世界遺産/世界遺産関連ニュース

2014年新登録の世界遺産(3ページ目)

2014年6月、カタールのドーハで行われた第38回世界遺産委員会で新たに26件の世界遺産が誕生し、世界遺産総数はついに千件を突破して1007件となった。日本の物件では「富岡製糸場と絹産業遺産群」の登録が決定し、日本で18件目の世界遺産となった。今回は新登録の世界遺産全リスト(解説付き)、拡大された世界遺産、危機遺産リストの変更点等、第38回世界遺産委員会の概要を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

2014年新登録の世界遺産全リスト 文化遺産 前編

ベト・グヴリン

世界遺産「ユダヤ低地の洞窟世界マレシャとベト・グヴリン」の構成資産であるベト・グヴリンの地下空間。人々は天然の洞窟と石灰岩を切り出してできた人口洞窟をつないで巨大な地下都市を築き上げた

新しい世界遺産と拡大された世界遺産のすべて紹介しよう。リストは文化遺産・自然遺産・複合遺産の順番で、各遺産内は緊急登録物件→ヨーロッパ→アジア→オセアニア→北アメリカ→南アメリカ→アフリカの順に表記した。

なお、世界遺産の日本語名はガイドによる適当な訳なので参考程度のもの。世界遺産とは、世界遺産リストに記載された物件を示し、そのリストは英語とフランス語で書かれている。併記の英語名が正式名称だ。

<文化遺産21件>

■オリーブとワインの土地パレスチナ ~南エルサレム、バティールの文化的景観
Palestine: Land of Olives and Vines - Cultural Landscape of Southern Jerusalem, Battir
パレスチナ、文化遺産(iv)(v)
緊急に保護を必要とする物件に適用される緊急登録での申請で、世界遺産リストへの登録と同時に危機遺産となった。緊急登録の理由はイスラエルの分離壁建設計画による景観の破壊。バティールはエルサレムの南西7kmにあり、古代からエルサレムの衛星都市として繁栄した。古来オリーブやブドウの生産が盛んで、石を積み上げて造った棚の壁は総延長554kmに及ぶ。こうした壁や地下水を利用する灌漑システム等は現在も使用されており、人と自然の共同作品=文化的景観を構成している。

■ユダヤ低地の洞窟世界マレシャとベト・グヴリン
Caves of Maresha and Bet-Guvrin in the Judean Lowlands as a Microcosm of the Land of the Caves
イスラエル、文化遺産(v)
聖書にも記載されている古都マレシャと、ローマ都市として繁栄したベト・グヴリン。人々はこれら2都市の地下に広がる白亜層から二千年以上にわたってから石灰岩切り出しており、セメントや漆喰を作る材料にしていた。その後、できあがった広大な地下空間を利用した地下都市が形成され、居住地や礼拝堂、貯水槽、墓地などが建設された。地上・地下両層に広がる遺跡が世界遺産に登録された。

■ピエモンテのブドウ園景観:ランゲ・ロエロとモンフェッラート
The Vineyard Landscape of Piedmont: Langhe-Roero and Monferrato
イタリア、文化遺産(iii)(v)
「ワインの王」バローロや、「ワインの女王」バルバレスコで知られるピエモンテ州南部のブドウ園。ランゲ・ロエロとモンフェッラートでは日当たりのよい丘陵地帯を上手に利用して、長い時間をかけてすぐれたブドウ品種や土壌を育て、唯一無二のワインを作り上げてきた。棚が広がるブドウ園は周囲の景観とよくマッチしており、山や川、村、城、教会、工場などとともに美しい文化的景観を築き上げている。

■ファン・ネレ工場
Van Nellefabriek
オランダ、文化遺産(ii)(iv)
1920年代にロッテルダム近郊に建てられた紅茶やコーヒー、タバコの生産工場。鉄筋コンクリート造りで、自然光を取り込むために当時の新技術であるガラスによるカーテンウォール(上部の重さを支えない、貼り付けただけの非耐力壁)を採用。整然と並んだこれらの工場群は道路や運河、鉄道で接続されている。機能性と美観が融合した画期的な建築で、以後の工場・都市デザインに大きな影響を与えた。

