美人投票とマンション選び
金融市場における投資概念に「美人投票」なる理論がある。野村証券のホームページに記載されている解説によると、近年、マンション市場では資産価値を求める傾向が強まるばかり。再開発に五輪招致、アジアの経済成長も東京への期待(地価)を押し上げているようだ。そこで不可欠な住む所に資産性を求めれば、マイホーム取得と資産形成が同時にできるのではないかとの思考である。有名な経済学者のケインズは、玄人筋の行う投資は、投票者が100枚の写真の中から最も容貌の美しい6枚を選び、その選択が投票者全体の平均的な好みに最も近かった者に賞品が与えられるという新聞投票に見立てることができるとした。
各投票者は、自身が最も美しいと思う写真を選ぶのではなく、他の投票者の好みに最もよく合うと思う写真を選択しなければならないことを意味する。
株式投資に関しても、市場参加者(=投票者)の多くが、値上がりするであろう(=容貌が美しいであろう)と判断する銘柄(=写真)を選ぶことが有効な投資方法であるということ。
しかし、マイホームと資産価値は、もし前出の「美人投票」になぞられるとするならば、考え方として真逆といえなくもない。マイホームは本来、自分や家族の価値観(住み心地)を重視して選ぶべきものなのに、「自身が最も美しいと思う写真を選ぶのではない」というのだから。投資は「多くの第三者が評価すると判断した物件を選べ」という。
例えば、「最寄駅からの距離」が資産性に連動するとの実証結果を目にしたことがある人も多いと思う。徒歩1分の物件が買った値段より高く売れたというデータである。駅から近いことは自身にとっても利点。だがこれは「第三者(市場)にとってわかりやすい要素・指標」ということに過ぎない。問題は広さと価格のバランスだろう。希望する広さと自分の予算がうまく合致し、それでいて資産性の高い物件を選ぶことができるかのかどうかがポイントになる。
不動産特有の事情「予算の縛り」
マイホーム特有の事情として、高額ゆえ予算の縛りが絶対的であることが挙げられる。資産価値の高いエリアが都心とするなら、最も中心にある千代田区や港区の物件を買うべきといいたいが、現実にはそうなりにくい。誰もが手の出る相場ではないからだ。自分の予算の範囲内での資産価値となると、難易度は一気に上がることを忘れてはならないだろう。仮に、2500万円以内で探していたとする。コンパクトタイプの投資物件ならいざ知らず、ファミリータイプとなればやはり都心から離れ郊外で探さざるを得ないだろう。そうなれば、需要の高まりが恒常的と予測がたつ場所が(仮にあったとしても相当)限られてくるはずだ。
ヴィンテージマンションと資産価値は矛盾する!?
イメージフォト
しかし、美人投票の解説にあるように「自分が住みたい」ではなく「他人が評価する物件」への投資が求められるなら、相場よりワンランク上で構成された不動産は市場適合性が高くないと考えるのが自然だろう。5000万円の物件が主力の地域であれば、7000万円のヴィンテージマンションを選ぶよりも5000万円に限りなく近い物件を選んだほうが有効需要は多いと思えるからだ。つまり、(あくまで理論上は)予算の縛りがある不動産において地域相場を逸脱した選択はリスクを伴うということ。
「自分が住んでみたいマンションなら、他人も同じように思うはず」との発想は、資産価値を第一義に購入する場合は正しい判断とはいえないだろう。需要が最も集中しそうな地域および物件を「自分の住まいの価値観を外した」上でピックアップするべきなのだろう。
【関連記事】
2014月10月以降販売予定の注目マンション