バレエミストレス兼副芸術監督に就任
Noism05『no・mad・ic project-7 fragments in memory』(2005年)より 「Under the marron tree」 撮影:瀬戸一美
「穣さんが危うくなったときに出ていかなきゃいけないひと。たぶんそれが、私が置かれてる立場であり責任だと思う」
スタッフとのやりとりにはじまり、カンパニーの現況や運営状況まで。当初芸術監督がひとりで抱えてきた責任と負担を、今は彼女が共に背負う。そして、もしものときに備えるという。
「たまに穣さんが“オレが死んだらどうする?”って聞くんです。“そうなったら、Noismをどうする?”と。“そりゃ続けるでしょうね”って答えるんですけど……。ヘンな夫婦ですよね。“オレが死んだら保険がどう”とかではなく、“カンパニーが”っていう話になる。ふたりして24時間、考えるのはNoismのことばかり」
カンパニーの休みは月曜と隔週の日曜日。それ以外は朝のレッスンからリハーサルまで、スタジオに籠もり踊りと向き合う。スタジオを離れても、身体のメンテナンスに事務作業と舞踊から解放されることはない。それでも、同じ方向を見つめているからこそ乗り越えられるものがあるのだろう。彼女の言葉には常に、金森穣へ対する称賛の念が込められる。公私共にひとときも離れず時間を共有し、全てを知り尽くし、それでもなお「尊敬することしかできない」と語る。
「そこは本当に変わらないところ。私はもう何回も穣さんにクビだと言われてるし、私自身何回もNoismを辞めようとした。それでもしつこくいる理由としては、金森穣というひとに惹かれ、金森穣というひとの作品を踊りたいという気持ちが根底にあるから」
ちなみに、夫としての不満は? と聞くと、これまた「全くない」とキッパリ。尊敬すべき芸術監督は、理想のパートナーでもあるようだ。
「本当に優しいんです。リハーサルで疲れてご飯をつくれなくても穣さんは全然OKで、どこかに食べに行こうと言ってくれる。料理と掃除は私、洗い物と洗濯物を畳むのは穣さんがやってくれる。あと、笑いのツボが一緒なのがいいですよね。ふたりでいつまでもふざけていられるので、その辺は合ってるんだろうなって思います」
Noism1『OTHERLAND』より 「Psychic 3.11」 撮影:村井勇