マネジメント/マネジメント事例

予備校から不動産業へのシフトか 代ゼミの強みとは?(2ページ目)

代々木ゼミナールの7割閉校というニュースは、同社が受験産業一辺倒から不動産ビジネス併業へシフトするという、いわゆる業種拡大の流れがその裏にあったようです。業種拡大やその先にある事業転換は、ビジネスに栄枯盛衰がつきものである限りマネジメントにとって企業継続のカギを握る存在であると言えます。今回は、業種拡大や業種転換のあり方と自社の強みを分析することの重要性について、実例をもとに検証します。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

富士フイルムの事業転換はコアコンピタンス分析のたまもの

自社の強みを活かした業種拡大、転換の成功例として近年注目を集めている企業に、富士写真フィルム(以下富士フィルム)があります。富士フィルムは言わずと知れた世界的写真フィルムメーカーです。しかし、90年代後半から急速に進展した写真デジタル化の流れは写真フィルムの売上を直撃します。

写真フィルム関連売上は00年以降毎年年率10%超の減少が続き、さしもの超優良企業も稼業消滅の危機感を募らせたのです。そんな窮地で同社が考えたことは、自社の強みを今一度見直し、新たな分野に事業を拡大して企業継続の危機を救うことでした。

解説

富士フィルムを救ったスキンケア事業はコアコンピタンス分析が生んだ

この時の同社におけるコアコンピタンスの定義は、「自社固有技術の応用で、新しい事業分野においてオンリーワンを開発できるもの」であったと言います。そこで着目されたのものが、長期間写真の品質を保全するために利用されていた同社のコラーゲン技術でした。同社にはコラーゲンに関する膨大な知識の蓄積と、他社にはない多種多様なコラーゲン製造の技術があったのです。

この技術を応用して生まれた新規事業が、スキンケア化粧品事業です。06年の事業化以降、折からの女性向け頭皮ケア市場の隆盛とも相まって順調に推移し、現在では大幅に減じた写真関連のイメージング事業の穴を埋める存在にまで成長しています。アメリカの写真フィルムメーカー大手コダック社が、12年に破産法申請の憂き目にあうという対照的な結末を迎えており、富士フィルムの事業拡大は稀に見る好事例であると各方面から賞賛されています。

全くの畑違い分野への事業進出は、一見すると「武家の商法」ではないのかと思われがちな企業の事業拡大ですが、成功する事業拡大、転換の裏には必ずしっかりとした自社のコアコンピタンス分析が支えているのだということは知っておきたいマネジメントのセオリーなのです。
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