■コルヴァイのカロリング朝期ウエスト・ワークとキウィタス
Carolingian Westwork and Civitas Corvey
ドイツ、文化遺産(ii)(iii)(iv)
カロリング朝は現在のフランス・ドイツ・イタリアの原型となるフランク王国の全盛期を築いた8~10世紀の王朝。特にカール大帝はローマ教皇から皇帝の冠を授かり、ローマ帝国とその文化の復活が叫ばれた(カロリング・ルネサンス)。カロリング朝期を代表する建物がコルヴァイ修道院で、特に西面に備えられた聖堂(ウエスト・ワーク)には塔が備え付けられ、のちの大聖堂のファサード(正面構造)のモデルとなった。キウィタスとは都市を意味し、修道院近辺の住居跡なども登録された。

■ブルサとジュマルクズク:オスマン誕生の地
ブルサのイェシル・ジャミイ

ブルサにあるイェシル・ジャミイ(緑のモスク)のミナレット

Bursa and Cumalikizik: the Birth of the Ottoman Empire
トルコ、文化遺産(i)(ii)(iii)(iv)(vi)
ブルサはオスマン帝国(オスマン・トルコ)最初の首都が置かれた土地で、ジュマルクズクはその東約10kmに位置するオスマンの古都。中央アジアから流れてきたトルコ人がアナトリア高原に進出し、現在のトルコの礎となったのがオスマン帝国だ。ブルサにはモスクやマドラサを中心とした首都遺跡のほか、初代皇帝オスマン1世をはじめとする陵墓も残されている。建築にはビザンツ(東ローマ)帝国をはじめとする西ヨーロッパと、イスラム帝国をはじめとするアジアの文化の融合が見られる。

■ペルガモンとその多層文化の景観
Pergamon and its Multi-Layered Cultural Landscape
トルコ、文化遺産(i)(ii)(iii)(iv)(vi)
紀元前3~前2世紀に繁栄したペルガモン王国の首都遺跡。マケドニアのアレクサンドロス帝国の下で誕生した都市で、小高い丘に築かれたアクロポリスにはゼウスの祭壇やアテネ神殿、広場アゴラなどが設置されており、ギリシアのポリスの影響が随所に見られる。その後ローマ帝国に支配されて王国は滅亡するが、水道橋やトラヤヌス神殿、噴水などが築かれて街の繁栄は続き、ビザンツ帝国、オスマン帝国の時代に入ってもヨーロッパとアジアをつなぐ要衝として発展した。

 

■アルデシュ県、ショーヴェ=ポン・ダルク洞窟で知られるポン・ダルクの装飾洞窟
Decorated cave of Pont d’Arc, known as Grotte Chauvet-Pont d’Arc, Ardeche
フランス、文化遺産(i)(iii)
動物をはじめとする千点を超える壁画が残されているショーヴェ洞窟。3万年以上前から描かれた世界最古級の壁画群で、2万年ほど前に落石によって密封されたことで、保存状態もきわめて良好だ。これらの壁画は動物をデフォルメしたもので、美的にも技術的にもきわめて重要な表現が多数含まれている。現在のヨーロッパでは見られないサイなどの動物も描かれており、当時の環境を知るうえでも重要な証拠となっている。

■ボルガル歴史的考古学的建造物群
Bolgar Historical and Archaeological Complex
ロシア、文化遺産(ii)(vi)
ボルガルは7~15世紀にボルガ川とカーマ川の合流地点で繁栄した中世都市。8~9世紀はカスピ海北部におけるイスラム教の中心地で、13世紀にモンゴル軍が猛威を振るったあと、キプチャク・ハン国やカザン・ハン国の核心都市となり、15世紀にモスクワ大公国に併合されるとキリスト教が広がった。ステップロードを通る東西貿易の要衝でもあり、モスクと教会が混在していたり、建築様式が融合していたりと、さまざまな文化交流が見られる。
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