今回はアーティストの奥田花純さんとペアを組みます。ソリストとしてパートナーを引っ張っていかなければ、という想いはありますか?
奥村>奥田さんとはバレエ団に入団する前に、バレエ協会の舞台で一度『ジゼル』のペザントのパ・ド・ドゥを踊ったことがあります。バレエ団に入ってからも軽く絡んだことはありますが、こういう大きな作品でパ・ド・ドゥを踊るのは今回が初めて。でも彼女とは年齢もそれほど離れてないし、気楽にできる関係なのでとてもやりやすいです。僕もまだ入団して三年目ですし、奥田さんもその一年前に入ったばかりなので、ダンサーとして相手を引っ張っていこうという気負いはあまりなく、同じ立場でやっています。主演としての責任というのもあるけれど、僕は全員で盛り上げていけたらと思っていて。みなさんプロフェッショナルな方ばかりで、ひとりひとりが強い個性で輝いてる。だから、むしろその中に埋もれてしまわないようにしなければと。一流のダンサーの中で消えてしまわないように、自分の持てる最大限の力を出すのが何より大事なことだと思っています。
日替わりでの上演となりますが、他のキャストの踊りが気になることは?
奥村>同じパートを踊るときは、やっぱり他の方の舞台は観ます。みんなある程度までくると、難しいポイントというのはだいたい同じ。“あそこ上手くいくかな?”“ここ大丈夫かな?”と、応援する気持ちで観ています。あと今回は自分たち以外の方はプリンシパルばかりなので、負けないようにじゃないけれど、みなさんに追いつくような踊りをしなければと……。僕の日を観に来た方に、“やっぱりプリンシパルの方が良かった”と言われないような踊りをしたい。自分の個性をきちんと出して、お客さまが満足してくれる舞台ができたらなと思っています。
『ドン・キホーテ』(2013)
入団以来着実にキャリアを重ね、昨年初主演を務めた『ドン・キホーテ』では舞踊批評家協会新人賞にも輝くなど、ダンサーとして評価と注目は高まるばかり。ご自身の中の手応えはいかがですか?
奥村>自分ではよくわからないけれど、評価していただけるのは嬉しいです。ただ、ひとつ上手くなるとまたひとつ出来ていない部分がより際立つような感覚が自分の中にあって、踊れば踊るほど課題が出ててくる。やればやるほど気になる部分がどんどん増えていくので、上手くなっても上手くなっても全然終わりがないというか……。奥村さんの今の課題は?
奥村>言葉にするのは難しいですね。“踊りをもっと上手に”と言ったら、何だか言葉が足りない感じになってしまうんですが……。動きの質や繋ぎ、滑らかさといったものをもっと出せるようにしていきたい。バレエってやっぱり技術だけのものじゃない。踊りの質を高めていきたいし、どんどん磨いていかなければと思っています。