶が苦痛になります。

「どうやって思い出そうか」という視点

「どうやって思い出そうか」という視点

よって、大人は、単純に記憶するのではなく、「どう思い出そうか?」という視点で学習する必要があります。

1つ例を挙げましょう。

私が担当している司法書士試験には、「刑法」という科目があります。この刑法に「刑の全部の執行猶予」という制度があります。聞いたことはあると思いますが、簡単にいうと「懲役の執行猶予であれば刑務所に入らなくてよくなる」というものです。

刑の全部の執行猶予をつけてもらうには、言い渡される刑罰が懲役刑の場合、「3年以下の懲役」という要件があります(刑法25条1項)。つまり、懲役4年や懲役5年だと、執行猶予はつけられないんです。司法書士試験では、この「3年」という数字が問われます。でも、単純に数字を記憶していく勉強法は、大人には無理があります。

そこで、たとえば「被告人は世(4)が恐いと思っている」という架空のエピソードを作って思い出すことにする、という方法があります。裁判官が判決を読み上げる際、「被告人を懲役“よ”ねんに……」と言ったら、執行猶予はつかないのです。つまり、被告人は「『よ』くるな。『よ』くるな。『さん』以下こい。『さん』以下こい。」と思っているわけです(「5年」でも「6年」でもダメですし、3年以下だから執行猶予が必ずつくわけではありませんが、思い出すための架空のエピソードなのでその点のツッコミはなしでお願いします)。

このように、「どう思い出そうか?」という視点が、大人の勉強では重要なのです。

2.徹底的に時間を捻出する

働きながら勉強をされる方は多いです。また、大人になると、子育て、親の介護、孫の世話など、家族のために使う時間も増えてきます。大人は、勉強時間の捻出が常に課題になります。

司法書士試験の合格に必要な勉強時間の記事に書きましたが、私が担当している司法書士試験では、試験までに2000時間程度は勉強時間を確保したいです。

しかし、睡眠時間を削ることは、できる限り避けてください。睡眠時間については諸説ありますが、徹夜や極端な短時間睡眠が記憶の定着や体調に悪いということに対してはあまり異論がないと思います。

ではどうするかですが、勉強時間を捻出する方法としてよくいわれるのが、「スキマ時間を活用する」です。歯を磨いている時間から始まり、通勤時間、仕事の休憩時間などスキマ時間をとにかく集めて勉強時間に充てましょうといわれます。もちろん、これは行ってください。

ただ、「これだけでは足りない」という方が多いと思います。スキマ時間はそもそも「勉強できる時間」です。それだけで足りないのであれば、現在「勉強できないと思っている時間」を勉強に充てるしかありません。以下は、私が実践している例です。

・世間話に必要な知識はネット記事で済ます

→話題のドラマや映画はストーリーをまとめたネットのニュース記事などを読むことで済ませます。実際に観なくても、あらすじがまとめられていますので、それらをチェックすることで世間話にはついていけます。私は、講義でドラマの内容に触れることがありますが、ほとんど観たことがないドラマです。そもそも私の部屋にはテレビがありません。

・仕事の連絡方法をメールからLINEに切り替える
メールは時間泥棒です。「いつも大変お世話になっております。」といったお決まりの文句や自分の連絡先を貼り付けたり、宛先をクリックして選んだり。しかも、開封確認をつけなければ相手が読んだかわかりません。受信メールも届いたことを知らせるだけの返信をする、といった無駄な作業に時間を取られます。それに対し、LINE(LINE以外のツールでも構いませんが)であれば、そういった煩わしいことがなくなります。LINEはスマホだけでなく、パソコンでも使えます。

「LINEで仕事の連絡するなんて失礼だ」と思われた方もいるかもしれません。現段階ではLINEはビジネスツールとして浸透仕切っているとはいえないかもしれませんが、それくらい思い切らないと、「勉強できない時間」を削ることはできません。

上記のはあくまで例です。「他に削れる時間はないか」と先入観を捨ててゼロベースで考えてみてください。必要だと思っていても、根本から「必要か?」と考えると、削れる時間が出てきます。

3.体力に配慮する

最後は「体力」です。実は、これがかなり大事です。
集中力が続かない……

集中力が続かない……

「集中力が続かない……」「すぐに脳が疲れてしまう……」という悩みを抱えている方は多いでしょう。「自分の頭は勉強に向いていないのかな……」と思ってしまいがちです。

しかし、問題は脳ではなく「体」です。脳が疲れるのではなく、疲れているのは体なのです。同じ姿勢で勉強するだけで首・肩・腰が痛くなりますし、ずっと文字を見ていると眼が疲れてきます。それらが原因で、集中力が続かないと感じてしまい、脳が疲れたと感じてしまうのです。中学生や高校生にはほとんどない悩みが、大人には出てきます。

私は医師ではないので「具体的にこのようにして体のケアをするべきだ」とは申し上げられませんが、「スポーツ選手のように体のケアを考える」ということが重要です。ここまで考えて勉強をしている人はほとんどいませんが、大人の勉強ではここまで考えるべきです。

大人の勉強は、中学生や高校生以上に工夫が必要ですので、以下の3点を意識することから始めてみてください。

1.「記憶する」よりも「思い出せるようにする」
2.徹底的に時間を捻出する
3.体力に配慮する


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