安定した売れ行きを誇るタワーマンション
前回(1997年)消費増税のときほど駆け込み後の反動が大きくはないものの、増税(2014年4月)後の影響がまったくないわけではない。全体の契約率こそ(8月を除き)高水準を維持しているが、新築マンション市場におけるモデルルーム来場数は前年に比べ減少傾向といえそうだ。その中にあって、依然安定した集客と売れ行きを誇るのがタワーマンションであろう。
先日取材で訪ねたタワーマンションの販売現場では、来場数に対する申込率の高さに驚いた。不動産価格の上昇が顕著な都心において、この時期モデルルームに足を運ぶ人は、購入を前提にした前向きな検討客が多いということらしい。将来的な資産価値を評価しているのだ。
これには「タワー居住の一般化」が背景にあるのではないだろうか。地上百数十メートルの高さから見る眺望の魅力、大規模マンションならではの付加価値、そして(個別性のあることだが)換金性の高さが市場に浸透しはじめた、つまりタワーマンションの利点が実証・共有され、それがまた新たな需要を生んでいるのかもしれない。
タワーマンションの魅力
ここであらためてタワーマンションの魅力を整理してみよう。板状型にはない、超高層ならではの良さは、どのようなところにあるのか。まずは、なんといっても眺望であろう。そもそも高層住宅であるマンション居住の利点は「眺めの良い暮らし」が挙げられるが、それを増長させる選択がタワーだ。とくに湾岸エリアは上空から見る景色が素晴らしい。さらにタワー物件に多い再開発プロジェクトは、後々前に建物がかぶさって眺めが遮られる心配が(一般的な開発物件にくらべれば)少ないといえるだろう。
次に、共用施設の充実がある。ホテルのような「上質で大空間のエントランスホール」や友人知人を招待しやすい「ゲストルームやパーティルーム」、誰もが眺望を享受できる「ビューラウンジやスカイデッキ」など。さらに、これらの共用施設は動線が収斂しやすいという単一棟ならではの事情が、付加価値の共有化に有効に働いていると思われる(ツインタワー除く)。
また、空地率の高さにも着目したい。公開空地を設けることで規制緩和を受ける超高層ならではの敷地配置計画が周囲の景観を良好に変える。緑地の創出、歩行者の視野の広がり、接道(または歩道)の改良などだ。道行く人が受ける好印象が、ゆくゆくは資産性につながる可能性を秘めていることはあえて申し上げるまでもないだろう。
タワーマンションは「好立地でこそ成り立つ」事業
昨今、マンション購入の条件に「資産価値の高さ」を挙げる人が増えた。じつは、こうした傾向もタワー人気に拍車をかけているのではないかと推察する。というのも、そもそもタワーにしてまでマンション事業を推進するには、それ相応の立地の魅力が伴わなければならない。なぜなら、竣工まで時間を要し(資金回収までのタームが長い)、さらには様々な世帯を呼び込む必要があるタワー分譲は相応の販売スキルが求められるが、それでもあえて超高層化を選択するのは、好立地ゆえ「所有、賃貸問わず多様な需要」が見込まれるからに他ならない。
つまりタワーマンションは、元来ロケーションなり、ピンポイントなりの立地の良さを兼ね備えているはずだから、それを選ぶということは物件選びのプロセスに欠かせない「立地選定」に悩まなくていい、と考えられなくもないのである。
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