自宅のようにサウナを利用する
3つ目は、実家+サウナ。こちらはもっぱら中年男性単身者のマルチハビテーションスタイルです。実家にはたまに帰る程度で、サウナを根城に、ここから仕事へ出かけ、また戻ってくるという生活。サウナの従業員とは顔なじみで、併設のレストランで一言「いつものビール」と言えば、阿吽の呼吸でアサヒ・スーパードライが運ばれてくるのです。
サウナは入浴料、食事代で一晩5,000円程度はかかります。が、月の半分ここで暮らす人もいれば、ほとんど毎日暮らしている人もいます。それでもアパートを借りるより安上がりです。まるでサウナが自宅のようです。
でも、なぜサウナなのでしょうか。現実の世界でパートナーいない歴が長期化する中年単身者は、バーチャルな世界で誰かとつながったりすることで心理的な孤立感から救われることがあると聞きます。一晩5,000円支払いさえすれば、自分を大切にしてくれる存在(サウナの従業員)が得られる、というのが理由のひとつではないでしょうか。
新しいマルチハビテーションはいずれも実家を起点にシェアハウス、友人宅、サウナなどあまりお金をかけずに人と交流できる場を得ることが大きな目的のように思われます。これは単身者が陥りがちな孤立に対する自衛策ともいえるのではないでしょうか。
こうしたことから、人との交流を目的としたマルチハビテーションのバリエーションは、この先もっと増えていきそうに思われます。