ブラック企業という言葉の台頭
ブラック企業に就職するくらいなら、起業して自由に生きたい
例えば、締切までの数日間、間に合わせるために夜遅くまで残業を命じられたら即、「ブラック企業」認定、なんてこともあるかと思います。オトナ世代にしてみれば、20代の頃は、多少の疑問は感じつつも残業しまくって努力し、それで「いっぱし」の仕事ができるようになったと振り返る方も多いはず。
今の若者世代にはその感覚はありません。特に、顕著なのは就職活動を控えた学生。「ブラック企業」という言葉に過剰反応し、就職に対して恐れを抱いているともいえるでしょう。若者の起業事情を理解する上では、まず、このことを考える必要があります。
多様化する人生設計
オトナ世代のみなさまに、ひとつ、質問します。「そもそも、なぜ、学校を出たあと、会社に就職したのでしょうか?」
この質問、困りますよね。
「それが当たり前だったから」という答えが一番多いかと思います。いい学校に入って、いい会社に就職し、ひたすら出世競争を繰り広げながら、定年まで勤め上げる。それが当たり前だったのですから。
そこから、時代は変わっていきました。終身雇用は崩壊し、転職するのが当たり前の世の中に。さらには、転職と起業、両者を天秤にかけて人生を方向転換するような社会になりつつあります。
さらには、若者世代には、学校を出て、会社に入ることは「当たり前」のことではありません。なぜなら、学校を出た後、いきなり起業するという選択肢もあるからです。
若者が起業しやすくなった環境
それを可能にしているのが、昨今の起業を取り巻く環境です。資本金規制の撤廃、格安家賃のシェアオフィス、店舗を構えなくてもWeb上で展開できるビジネス、メールなどの発達により可能になった在宅勤務などです。もうひとつは、「知識」、「技」、「経験」、「人脈」などの蓄積が、それほど重要ではなくなったという点。Webを開けば、情報は山のように転がっています。技がなければ、何でも外注できるし、経験がなくても自動のソフトウェアが解決してくれます。人脈だってFacebookでつぶやけば、たくさん繋がり集めることができてしまうのです。
「石の上に3年の崩壊現象」
つまりは、わざわざブラック企業に就職して、ツライ雑用や残業をしてまで、学ぶことは少ないと考える若者世代が増えたということです。そんなことをしなくても能力があれば、起業家として自由に生きることができるのですから。就職したら最低でも3年以上は勤めて転職しつつ、コツコツとお金を貯めて、10年かかって起業。そんなオトナ世代の考え方とは一線を画しているといえるでしょう。ガイドはこれを「石の上に3年の崩壊現象」と名付けています。国の制度も変革が必要
そんな若者世代。斬新なアイデアを持つ、優秀な起業家も数多くいます。ただ、日本で起業する場合、まだまだネックがあります。例えば、公的創業融資では、社会での経験年数や経験した役職、自己資金などを重視している点です。若者世代が起業する場合、公的創業融資をあきらめ、数少ないエンジェル(ベンチャーに出資する個人投資家)を探すということをせざる得ないのが現状なのです。
将来、日本が世界の中で生き残るためにも、彼らが起業しやすい環境を整えることが国の緊急課題だと考えます。「経験」を重視した、従来の日本の価値観や制度を少しずつ転換していくことができれば、将来の日本を代表するような企業が輩出されるかもしれません。