ヘルシンキの夏至祭の開催地としても有名な、自然あふれる小さな島
島の自然を損ねないように、移築されたそれぞれの建築は森のなかに溶け込むようにひっそりと点在している
ヘルシンキの中心街からバスで約20分ほど北上した海辺に、本土から短い橋で繋がっている小さな島があります。島の名前はセウラサーリ(Seurasaari)。ぐるっと一周散歩するだけなら1時間もかからない規模の島ですが、この島の大部分は、セウラサーリ野外博物館(Seurasaaren ulkomuseo)という夏季限定 (5月半ば~9月半ば)の歴史あるミュージアムとして、毎年緑の揺れる季節に賑わいます。ただし島自体には年中入れるようになっていて、海水浴や森林散策目的で島を訪れる人も多くいます。
バス停から短い橋を渡った先に、セウラサーリが待っている
また、6月半ばの週末に訪れる「夏至祭」の前後は、都市在住者の大半が帰省し、空っぽになったヘルシンキでは多くのお店や施設も閉まって静かになってしまう中、このセウラサーリではヘルシンキに留まる市民や観光客のために、大きな夏至の前夜祭イベントが開かれます。伝統にのっとった大焚き火や舞踏なども見られるので、夏至祭期間にヘルシンキを訪れる人は、ぜひこの島を訪れてみてください。
美しい森のなかに点在する伝統建築を訪ねてゆく野外博物館
外観だけでなく、各建物の内部の様子もじっくり見て回れる
野外博物館、すなわち島そのものが展示会場であるこの大胆なミュージアムの「展示品」は、フィンランドの各地から移築された、1700年代以降の建築物です。国内のあちこちから丁寧に移築・修復保存された本物の建物が、外観はもちろん内部の様子や実際の調度品も含めて公開されています。
ロシア建築の影響が見られる木造の鐘楼
ヨーロッパの北端に位置するフィンランドは貧しく資源も乏しい小国だったので、近代建築が注目されるまでは、歴史的に他のヨーロッパ諸国の華美な建築文化に追従することも叶いませんでした。けれど、東はロシア、西はスウェーデンと文化の大きく異なる2つの大国に国境を接し、北部ではサーメ民族が独自の生活様式を築いていました。それゆえ、これらの近接文化の影響を少なからず受けながら、エリアによって多彩な特色を持つ独自の素朴な建築文化を育んできたのも事実です。本来ならば、フィンランドをぐるりと周遊しないと直に見ることのできない地域ごとのリアリティある伝統建築を、ひとつの島を散策しながら、わかりやすい図解やスタッフの説明とともに見て学んで回れるのが、セウラサーリ野外博物館の魅力なのです。
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