ワイン/ワインの種類

ワインの生産国ごとの特徴

ブドウができる国であれば、どこでもワインを造っています。だから、本当にたくさんのワインが造られているのです。あまりにも多くて、覚えきれませんよね。まずは大雑把に国別の特徴を抑えてみると、すべてを覚えていなくてもおよその検討がつくのではないでしょうか。もちろん例外はありますが、概要をお伝えします。

名越 康子

執筆者:名越 康子

ワインガイド

ニュー・ワールドとオールド・ワールド

ワインの世界では、ニュー・ワールドとオールド・ワールドという言葉を使います。日本語ではもちろん新世界と旧世界です。歴史上の「新大陸」という言い方と同じ発想で、もともとヨーロッパで発展したワイン造りが、それこそ新大陸に浸透していったことを踏まえて、ニュー・ワールドという言葉が生まれ、その対比としてオールド・ワールドという言葉も使うようになりました。

昔のプレス機やトラクター

昔のプレス機やトラクター

例えばオールド・ワールドに含まれるのは、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、ドイツ、オーストリア、スイス、ハンガリーといった、本当に伝統的なワインの生産国です。

対してニュー・ワールドに含まれるのは、アメリカ、チリ、アルゼンチン、ブラジル、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、そして日本や中国、インド、更に南アフリカも含まれます。それにレバノンやイスラエルは、ワイン造りの歴史自体は古いのですが、現代のワインの世界の位置づけとしてはニュー・ワールドに分類されるというのが面白いところです。

オールド・ワールドとニュー・ワールドの違いは、ワイン造りの歴史の長さだけではありません。

オールド・ワールドの場合は、土地の気候や土壌に合わせて、長い年月をかけて適応するブドウ品種が選別されてきたので、およそ産地ごとに栽培品種が決まっています(もちろん例外もあります)。ですから、ブドウ品種がラベルに記されていないことが多く、ブドウ品種より土地の個性をワインに表そうとする傾向が強くなります。

一方、ニュー・ワールドでは、もちろん産地の気候や土壌に合わせてブドウ品種の選択はするのですが、ほとんどのブドウ品種がオールド・ワールドからもたらされたものです(これにも例外があります)。そして、この産地ではこのブドウ品種でなければならない、という縛りがゆるいため、とても自由に様々な品種を栽培する傾向にあります。ラベルにも、ブドウ品種名が記されていることが多いのも特徴です。とはいえニュー・ワールドでもここ10年ほどの間に、産地ごとの個性を確立したいという動きが活発化しているのは事実です。

オールド・ワールドの国々

■フランス
日本で一番輸入量の多いフランスワインですから、最も馴染み深いのではないでしょうか。シャンパーニュをはじめとするスパークリングワイン、ブルゴーニュ、ボルドー、アルザス、ローヌ、ロワールなどなど、有名産地も多いですね。各産地で試用可能なブドウ品種や生産規定、ヒエラルキーが最も整理整頓されて決められている国でもあります。この国の固有品種が世界各国へ亘り、多くのワインが造られてきたという歴史があるため、ニュー・ワールドからも目標とされることが多い国でした(最近ではニュー・ワールドの生産者も独自路線へ向かい始めています)。

同じ地域でもラベルデザインは様々

同じ地域でもラベルデザインは様々

■イタリア
国の北から南まで、ブドウ栽培をしていない州はない、まさにワインの大地=エノトリア・テルスです。固有のブドウ品種もとても多く、とても覚えきれないほどの数があります。最も有名なのは北イタリアのピエモンテ州の赤、バローロ、バルバレスコ、ヴェネト州の白ソアーヴェ、トスカーナ州の赤、キャンティ・クラシコ、ブルネッロ・ディ・モンタツチーノなどなど、挙げればキリがありません。ワインのない食事はない、とされていた国なので、食中酒として理想的なワインが多いのも大きな特徴です。

■スペイン
ブドウ栽培面積が世界一のスペインでは、様々な産地、そして固有品種があります。最近日本でも、スパークリングワインのカバもたくさんの銘柄を見かけますね。最も有名なのはリオハやリベラ・デル・ドゥエロの赤ワインでしょうか。続いて、プリオラート、ビエルソの赤、リアス・バイシャスやルエダの白。大雑把ですが、赤は凝縮したタイプ、白は爽やかなタイプが多いですね。酒精強化ワインのシェリーも、スペインの伝統的なワインです。

■ポルトガル
最も有名なのは、濃厚でアルコール度数も高い赤の甘口ワイン(酒精強化)、ポーロ(ポルト)ですが、最近スティル・ワインも注目です。北部で造られる爽やかな白ヴィーニョ・ヴェルデ、ポルトで造られる凝縮した辛口赤ワインの他、アレンテージョやダンの赤ワインも頭角を現しています。固有品種もたくさんあります。小さな島で造られる酒精強化ワインのマデイラもポルトガルのものです。

■ドイツ
白ワインの生産量が多く、特にリースリングが最も有名ですが、他にミュラー・トゥルガウ、シルヴァーナーなども使われています。赤は、シュペートブルグンダーと呼ばれるピノ・ノワールから造られ、日本市場でも時々見かけます。ドイツの白ワインは甘口でアルコール度数が低いタイプが有名でしたが、最近では辛口の白ワインも増えてきています。いずれにしても、冷涼な気候を反映したとても爽やかなワインに仕上がります。

熟成用の樽

熟成用の樽

■オーストリア
固有品種のグリューナー・フェルトリーナーによる辛口の白ワインが、ここ15年ほどで随分有名になりました。軽やかなものから濃厚なタイプまであります。赤も、ブラウフレンキッシュ、ツヴァイゲルトといった固有品種があります。

■スイス
生産量が少ないので、ほとんど国内で飲まれてしまい、日本で出会う機会は多くありませんが、とてもピュアな白ワインを中心に造っています。シャスラーから造られる白は、和食にもよく合うエレガントなワインです。赤はピノ・ノワールやガメイから造られます。

■ハンガリー
貴腐ブドウから造られる、褐色をした濃厚な甘口ワインのトカイが最も知られています。トカイに使われる品種フルミントを辛口に仕上げた白や、フランス系品種を使った辛口の赤・白スティルワインも増えています。

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