半世紀ぶりに訪れた広告業界の変化
しかしここ最近、「続きはWebで」を以前より見かけることが少なくなった。ソーシャルメディアの普及によって状況は大きく変わったのだ。加速度的に増え続ける情報に対して、人々は自分が気になった情報だけを選ぶようになっていった。当然、多くの広告は不必要な情報の一つとして無視されるようになった。情報も要らない、モノも要らない中で、広告が無視されるのは必然の流れだったのだ。この結果、視聴率10%の番組であっても、実際には10%の効果がなくなってしまった。以前のような費用対効果が得られないことに広告主は気づきはじめたのだ。そして「続きはWebで」のフレーズも少なくなっていった。
一方で、存在感を増したのはソーシャルメディアだ。面白い情報、感動した情報、有意義な情報は、消費者自らがどんどん発信し、拡散されるようになった。
・一つの面白い情報が1000人のTwitterフォロワーに発信(1000人)
・そのうち10%が平均200人のフォロワーにリツイート(2万人)
・さらに、そのうち10%が200人のフォロワーにリツイート(40万人)
あくまで仮定だが、1つの情報を1人の人が発信しただけでも以上のようにバイラルし、多くの人達に簡単に到達してしまうのだ。こうしたバイラルにさらなるバイラルが重なればテレビの高視聴率をはるかにしのぐリーチが期待できる。
ここでもう一つ重要なことがある。Twitterを始めとするソーシャルメディアの数字の中には、人々がリツイートなど自らアクションを起こした過程が含まれる。つまり、テレビとは異なり、人々が能動的に情報を伝達しているのだ。
「続きはWebで」というフレーズを最近聞かなくなったのは、Webコンテンツの力がテレビCMを上回りつつあるからだ。今や、企業の中には、Webで人気が出たコンテンツをテレビCMで使うという手法を取る企業も出現してきた。この傾向はますます加速していくことだろう。
次に、コンテンツの強さによってウェブから拡大していった例を紹介したい。
ウェブ発信で人気が出たコンテンツ例
アイス・バケツ・チャレンジ女子校生忍者
「恋するフォーチュンクッキー」 企業ver.
どれもテレビを通じてブームになったものではない。ウェブでブームになったからテレビが取り上げたものばかりだ。ポイントとなるのは、コンテンツそのものの強さなのだ。
このように半世紀ぶりに広告のあり方を揺るがす状況がある。コンテンツが強いものは、インターネットで拡散されるだけでなく、テレビや雑誌にも広まり、人々の話題にものぼる。世の中ではこの強いコンテンツのことをバイラルメディアと呼ぶ。今はまさにバイラルメディアの時代なのだ。
主役交代。広告は消費者が決めるものへ。
今なお、広告コンテンツを制作・発信する権利は広告主が持っている。しかし、広告コンテンツを選択・拡散する権利は消費者が持つ時代に変わった。つまり、広告が成功するもしないも、消費者の判断一つになったのだ。このポイントを理解せず、CM全盛期と同じようなやり方でCMを作ろうとしても、消費者に受け入れられるわけがない。サントリーなど広告を先取りしようとする企業の中には、その事実を認識し、広告コンテンツの作り方を変えて来ているところも増えつつある。企業だけでなく、広告代理店のクリエイターも、マーケッターも、プロモーションのプランナーも、自分自身の感性ばかりを押し付けようとするのではなく、消費者を理解し、彼らのポイントを突くようなコンテンツを開発しなければならない。
主役交代。広告は消費者が決めるものに変わったのだ。