企業のIT活用/IT関連法律の注意点

利用登録企業が35万社を超えた電子手形(2ページ目)

債権の内容を紙ではなくコンピュータで記録管理する電子手形「でんさい・でんて」が登場。大手企業は手形の印紙代などをコスト削減できるので取引先に電子手形を使うよう要請しています。ある日、取引先から「電子手形で支払ってもいい?」と問い合わせがくることになります。

水谷 哲也

執筆者:水谷 哲也

企業のIT活用ガイド

電子手形の発行と受取

FAXやメールで電子手形の発行や支払の連絡がある

FAXやメールで電子手形の発行や支払の連絡がある

電子手形を振り出す企業は取引金融機関を通じて電子債権記録機関(でんさいネットなど)に電子手形発行の「記録」を申請します。申請があると電子債権記録機関からFAXやメール等で受取企業へ電子手形の振出予定が通知されます。事前に電子手形の受取予定がわかる仕組みになっています。

取引日(品物の納品など)に電子債権記録機関に電子手形情報が記録されると「振出」の完了になります。「振出」記録が終わると受取企業は受取内容の照会をすることができます。手形を振り出す企業は下請法との関係で、手形の支払サイト120日以内という制限がありますが、これは電子手形でも適用されます。

支払期日になると振出企業の口座から代金を引き落として、受取企業の口座に振り込みされますので、手形のように銀行へわざわざ手形を持ち込む必要はありません。また手形は支払期日の翌日に現金化できますが電子手形は支払期日当日に現金化できます。


電子手形は支払日前に現金化でき、分割までできる

電子手形は支払日前に現金化でき、分割までできる

電子手形は支払日前に現金化でき、分割までできる

電子手形の「振出」が記録されると受取会社は現金化ができます。手形と同じようにまず割引や裏書譲渡ができます。手形割引とは満期日(支払日)が来る前に手数料や当日から満期までの利息分を差し引いた金額を現金化してもらうことです。例えば90日後に100万円を支払う手形を受け取って、手数料2万5000円を差し引いた97万5000円を先に現金化できます。

裏書譲渡は受け取った手形を別の支払にあてることです。手形の裏面に署名と捺印をし代金の代わりとして手形で支払うことができます。電子債権記録機関に「譲渡記録」を行うことで、電子手形を割引できます。裏書譲渡では保証記録(手形の裏書保証と同じ)を行います。電子手形は中小企業をはじめとする金融の円滑化・効率化をはかることが目的ですので譲渡禁止にすることはできません。

電子手形ならではの特徴として分割ができます。100万円の紙の手形を銀行に持ち込んで割引することで現金化はできますが、50万円だけ現金化して、50万円は手形として残すことはできませんが電子手形なら可能です。


手形なので信用調査は必須

手形なので信用調査は必須

手形なので信用調査は必須

電子手形になっても倒産時の対応などは同じです。裏書譲渡で裏書した企業が倒産した場合、電子手形を振り出した企業に電子手形の決済義務があります。また振り出した企業が倒産した場合は裏書した企業に決済義務があります。

手形と同じで電子手形にも取引停止処分があります。債務者が6か月以内に2回以上支払不能となると、電子手形の利用ができなくなり、参加金融機関との間の貸出取引が2年間禁止となります。取引停止処分は全ての参加金融機関に通知されますので、原則、銀行取引はできなくなります。

電子手形でも手形と同様、期日に本当に支払ってもらえそうか信用調査は必須です。


電子手形の利用料金は

料金は銀行によって異なりますが、大体、発生記録手数料が1件あたり432円。これは電子手形の登録料で振り出しをする企業が払います。受け取り企業の負担は決済手数料が216円、譲渡したり分割すると記録手数料が324円かかります。これらは振り出しと受け取り企業が同じ三井住友銀行の口座を使っている場合で他行の場合は振込手数料などと同様に少し高くなります。利用時間は当日扱いは銀行営業日の8~15時になります。

新しい金融手段として急速に広まっている電子手形。取引先から「電子手形で支払ってもいい?」と問い合わせが入っても対応できるよう事前に取引先金融機関に資料をもらっておくなど準備しておきましょう。


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