長くランニングを続けるために……「走れる」ことによって起きる危険
ランニングを続けるためには
マラソン人口が増加したことも、こうした身近さが1つの要因と言えるでしょう。日頃からダイエットや健康を目的として「何かしたい」と考えている方は多く、その手段としてスポーツは有効です。そしてそのスポーツの中でも走ること、つまりランニングはすぐにでも取り組むことができます。
しかし実際のところ、ランニングはそこまで簡単なスポーツではありません。気晴らしにたまに走る程度であれば別ですが、次のような目的を持って走る場合、そこには大きな落とし穴が存在するのです。
- 走ることでダイエットしたい
- 競技としてランニングに取り組みたい
- ランニングを習慣的に長く続けたい
「走れる」ことによって起きる危険
とにかく走り出してしまう
「やってみる」ということは大切です。特にスポーツがこれまで身近ではなかった人は、走ってみることで得られる気付き、あるいは楽しさがあるでしょう。さらにそこで、こんなことを感じる人が多いはずです。
「俺(私)って、意外と走れるじゃん」
初めてランニングに取り組む人にとって、走るということは1つのチャレンジです。そしてチャレンジということは、自分の中で大きな壁という意識があります。
しかし先に述べた通り、「走ること」自体は誰にでも出来てしまいます。数kmであれば、多くの方が難なく走れてしまうでしょう。困難と思っていたことが出来たとき、人は大きな喜びや達成感を得ます。
すると、どうなるか。
翌日も、そしてさらに翌日も走ります。多くの方は、1人でランニングに取り組むことでしょう。場合によっては、さらに走る距離を伸ばしていきます。ただ、ひたすら走り続ける。ダイエット目的の方であれば、走ることが義務であるかのように錯覚してしまうこともあるでしょう。
もちろんその結果として、同じ距離を楽に走れるようになり、走り続けられる距離も伸びていくはずです。体重にも変化が出てきます。しかしここに、実は危険が隠れています。それが『怪我』というトラブルです。
例えば、輪ゴムをイメージしてみてください。
輪ゴムの両端を持ち、どんどん伸ばしていきます。輪ゴムはその伸縮性によって伸び続けますが、それと同時に、伸びた分だけ細くなっていくはずです。そして限界を越えると…ブチッと切れます。しかし切れるまで、恐らく「まだ大丈夫」という考えが頭にあることでしょう。
人の身体も、この輪ゴムと同じです。ランニングでは、これまでの日常ではありえなかったような負荷が身体に掛かっています。それは、疲労や痛みとして感じているはずです。しかし多くの人は、次のように考えます。
「痛みなんて、すぐに消えるだろう」
「疲労は走っているのだから仕方ない」
「疲れはあるけど、まだまだ走れるはず」
「痛みや疲労を無くすには、もっと走って力をつけなければ」
特にスポーツ経験の無い方は、こうした思考に陥りがちです。当然といえば当然。痛みや疲労を放っておくことが、どのような結果を招くのか知らないのですから。しかし痛みや疲れが蓄積されれば、人の身体もまた輪ゴムのように壊れてしまいます。
走るために身に付けたい知識
走ることは誰にでも出来ますが、走り続けたいのであれば、身に付けるべき知識というものがあります。これは、ダイエット目的でも競技志向でも同様です。1)走るための技術
まずは、走り方を学びましょう。ランニングフォームを整えるだけで、身体にかかる負荷が軽減されます。例えばバランスが崩れたまま走っていると、負荷に偏りが生じることで、左右一方の脚だけが傷んできます。
特に多くのランナーが陥りがちなのが、腸脛靭帯炎です。その原因として、内転筋を使わずに外側の筋肉にばかり頼って走ってしまうことが挙げられます。その他に膝を痛めやすい人は、もしかしたらランニング中に腰が下がってしまい、余計に体重が乗ってしまっているのかもしれません。こうしたことも、原因が分かれば対策を講じることが可能です。
走れば走るほど、身体への負荷は大きくなります。それならば、怪我なく走り続けられるように、その負荷を軽減する走り方を学ぶこと。走るための技術を獲得することで、長く、そして快適にランニングを続けられるでしょう。
2)癒すための知識
スポーツで失った栄養素は食事だけで賄えない場合もある
疲労や痛みには、適切なケアが必要です。身体を癒やし、コンディションを整えてこそ、毎日快適なランニングが行えるというもの。そのためには、ストレッチやマッサージ、サプリメンテーションを始めとした知識が重要になります。
例えば「アイシング」は、さまざまな痛みに対して有効なケア方法です。患部を冷やすことによる治癒ですので、リスクも伴いません。
傷んだ身体で走り続ければ、いつしか大怪我に繋がってしまうかもしれません。そうすれば、完治するまで走ることができなくなります。あるいは、暑い日に水分補給を行わず、無理して脱水や熱中症などで倒れてしまうのも同様です。
場合によっては、接骨院などで定期的なメンテナンス・ケアを行うのも良いでしょう。鍼治療や電気治療など、自宅では出来ない治療を受けられます。ランニングは普段とは異なる負荷を身体に掛けていますので、適切なケアによって疲労や痛みを癒さなければ、身体が壊れてしまうのは当然です。
続けることに意味を持つ
ランニングに取り組む方々の多くは、『距離』を基準に考えがちです。ランナー同士の会話でも、よく月間走行距離(1ヶ月で何km走ったか)が話題に挙がります。分かりやすい指針ですし、「今月は100km走った!」
などと言うと、なんだか自分が頑張った気がしてきます。
しかし距離ばかりにとらわれていると、非常に危険です。特に先に挙げたような技術・知識を持たない状態では、怪我などのトラブルに繋がるのは目に見えています。実際に、ランニングを始めたものの、怪我ばかりしているという方が跡を絶ちません。これは、とてももったいないことです。
例えばランニングを続けることで、体重が5kg減ったとしましょう。しかし無理なランニングを続けたことで、怪我で1ヶ月間にわたり走れなくなったら…。5kgなんていう体重は、すぐにリバウンドしてしまいます。
これは、競技志向の方も同じです。せっかくフルマラソンを走りきれるレベルに達したのに、怪我で走れなくなる。すると体力や筋力が元に戻り、またトレーニングのやり直しになります。
楽しいランニングだからこそ、長く続けていきたい
「早く痩せたい」「早く走れるようになりたい」と焦る気持ちは分かりますが、これは逆効果。継続による積み重ねによってこそ、ランニングは効果を発揮するものです。特にランニング初心者であれば、まだ強い強度に耐えられるだけの身体ができていません。怪我などのリスクは、一層高い状態なのです。
トップランナーを見れば、驚くほどの距離を走りこんでいます。ですから、つい「もっと走らないといけない」と錯覚しがちです。しかし、距離を結果に結び付けられるのは、土台となる技術や知識がある前提。トップランナーは、それこそ長い間のトレーニングによって、その技術や知識を身に付けています。同じことをしようと思っても、そもそも無理というものでしょう。
走り“続ける”こと。そのためには、思い切ってランニングを「休む」ことも必要になるでしょう。何のために走るのか、あるいは、走ることによって何を得たいのかを考え、無理なくランニングに取り組んでほしいものです。
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